師匠はうっかり転生しちゃった伝説の陰陽師!

彩世幻夜

文字の大きさ
上 下
10 / 65
第三章 お師匠様登場!

壱話 ケモミミ少年登場!

しおりを挟む
    「おい起きろ!」
    「ん……?」
    明け方、少しだけ明るくなってきた小屋の中で、何度目か分からない浅い眠りの中でうとうとしていた時の事。
    何やら騒がしく耳元で喚かれたが……その声に聞き覚えはない。
    このパーティーのリーダー的存在らしい草治さんは普通に男性らしい声だったし、蒼月さんは低音ボイス。優菜さんは可愛らしいお嬢様な声だったし、華乃さんは艶っぽい色気溢れる女王様声だった。
    こんな少年声ではなかったはずだ。
    それでもまぁ、日が出て明るくなってきたからにはそろそろ起床時間だろうから取り敢えず起き上がる。
    ……ああ、足は筋肉痛だし、板間で布団もなしに寝たせいで身体中が痛む。とてもスムーズには動けずに、「お前は老人か」と言われそうなカクカクした不自然な動きで板間に座り込んだ。
    ……今日はこのコンディションで一日中森の中を歩くのかと思うと悪夢のようだが、このままこの小屋に置いていかれたら死んでしまうのだから、まだ悪夢で済む方を選ぶしかないのだと自分を納得させる。
    その間に他の人達も目を覚まし、それぞれ身支度を済ませたり、食事の支度を始めた。
    朝食メニューは塩で味をつけた野草粥だ。
    お腹を満たし、片付けを終えたら出発だ。
    先頭を蒼月が歩き、間に女性陣を挟んで最後尾を草治さんが歩く形で進んでいく。蒼月さんだけでなく、優菜ちゃんまでもがこんな獣道みたいな山道を歩き馴れた様子でスタスタと軽く歩いていく。
    私は喋る余裕もないまま必死について歩くけれど、昼食の為の休憩を取る頃にはもう完全にグロッキー状態になっていて、とても食事どころではなかった。
    「……取り敢えずこれだけは飲め」
    と水を渡され、飲む。……何か混ぜてあるのか味がついていた。気分が少し楽になり、ほんの少しばかりなら食欲も復活した。
    野草入りの汁物を喉に通す。
    大して美味しい物ではないはずが、空腹がスパイスとなって凄く美味しく感じる。
    少しばかり体力が回復したところで、蒼月さんが鼻をひくひくさせた。
   「……こりゃ良い。魔物じゃない猪のお出ましだ。ここで仕留めれば夜には肉が食えるぞ!」
    剣を持って立ち上がる。
   「よし!    行くぞ娘、立て!」
    ――そして。今朝私に起きろとのたまった正体不明の少年の声が響き。
    私が「ん?」と怪訝な顔をしたのに対し、他の皆は何か驚愕の表情で私を見た。
    ……何だ? 
    けど、猪の足音はどんどん近付いてくる。
   「ちっ、先に仕留めちまわなけりゃ話も聞けん!」
    蒼月が飛び出してきた猪の頭を一刀両断し。
   「おおっ、見事じゃ!」
    と、それにはしゃいで飛び出したのは……。
    二頭身にケモミミ&ケモ尻尾付きの少年(多分)だった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

平安時代の悪役令嬢は婚約破棄します!

月夜野 すみれ
恋愛
とある貴族の大姫は暴走した牛車にひかれて転生した。 生まれ変わったのは、また平安時代の貴族の姫(大君)。 ただ――どうやら大好きだった物語に出てきた主人公の姫君をいじめる悪役の姫に生まれてしまったみたい。 その物語は今の中宮が入内する前に起きた話を中納言家の話に置き換えた暴露話と言う噂があった。 しかも物語の主人公と思われる姫君は行方知れずになったと言われている。 大君は肩入れしていた物語の姫君の恋を応援すると決意する。 悪役は自分なんだから簡単ですわ!と言いたいところだけれど――。 参考文献一覧 https://note.com/tsukiyonosumire/n/nc6ba7aba4d88 小説家になろうにも投稿しています。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

処理中です...