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第四章 初めての村

壱話 初めての人里

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    少し高い小山から見下ろした村は、本当に時代劇で見るような古き日本の農村だ。
    かやぶき屋根に土壁、木と紙で作られた建具。
    母屋に離れ、倉に家畜小屋。
    周囲に木々の茂る広い庭先と、畑。それらの周囲には青々とした稲が育つ水田が囲む。これを一つのセルとして、縦横に幾つも家と田畑とが並び、それを農道と用水路が区切る。
    村の中央には一際大きな建物が、周囲の田畑無しに建っている。
    山を降りた草治達は、荷物の中からベルを取り出して、それをカンカン鳴らしながらその大きな建物へ向かって歩きながら大声を出す。
    「薬~、薬の行商だよ~!    病を患う者が居るなら診察するよー!    精のつく山の恵みもあるよ!」
    すると、建物につくまでの間に人々がこちらに気付き「何事か」と顔を出し、こちらの口上を聞いて「ああ、」と引っ込む人。助かったとばかりに出てくる人。そして近隣に私たちの来訪を伝えに走る人達。
    そんな彼らの頭や尻に耳も尻尾もない。……このパーティーも、そんなのがあるのは蒼月さんだけで、他の人の種族までは聞いていないんだけど……。
    公会堂まで行くと、一人の男が走ってきた。
   「どうもどうも!    よろしくお願いいたします!」
    彼は、これまで見かけた村人に比べると、少々高そうな着物を着ていた。
   「こちらこそ。今日明日と世話になる。公会堂を借りたいがよろしいか?」
   「勿論でございますとも!」
   「そうか、助かる。――では蒼月、華乃、頼んだぞ」
     と、緋川兄妹は私達を公会堂に置いて先へ行く。……道の先には既にこちらへ駆けて来る人々の姿があった。
   「頼む、うちの母ちゃんを診てくれ!」
   「うちの子も頼むよ、こないだから全身の湿疹が引かなくってよぅ」
   「順番に診る。今日は動くのも難しい人を往診する。動ける者は明日公会堂で診る」
    我先にと必死な彼らを冷静に説得し、二人は村の者達に案内されながら道の先へと消えていった。
    「んじゃ、あたしらは今夜の宿と飯を用意しようかね」 
    華乃が建物の引き戸を開き、中へと入った。
   「奥の部屋をお使いください。風呂はいつでもお好きな時にどうぞ」
    「ふふふ、ありがとう。久しぶりの温泉は楽しみだわ」
    「いやいや、普通の行商は時折来るが、薬の行商は滅多に来ないし、治療師まで一緒に居るのは珍しい。こちらこそ、助かるよ」
    ……公会堂、というのは公民館と公衆浴場を兼ねた物らしく、部屋は幾つもあった。
     村人皆が集まれる広い部屋も、六畳程の部屋もある。
     その一部屋を宛がわれた私達は、取り敢えず荷物を下ろしたのだった。
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