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第三章 お師匠様登場!

弐話 安倍晴明!?

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    「……取り敢えず診せてみろ」
    蒼月さんが仕留めた猪を血抜きして解体する間、私は草治さんに言われてパンパンの脚とぼろぼろの足の裏を彼に見せていた。
    「優菜、湿布を頼む。……今日はここまでだな。後は蒼月に背負って貰え」
    捌いた枝肉を香草で包み終えた蒼月さんが、それを荷物に加えて戻ってきた。
   「……それはいいんだけどよ。――、何なんだ?」
    湿布を用意している優菜になつこうとしているを指して言った。
    「……さあ」
    取り敢えず私にはそれしか言えなかった。むしろ草治さん達のお仲間なのではとすら思っていた。
    が、しかし。
    「ふふふふふ。よく聞いてくれた!    聞いて驚け、ワシの名は安倍晴明!    現世に蘇りし稀代の陰陽師であり神でもあるこのワシを崇め奉るがよい!」
    その彼は体操競技で着地を決めた決めポーズをする選手のように胸を張って両腕を高く挙げて得意気に名乗りをあげた。
    「「「は?」」」
    安倍晴明。平安時代の日本で活躍した陰陽師である事、そして京都に彼を神として祀る神社がある事位は知っていても、何故こんな場所でこんな姿で居るのかの説明には足りない。
    胡散臭いにも程がある。
    その疑いの眼差しに、安倍晴明となのったソレは地団駄を踏んだ。
    「お前はワシの生まれ変わりなのじゃ、即ちワシはソナタの前世の人格なのじゃ!」
    「――と言っているが?」
    「……知りません、こんなの。前世の記憶なんて無いし、安倍晴明って能力者ではあったのかもしれませんが、一応は人間だったはずですが」
    一説によれば母親は葛の葉という狐だったとも言われているけれど……、少なくとも獣の耳や尻尾なんて外見的特徴は無かったはずだ。
    「これはやむにやまれぬ事情により作って仮の体じゃ!」
    けれどすかさず言い返してくるマスコット。
   「……じゃあ、どうしてそんなことする必要があったのよ。ちゃんと説明しなさいよ」
   「――うむ、話せば長い事ながら……」
   「――待て。長くなるなら後にしろ。そろそろ出発しなければ夜までに小屋へ辿り着けん。蒼月、彼女を頼む」
   「あいよ」
   「え、え?」
     その切り替えの早さに戸惑う安倍晴明を名乗るマスコットは慌てて優菜の背負い籠に取りつきついて来た。
    皆微妙な目でソレを眺めながらも咎めはせずに、今夜の宿となる小屋へと歩き、今日もまた完全に暗くなる前に無事に辿り着く事が出来た。
    「今日は肉入りの飯が食えるぞ」
     ウキウキと食事の支度を始める蒼月さんと、再び「診せろ」と私の足の湿布を代えてくれる緋川兄妹。
    「……って、オイ、コラ聞けよ!」
    食事を終えるまではふるふる震えながらも何とか耐えていたらしいそれが声をあげたのは「さあ寝ようか」という雰囲気になりかけた時の事だった。
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