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第一章 修行開始
肆話 知識の次は……
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太陽が完全に西の大地の向こうに沈み、辺りが夜闇に染まりきった頃、緋川兄妹が往診を終えて離れに戻ってきた。
「お疲れ様です」
先程運ばれてきたばかりの夕食をちゃぶ台に並べながら私は彼らを出迎えた。
今日の夕食は川魚の塩焼きととうもろこしのかき揚げ天ぷらだ。
「ほう、夏らしくて良いな!」
晴明が目を輝かせた。……こういうの見ると、どうしてもあの伝説の陰陽師らしくなくて、胡散臭さが増すんだよね。
「勉強は順調か?」
「……ぼちぼち。私は天才型じゃないんで、コツコツ少しずつ積み上げて結果を出す方が得意なんで。見ただけ・聞いただけで覚えるなんて芸当は無理ですけど、ちゃんと勉強して覚えたことはそうそう忘れませんよ」
……一応食後にも一度復習してから眠った。今日は寝室が男女別。
この世界の夜は外灯だの常夜灯だのなんてないから火を消したら本当に真っ暗だから、そんなには気にならないんだけど。
でも逆に本当に殆ど何も見えないんたから、知らない男と一緒とかだとコレ、寝ちゃいけないシチュエーションだ。
このパーティーに優菜ちゃんや華乃さんが居てくれて本当に良かったよ。
人と寝る事自体は日常だったから慣れてるけど、やっぱり年頃の異性と……ってのはなぁ。
勿論草治さんたちは女性を襲うような人じゃないけど、男の人だからね。最低限の警戒はいつだって必要だ。彼らのためにも。
翌日は、人々を離れに招いての診察。
草治さんが診て病気を診断し、その診断に沿った薬を優菜ちゃんが処方する。
その作業はとても手慣れていて、その手の動きをついつい目で追いたくなるくらいてきぱきと動く。
「どうやらこの村の患者は全部診きった様だ。明日には村を出よう」
「了解」
そしてまた、歩く。
歩く日数や滞在日数こそ多少前後するけれど、三、四日歩くと村があって、一日か二日滞在して仕事をこなしてまた旅立つ。
移動中及びちょっとした隙間時間に晴明に陰陽道を教わる。
最初は一日歩く事もできなかったのに、その日常サイクルに慣れ始めてしまうと、少しずつ彼らの本来の速度に合わせても一日でバテきらなくなってきた。
その分勉強にあてられる時間も増える。
……そして。
「出来ればそろそろ霊力トレーニングとかしたいんじゃがの」
ある日狐がふと言い出した。
「知識は教えた。次は力を鍛えねばならん」
……彼に言わせれば「滝が一番じゃがこの際水がひっ被れるなら何でも良い」そうで。
「水の魔法なら私が使えますよ?」
と優菜ちゃんが手を挙げた為、ついに私の滝行が決定したのであった。
「お疲れ様です」
先程運ばれてきたばかりの夕食をちゃぶ台に並べながら私は彼らを出迎えた。
今日の夕食は川魚の塩焼きととうもろこしのかき揚げ天ぷらだ。
「ほう、夏らしくて良いな!」
晴明が目を輝かせた。……こういうの見ると、どうしてもあの伝説の陰陽師らしくなくて、胡散臭さが増すんだよね。
「勉強は順調か?」
「……ぼちぼち。私は天才型じゃないんで、コツコツ少しずつ積み上げて結果を出す方が得意なんで。見ただけ・聞いただけで覚えるなんて芸当は無理ですけど、ちゃんと勉強して覚えたことはそうそう忘れませんよ」
……一応食後にも一度復習してから眠った。今日は寝室が男女別。
この世界の夜は外灯だの常夜灯だのなんてないから火を消したら本当に真っ暗だから、そんなには気にならないんだけど。
でも逆に本当に殆ど何も見えないんたから、知らない男と一緒とかだとコレ、寝ちゃいけないシチュエーションだ。
このパーティーに優菜ちゃんや華乃さんが居てくれて本当に良かったよ。
人と寝る事自体は日常だったから慣れてるけど、やっぱり年頃の異性と……ってのはなぁ。
勿論草治さんたちは女性を襲うような人じゃないけど、男の人だからね。最低限の警戒はいつだって必要だ。彼らのためにも。
翌日は、人々を離れに招いての診察。
草治さんが診て病気を診断し、その診断に沿った薬を優菜ちゃんが処方する。
その作業はとても手慣れていて、その手の動きをついつい目で追いたくなるくらいてきぱきと動く。
「どうやらこの村の患者は全部診きった様だ。明日には村を出よう」
「了解」
そしてまた、歩く。
歩く日数や滞在日数こそ多少前後するけれど、三、四日歩くと村があって、一日か二日滞在して仕事をこなしてまた旅立つ。
移動中及びちょっとした隙間時間に晴明に陰陽道を教わる。
最初は一日歩く事もできなかったのに、その日常サイクルに慣れ始めてしまうと、少しずつ彼らの本来の速度に合わせても一日でバテきらなくなってきた。
その分勉強にあてられる時間も増える。
……そして。
「出来ればそろそろ霊力トレーニングとかしたいんじゃがの」
ある日狐がふと言い出した。
「知識は教えた。次は力を鍛えねばならん」
……彼に言わせれば「滝が一番じゃがこの際水がひっ被れるなら何でも良い」そうで。
「水の魔法なら私が使えますよ?」
と優菜ちゃんが手を挙げた為、ついに私の滝行が決定したのであった。
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