17 / 65
第四章 初めての村
肆話 旅立ち
しおりを挟む
村で貰った着物に着替え、私は部屋の外に出た。
「では、そろそろ行くか」
すっかり旅支度を整えたご一行が外で待っていた。
「いやいや、お世話になりました」
ついでにこの村の責任者であるらしい男が代表で見送りに来てくれていた。
「こちらこそ、宿の提供等世話になった。――また、いずれ」
「ええ、是非。ウチの様な田舎では、薬師や治療師は大変貴重な存在ですから」
彼は深々と頭を下げて礼を言い、私達は最後に別れの挨拶を済ませて村を旅だった。
そしてまた、緑の深い山道を行く……かと思ったのだが。
「……あれ?」
勿論、道の左右は木々や草で緑色が多い。……だけど、道はある。獣道ではなく、田舎道ではあるけれどある程度人の手が入った道が。
「山道はまだお前には早い。……お前と出会ったのが山中深かった故にこれまでは山道を歩かざるを得なかったが、しばらくは山に入らず行くぞ」
どうやら足手まといの私の足のレベルを考えてのコース選択だったらしい。
村でしっかり休養も取ったから、今日はせめて最後まで自分の足で歩きたかった。
狐の晴明は今日もまた優菜ちゃんの薬籠の上だ。
ふんふんと鼻歌なんか歌って上機嫌でにこにこしている。……爺口調で喋らず見ただけならまぁ可愛いのに。
「……そういえば、あんたの事を村の人は誰も何も突っ込まなかったけど。アンタ何かしたの?」
「何もしとらんぞ。と言うか、ワシはこの世のモノではない。見鬼の才でも無くば我が姿は見えんぞ?」
「――え?」
「あの村の人間はごく普通の一般人じゃったからの。……こんなにも一所に見鬼の才を持つ者が居るとは……。陰陽寮の様にその様な人材を集めたのでなければ稀な事よ。――この世界ではどうか知らんがの」
「――確かにあの村に居たのは皆人間だ。そして魔族は異能を持つのが当たり前だ。故にそなたが見えるのだろうな」
「だが、誤魔化し様のない俺はともかく、草治らはなるべく人間のフリをして旅をしている。それは覚えておいてくれ」
「……分かりました」
前に家や身分を捨てたとか聞いたし、何か事情があるのだろう。出会ったばかりの私が色々詮索するのは良くないと、取り敢えず頷いておいた。……つまりはうっかり余計な事を言うなよって事だよね?
そして、西の空が赤くなり始める頃、私達はまた無人の小屋へと辿り着いた。
……気のせいかな?
初日の小屋とかなり似ている気がするけど……。
まあこの規模の小屋ならどれもそう大差ないか、と思い直し、食事と寝床の支度に取りかかるのだった。
「では、そろそろ行くか」
すっかり旅支度を整えたご一行が外で待っていた。
「いやいや、お世話になりました」
ついでにこの村の責任者であるらしい男が代表で見送りに来てくれていた。
「こちらこそ、宿の提供等世話になった。――また、いずれ」
「ええ、是非。ウチの様な田舎では、薬師や治療師は大変貴重な存在ですから」
彼は深々と頭を下げて礼を言い、私達は最後に別れの挨拶を済ませて村を旅だった。
そしてまた、緑の深い山道を行く……かと思ったのだが。
「……あれ?」
勿論、道の左右は木々や草で緑色が多い。……だけど、道はある。獣道ではなく、田舎道ではあるけれどある程度人の手が入った道が。
「山道はまだお前には早い。……お前と出会ったのが山中深かった故にこれまでは山道を歩かざるを得なかったが、しばらくは山に入らず行くぞ」
どうやら足手まといの私の足のレベルを考えてのコース選択だったらしい。
村でしっかり休養も取ったから、今日はせめて最後まで自分の足で歩きたかった。
狐の晴明は今日もまた優菜ちゃんの薬籠の上だ。
ふんふんと鼻歌なんか歌って上機嫌でにこにこしている。……爺口調で喋らず見ただけならまぁ可愛いのに。
「……そういえば、あんたの事を村の人は誰も何も突っ込まなかったけど。アンタ何かしたの?」
「何もしとらんぞ。と言うか、ワシはこの世のモノではない。見鬼の才でも無くば我が姿は見えんぞ?」
「――え?」
「あの村の人間はごく普通の一般人じゃったからの。……こんなにも一所に見鬼の才を持つ者が居るとは……。陰陽寮の様にその様な人材を集めたのでなければ稀な事よ。――この世界ではどうか知らんがの」
「――確かにあの村に居たのは皆人間だ。そして魔族は異能を持つのが当たり前だ。故にそなたが見えるのだろうな」
「だが、誤魔化し様のない俺はともかく、草治らはなるべく人間のフリをして旅をしている。それは覚えておいてくれ」
「……分かりました」
前に家や身分を捨てたとか聞いたし、何か事情があるのだろう。出会ったばかりの私が色々詮索するのは良くないと、取り敢えず頷いておいた。……つまりはうっかり余計な事を言うなよって事だよね?
そして、西の空が赤くなり始める頃、私達はまた無人の小屋へと辿り着いた。
……気のせいかな?
初日の小屋とかなり似ている気がするけど……。
まあこの規模の小屋ならどれもそう大差ないか、と思い直し、食事と寝床の支度に取りかかるのだった。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
京都式神様のおでん屋さん
西門 檀
キャラ文芸
旧題:京都式神様のおでん屋さん ~巡るご縁の物語~
ここは京都——
空が留紺色に染まりきった頃、路地奥の店に暖簾がかけられて、ポッと提灯が灯る。
『おでん料理 結(むすび)』
イケメン2体(?)と看板猫がお出迎えします。
今夜の『予約席』にはどんなお客様が来られるのか。乞うご期待。
平安時代の陰陽師・安倍晴明が生前、未来を案じ2体の思業式神(木陰と日向)をこの世に残した。転生した白猫姿の安倍晴明が式神たちと令和にお送りする、心温まるストーリー。
※2022年12月24日より連載スタート 毎日仕事と両立しながら更新中!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる