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第四章 初めての村

肆話 旅立ち

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   村で貰った着物に着替え、私は部屋の外に出た。
   「では、そろそろ行くか」
   すっかり旅支度を整えたご一行が外で待っていた。
   「いやいや、お世話になりました」
    ついでにこの村の責任者であるらしい男が代表で見送りに来てくれていた。
   「こちらこそ、宿の提供等世話になった。――また、いずれ」
   「ええ、是非。ウチの様な田舎では、薬師や治療師は大変貴重な存在ですから」
    彼は深々と頭を下げて礼を言い、私達は最後に別れの挨拶を済ませて村を旅だった。
    そしてまた、緑の深い山道を行く……かと思ったのだが。
    「……あれ?」
    勿論、道の左右は木々や草で緑色が多い。……だけど、道はある。獣道ではなく、田舎道ではあるけれどある程度人の手が入った道が。
    「山道はまだお前には早い。……お前と出会ったのが山中深かった故にこれまでは山道を歩かざるを得なかったが、しばらくは山に入らず行くぞ」
    どうやら足手まといの私の足のレベルを考えてのコース選択だったらしい。
     村でしっかり休養も取ったから、今日はせめて最後まで自分の足で歩きたかった。
     狐の晴明は今日もまた優菜ちゃんの薬籠の上だ。
     ふんふんと鼻歌なんか歌って上機嫌でにこにこしている。……爺口調で喋らず見ただけならまぁ可愛いのに。
    「……そういえば、あんたの事を村の人は誰も何も突っ込まなかったけど。アンタ何かしたの?」
    「何もしとらんぞ。と言うか、ワシはこの世のモノではない。見鬼の才でも無くば我が姿は見えんぞ?」
    「――え?」
    「あの村の人間はごく普通の一般人じゃったからの。……こんなにも一所に見鬼の才を持つ者が居るとは……。陰陽寮の様にその様な人材を集めたのでなければ稀な事よ。――この世界ではどうか知らんがの」
    「――確かにあの村に居たのは皆人間だ。そして魔族は異能を持つのが当たり前だ。故にそなたが見えるのだろうな」
    「だが、誤魔化し様のない俺はともかく、草治らはなるべく人間のフリをして旅をしている。それは覚えておいてくれ」
    「……分かりました」
     前に家や身分を捨てたとか聞いたし、何か事情があるのだろう。出会ったばかりの私が色々詮索するのは良くないと、取り敢えず頷いておいた。……つまりはうっかり余計な事を言うなよって事だよね?
    そして、西の空が赤くなり始める頃、私達はまた無人の小屋へと辿り着いた。
    ……気のせいかな?
    初日の小屋とかなり似ている気がするけど……。
    まあこの規模の小屋ならどれもそう大差ないか、と思い直し、食事と寝床の支度に取りかかるのだった。
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