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第三章 異世界での生活

壱話 お手伝い

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    「ところで、さ」
    新術が思うように仕上がらず、悶々としていたある日の事。華乃姐さんにふと声をかけられた。
    「はい?」
    「そろそろ歩くの、慣れてきたろう?」
    「まあ……そうですね。ここに来たばかりの頃に比べればだいぶ……。山の中の獣道でなければ丸一日歩ける様になりましたし」
    「なら、次の村へ着いたら、少しだけ私らの仕事を手伝ってくれないかい?」
    「……はい?」
     初めこそ大半を体を休める事に重きを置いていた村での滞在。だけど、ある程度歩くのに慣れ始めた頃からは洗濯や食事の仕度的な家事をしていた。
    だけど。
    「うん。勿論蒼月の手伝いは無理だろうから、私や優菜、草治の手伝いをお願いしたいんだよ」
    「分かりました」
     私は彼らにお守りされている身だ。頼まれれば断る訳にはいかない。だからそう返事をした。
    「………………」
     ごーりごーりごーり。
     私は今何をしているんでしょうか?
     すりこぎとすりばちで、薬草をひたすらすり潰し、水や小麦と一緒にこねて丸薬を作ったり、水薬をつくったり。
    分量や、潰す程度は全て優菜先生の言う通り。私はひたすら草をすり潰しております。……たまに鉱石とかも混ざるけど。
   「ありがとうございます、助かります!」
    って、優菜ちゃんの天使スマイルに癒されはするけど……この腕の痛みまでは引かない。腕は完全に筋肉痛ですとも!
    だけど、私が一つすり潰す間に優菜ちゃんは薬を一つ完成させる。
    草治さんが診た結果に基づいて、彼女は患者に処方する薬を決めてオーダーメイドの薬をその場で作って渡している。
    草治さんも医療機械なんか無い中で、さくさくと診断を下していく。
    ……診断結果を見てすぐ薬を作れる優菜ちゃんも凄いけど、やっぱり草治さんがどうやって診断しているのかが気になる。
    優菜ちゃんの薬は草治さんの診断あっての物だ。……仮に誤診だったら。薬が毒になる可能性だってあるのに、全て信じて薬を作っている。
    MRIもCTスキャンも無い。レントゲンも内視鏡も無い。……血液検査や尿検査・大便検査だって原始的なのしか無い。だって顕微鏡なんて無いんだもん、最低限の試薬だけの検査で分かる項目なんて限られてる。
    いくら魔法のある世界だからってこれは……。
    だけど。中・長期的には分からないけれど、少なくとも私たちが村を出るまでに彼の誤診が原因で容態が急変した……なんて人は誰も居なかった。
    魔法の様に「ちちんぷい」で瞬時に病気が治るなんて事は魔法のあるこの世界でもあり得ない。
    私はこの世界の医者のレベルを草治さんでしか知らない。……それでも彼の凄さは何となく感じてはいたんだけど、ね。
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