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第三章 お師匠様登場!
壱話 ケモミミ少年登場!
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「おい起きろ!」
「ん……?」
明け方、少しだけ明るくなってきた小屋の中で、何度目か分からない浅い眠りの中でうとうとしていた時の事。
何やら騒がしく耳元で喚かれたが……その声に聞き覚えはない。
このパーティーのリーダー的存在らしい草治さんは普通に男性らしい声だったし、蒼月さんは低音ボイス。優菜さんは可愛らしいお嬢様な声だったし、華乃さんは艶っぽい色気溢れる女王様声だった。
こんな少年声ではなかったはずだ。
それでもまぁ、日が出て明るくなってきたからにはそろそろ起床時間だろうから取り敢えず起き上がる。
……ああ、足は筋肉痛だし、板間で布団もなしに寝たせいで身体中が痛む。とてもスムーズには動けずに、「お前は老人か」と言われそうなカクカクした不自然な動きで板間に座り込んだ。
……今日はこのコンディションで一日中森の中を歩くのかと思うと悪夢のようだが、このままこの小屋に置いていかれたら死んでしまうのだから、まだ悪夢で済む方を選ぶしかないのだと自分を納得させる。
その間に他の人達も目を覚まし、それぞれ身支度を済ませたり、食事の支度を始めた。
朝食メニューは塩で味をつけた野草粥だ。
お腹を満たし、片付けを終えたら出発だ。
先頭を蒼月が歩き、間に女性陣を挟んで最後尾を草治さんが歩く形で進んでいく。蒼月さんだけでなく、優菜ちゃんまでもがこんな獣道みたいな山道を歩き馴れた様子でスタスタと軽く歩いていく。
私は喋る余裕もないまま必死について歩くけれど、昼食の為の休憩を取る頃にはもう完全にグロッキー状態になっていて、とても食事どころではなかった。
「……取り敢えずこれだけは飲め」
と水を渡され、飲む。……何か混ぜてあるのか味がついていた。気分が少し楽になり、ほんの少しばかりなら食欲も復活した。
野草入りの汁物を喉に通す。
大して美味しい物ではないはずが、空腹がスパイスとなって凄く美味しく感じる。
少しばかり体力が回復したところで、蒼月さんが鼻をひくひくさせた。
「……こりゃ良い。魔物じゃない猪のお出ましだ。ここで仕留めれば夜には肉が食えるぞ!」
剣を持って立ち上がる。
「よし! 行くぞ娘、立て!」
――そして。今朝私に起きろとのたまった正体不明の少年の声が響き。
私が「ん?」と怪訝な顔をしたのに対し、他の皆は何か驚愕の表情で私を見た。
……何だ?
けど、猪の足音はどんどん近付いてくる。
「ちっ、先に仕留めちまわなけりゃ話も聞けん!」
蒼月が飛び出してきた猪の頭を一刀両断し。
「おおっ、見事じゃ!」
と、それにはしゃいで飛び出したのは……。
二頭身にケモミミ&ケモ尻尾付きの少年(多分)だった……。
「ん……?」
明け方、少しだけ明るくなってきた小屋の中で、何度目か分からない浅い眠りの中でうとうとしていた時の事。
何やら騒がしく耳元で喚かれたが……その声に聞き覚えはない。
このパーティーのリーダー的存在らしい草治さんは普通に男性らしい声だったし、蒼月さんは低音ボイス。優菜さんは可愛らしいお嬢様な声だったし、華乃さんは艶っぽい色気溢れる女王様声だった。
こんな少年声ではなかったはずだ。
それでもまぁ、日が出て明るくなってきたからにはそろそろ起床時間だろうから取り敢えず起き上がる。
……ああ、足は筋肉痛だし、板間で布団もなしに寝たせいで身体中が痛む。とてもスムーズには動けずに、「お前は老人か」と言われそうなカクカクした不自然な動きで板間に座り込んだ。
……今日はこのコンディションで一日中森の中を歩くのかと思うと悪夢のようだが、このままこの小屋に置いていかれたら死んでしまうのだから、まだ悪夢で済む方を選ぶしかないのだと自分を納得させる。
その間に他の人達も目を覚まし、それぞれ身支度を済ませたり、食事の支度を始めた。
朝食メニューは塩で味をつけた野草粥だ。
お腹を満たし、片付けを終えたら出発だ。
先頭を蒼月が歩き、間に女性陣を挟んで最後尾を草治さんが歩く形で進んでいく。蒼月さんだけでなく、優菜ちゃんまでもがこんな獣道みたいな山道を歩き馴れた様子でスタスタと軽く歩いていく。
私は喋る余裕もないまま必死について歩くけれど、昼食の為の休憩を取る頃にはもう完全にグロッキー状態になっていて、とても食事どころではなかった。
「……取り敢えずこれだけは飲め」
と水を渡され、飲む。……何か混ぜてあるのか味がついていた。気分が少し楽になり、ほんの少しばかりなら食欲も復活した。
野草入りの汁物を喉に通す。
大して美味しい物ではないはずが、空腹がスパイスとなって凄く美味しく感じる。
少しばかり体力が回復したところで、蒼月さんが鼻をひくひくさせた。
「……こりゃ良い。魔物じゃない猪のお出ましだ。ここで仕留めれば夜には肉が食えるぞ!」
剣を持って立ち上がる。
「よし! 行くぞ娘、立て!」
――そして。今朝私に起きろとのたまった正体不明の少年の声が響き。
私が「ん?」と怪訝な顔をしたのに対し、他の皆は何か驚愕の表情で私を見た。
……何だ?
けど、猪の足音はどんどん近付いてくる。
「ちっ、先に仕留めちまわなけりゃ話も聞けん!」
蒼月が飛び出してきた猪の頭を一刀両断し。
「おおっ、見事じゃ!」
と、それにはしゃいで飛び出したのは……。
二頭身にケモミミ&ケモ尻尾付きの少年(多分)だった……。
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