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第二章 霊力修行

壱話 水行

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    「まずは唱える経文を覚えるのじゃ!」
    ……と。訳の分からない呪文のような文言をまずは普通にひたすら唱えさせられ、退屈と喉の痛みと頭痛に悩まされた後が
    「……では始めるかの」
     と、早朝に男性陣を遠ざけ優菜ちゃんと二人。
    「頼むぞ!」
     すると、優菜ちゃんが何らや呟く。と――
    「わっ!」
      何もない空中から突然水道の蛇口を一杯に捻ったような水量が私の頭上へと落ちてきた。
    「うひゃっ!」
      暑い季節とはいえ水は冷たい。つい声を挙げてしまう。が……。
    「ほれほれ、覚えた経文を唱えるんじゃ!」
     と晴明が急かすけど、冷たい水を浴びて呼吸が苦しくなかなか声が出ていかない。
     それでもなんとか思い出しながら唱えて……
    「つ、疲れた……」
     晴明が「よし、今日はここまでじゃ!」と言うまでびしょ濡れだった私は、優菜ちゃんに手拭いを貰って体の水滴を拭った。
    「ふむ、最初じゃしこんなもんかのぅ?」
    だけど、晴明は結果に満足しきれなかったらしい。
    「少しずつ時間を多くして……慣れたら今度こそ滝行じゃぞ!」
    等と一人はしゃいでいる。
   ……これも必要な事……と自分に言い聞かせるけどやっぱりイラッとする。
    「ふむ。まだ己の中の力を把握できておらんのじゃろ?    ……それでは、いつまで経っても実践訓練には移れん。先に教えた知識にその力を乗せて初めて術になるのじゃからな」
    それから毎朝日の出る前から出掛ける直前までは水行の時間と決められた。
    ……正直今が冬じゃなくて良かったと心底思ったよ。これ、冬に滝行なんかしたら死ねるよ……。
    最初は辛いとしか思えなくて、何のための修行なのか耳で何度聞いても理解できていなかった。だけどだんだんコツを付かんでつかえずに経文を唱えられるようになると、何となく腹の底にこれまで感じる事も出来なかった熱が感じられるようになり。
    それをある程度の時間続けられるようになるにつれ顕著になっていく。……それを晴明に報告すると「それが霊力じゃ!」
    嬉しそうに飛び上がる晴明。
    「それをもっと大きくしつつ、自在に動かせるようになるのじゃ!」
    と次なる指令が下る。
    水行しながら他の事――腹の熱……晴明が言うところの霊力とやらについて考える余裕が出来てきた頃。
   「んじゃ、次の段階に行こうかの」
    と、滝に放り込まれた。……文字通りの滝行である。
    水量がこれまでの水行とは桁違いである。
    頭や肩にかかる圧が半端無く、重くて痛くて腹の熱どころかまた経文を唱えるどころじゃ無くなった。
    ……これ、本当に意味があるんだろうか?
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