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第二章 霊力修行

肆話 新術

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    あれから更に数日が経過した。
    「ふむ。まだまだ理想には遠いが、瞑想の修行はそのまま続けるとして、そろそろ実践の初歩を教えてやるかのう?」
    その間にまた一つの村で診療を行った私達は今、少し浅い山の中に居た。
    私がこの世界に来て多分そろそろ一月は過ぎたんじゃないかと思う。
    最近では少し体力もついて、だいぶ歩けるようになってきたと思う。
    瞑想では、漸く自在に力を全身に巡らせることが出来るようになってきたけど、無意識にとかは絶対無理だ。意識しなければ力は途端に沈黙する。
   「じゃが、一時的にでも霊力が体を巡るなら、初歩の術位なら使えるじゃろ」
    ……つまり。プロの陰陽師は常に全身を霊力が巡り、それを使って術を為す。本当に妖怪を相手にするなら、霊力の巡りは無意識に常に出来ていなくてはならず、術も「この術を使う」と思ったら即座に展開出来なければお話にならない、らしい。
    「陰陽師には知識も必要じゃが、頭の回転や咄嗟の機転、体力なんかも必要なんじゃ」
    ……そんなレベルになるのには一体どれだけの時間が必要になる事やら。
    で。
    教わったのは、霊力を弾にして撃つだけの術。
    ……成功しても攻撃力はせいぜい羽虫を落とす程度だ。
    これ、術って言って良いのかな?
    「霊力を体外に形として放出する練習じゃ。全ての術の基礎となる訓練じゃ!」
    力を巡らせ、指の先へと導いて、皮膚を通して外に出して――撃つ。言葉にするのは簡単でも、これまた実現するのは中々厄介だった。
    力を指の先まで持ってくるまでは良い。
    だけど、その先が。皮膚という壁がイメージではなく現実として存在しているのが目で見えるのである。
    ……だから一度、棘のある植物にわざと触れて極小さな傷を作ってみた。プツリと血の玉が染み出してくる。それと一緒に霊力も……とイメージしようとしたら、
    「おい、何してる」
     と、あっという間に草治さんに咎められた。
     ほんの小さな傷から一滴二滴程度の出血を瞬時に見抜かれ、手を取られた。
     「……血の臭いに惹かれて来る魔物も居るんだ、気を付けてくれ」
    と、ささっと治療してくれた。
    とても自傷した傷だとは言えずに、「ごめんなさい」と「ありがとう」を言って、引き続き彼らと共に歩く。
    ……結局イメージは上手くいかなかった。
    取り敢えず勉強しておけばある程度の成績は取れる学校のテストなんかとは違う壁に、私は自分でも気づかないまま、地味にストレスをため続けていた。
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