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第一章 緋川兄弟の秘密
参話 嫌われ者……?
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「……優菜」
華乃さんが声をかけるけど、首を横に振るばかりで返事がない。ただ、さっきからずっと身体の震えが止まらない。
「――俺達は……嫌われ者の吸血鬼一族の中の異端で……嫌われ者だったからな。優菜は……自分が吸血鬼だと人に知られるのを酷く嫌がる。だが、ここまでとはな。どうやら陽彰には余程嫌われたくないようだ」
「はあ……」
何と言うか。どうして私が嫌う前提で話が進んでいるのかが分からないんだけど。
「あの、嫌われ者って一体どうして……?」
いや、吸血鬼が敬遠される理由はまぁ分からなくはない。噛みつかれたら痛そうだし、血とは言え喰われるのだし、量を吸われれば死ぬ可能性だってあるんだから恐怖を覚える事もあるだろうし。
だけど、吸血鬼同士でも嫌われると言うのはどういう事? 足手まといにしかなれない私を拾って面倒を見てくれる程度にはお人好しな人達なのに?
「吸血鬼ってのは基本、戦闘種族なんだ。蒼月ら人狼属に比べて直接ガチンコ腕力対決には向かないが、諜報とか刺客とか軍師とか……。頭脳戦アリのインテリ戦闘を得意とする。――その分蒼月の一族がウチについて前衛職を担いサポートしてくれている。……だが、俺と優菜の得意は回復系だったからな。吸血鬼一族の異端児だったのさ、俺達は」
「けど、吸血鬼だからこそ血に関しちゃお手のものだからな。……その能力を活かして医者をしてるんだ、他の連中だって適性はあるはずなのによ」
蒼月さんが我が事の様に憤る。
「だが、それでも戦う方に魅力を感じる者が大半なんだ。だから俺達は家を捨てて旅に出た。……が、妹はこれまで何度か旅の中で仲良くしていた人に吸血鬼だと知られて避けられたりする経験をしていてな。酷く臆病になっているんだよ」
だから出会ってからこっち、自分達の種族を明かさないようにしていたのだと言う。……ああ。前列があったから、私もその誰かと同じように彼らを拒絶すると思ったのか。
理解はするけど。――不愉快だ。
「はぁ。見くびられたものですね」
つかつかと優菜へと歩み寄って彼女の腕を取り、半ば無理矢理に立たせてこちらを向かせ――涙に濡れた頬を平手でひっぱたいた。
「あなた達と旅するようになってそれなりの日にちが過ぎたけど、その間私は一度もあなた達に襲われた事はない。戦う術どころか生活すらまともにできるかどうかっていう小娘なのに。……それでどうしてその恩も忘れてあなた達を無意味に恐がると思うの?」
……だから。怖くない訳じゃないけど、覚悟を決めて、さっきの蒼月さんに倣って腕を突きだした。
「ほら、飲みな」
「え……?」
「草治さんもああだったんだし。優菜ちゃんも血、飲みたいんじゃないの?」
「うっ、で、でも……!」
「デモデモダッテはウザいからするな。飲め」
命令口調で言えば、優菜は恐る恐る私の腕を取った。
そして――。
華乃さんが声をかけるけど、首を横に振るばかりで返事がない。ただ、さっきからずっと身体の震えが止まらない。
「――俺達は……嫌われ者の吸血鬼一族の中の異端で……嫌われ者だったからな。優菜は……自分が吸血鬼だと人に知られるのを酷く嫌がる。だが、ここまでとはな。どうやら陽彰には余程嫌われたくないようだ」
「はあ……」
何と言うか。どうして私が嫌う前提で話が進んでいるのかが分からないんだけど。
「あの、嫌われ者って一体どうして……?」
いや、吸血鬼が敬遠される理由はまぁ分からなくはない。噛みつかれたら痛そうだし、血とは言え喰われるのだし、量を吸われれば死ぬ可能性だってあるんだから恐怖を覚える事もあるだろうし。
だけど、吸血鬼同士でも嫌われると言うのはどういう事? 足手まといにしかなれない私を拾って面倒を見てくれる程度にはお人好しな人達なのに?
「吸血鬼ってのは基本、戦闘種族なんだ。蒼月ら人狼属に比べて直接ガチンコ腕力対決には向かないが、諜報とか刺客とか軍師とか……。頭脳戦アリのインテリ戦闘を得意とする。――その分蒼月の一族がウチについて前衛職を担いサポートしてくれている。……だが、俺と優菜の得意は回復系だったからな。吸血鬼一族の異端児だったのさ、俺達は」
「けど、吸血鬼だからこそ血に関しちゃお手のものだからな。……その能力を活かして医者をしてるんだ、他の連中だって適性はあるはずなのによ」
蒼月さんが我が事の様に憤る。
「だが、それでも戦う方に魅力を感じる者が大半なんだ。だから俺達は家を捨てて旅に出た。……が、妹はこれまで何度か旅の中で仲良くしていた人に吸血鬼だと知られて避けられたりする経験をしていてな。酷く臆病になっているんだよ」
だから出会ってからこっち、自分達の種族を明かさないようにしていたのだと言う。……ああ。前列があったから、私もその誰かと同じように彼らを拒絶すると思ったのか。
理解はするけど。――不愉快だ。
「はぁ。見くびられたものですね」
つかつかと優菜へと歩み寄って彼女の腕を取り、半ば無理矢理に立たせてこちらを向かせ――涙に濡れた頬を平手でひっぱたいた。
「あなた達と旅するようになってそれなりの日にちが過ぎたけど、その間私は一度もあなた達に襲われた事はない。戦う術どころか生活すらまともにできるかどうかっていう小娘なのに。……それでどうしてその恩も忘れてあなた達を無意味に恐がると思うの?」
……だから。怖くない訳じゃないけど、覚悟を決めて、さっきの蒼月さんに倣って腕を突きだした。
「ほら、飲みな」
「え……?」
「草治さんもああだったんだし。優菜ちゃんも血、飲みたいんじゃないの?」
「うっ、で、でも……!」
「デモデモダッテはウザいからするな。飲め」
命令口調で言えば、優菜は恐る恐る私の腕を取った。
そして――。
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