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第二章 異種族パーティー
肆話 魔族パーティーと
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基本の読み書きは可能。その事実は私を少しだけ不安から救ってくれた。
だけど、これで一つ目の質問は使ってしまったから今日はあと一つだけ。さぁ何を聞くべきか?
……ああ、そういえば。
「さっき名字がどうとか、緋川兄妹が良い処の人とか言っていたけど、この世界ってもしかして身分制度とかある? 私さっきからそこまで丁寧に話し方はしてないんだけど、街に着いた途端に不敬罪とかで捕まったりとかしない?」
「……確かにこの世界には王と貴族がいて、貴族にも家格という差があります。……が、少なくとも私達は皆、その家や身分を捨てた身です。そう固くならなくても大丈夫ですよ。ただ……この辺りの田舎町ならまだしも都市に出るなら気を付けた方がいいですね。詳しくは追々お話ししますよ」
にこりと優菜ちゃんに微笑まれた。……可愛い。
「……簡単に言うと、だ。この世界には人間と、人間とは少し違う生き物が居る。見て分かりやすいのは蒼月だが……それを総じて魔族と呼ぶ。この世界は魔族の王候貴族が人間を治めている。私も優菜も蒼月も、そういう家の生まれではあるが、既に家は出ている」
……現代の日本に制度としての身分はないけれど、金持ちと貧乏人の間には確かに格差はあって。だから、何か事情がありそうだと気づいた私はそれについてはあえて追求はしなかった。
だけど、つまり見た目分かりやすいのは蒼月さんだけじゃなく、皆人外だと。……あの魔物を倒した時に見せたアレらはそういう事なんだろう。
「では、今日の分の質問は終わりだ。……寝るぞ」
火の始末をしてしまうと、小屋はあっという間に闇に閉ざされた。そして数分もすると、すうすうと規則正しい寝息が四人分聞こえてくる。
枕代わりの鞄に布団なしの木板の床にかけるものもなく。
疲れてはいたからうとうととはするけれど、あっという間に体が痛くなり、とてもではないが熟睡には程遠い。何も見えない闇の中で、手に入れたばかりの情報がぐるぐると回り続ける。
今後どうなるのか。自分はどうしたいのか。
未だ明確な選択肢の無い今は考えても仕方ないと理解していても不安は募る。あまりにも異世界に来たのが突然すぎて、また突然戻るんじゃないかって気もするんだけど、いざ戻ったところで、あの落雷の直後に戻れるならまだしも、そうでないならどうしたら良いのか。もしも居場所が無くなっていたら……?
「私……帰りたいのかな?」
正直元の世界に戻っても生活に苦労するのは変わらない。……文明の利器分は楽だろうけど。
私は私がとうしたいのか分からないまま夜を明かした。
だけど、これで一つ目の質問は使ってしまったから今日はあと一つだけ。さぁ何を聞くべきか?
……ああ、そういえば。
「さっき名字がどうとか、緋川兄妹が良い処の人とか言っていたけど、この世界ってもしかして身分制度とかある? 私さっきからそこまで丁寧に話し方はしてないんだけど、街に着いた途端に不敬罪とかで捕まったりとかしない?」
「……確かにこの世界には王と貴族がいて、貴族にも家格という差があります。……が、少なくとも私達は皆、その家や身分を捨てた身です。そう固くならなくても大丈夫ですよ。ただ……この辺りの田舎町ならまだしも都市に出るなら気を付けた方がいいですね。詳しくは追々お話ししますよ」
にこりと優菜ちゃんに微笑まれた。……可愛い。
「……簡単に言うと、だ。この世界には人間と、人間とは少し違う生き物が居る。見て分かりやすいのは蒼月だが……それを総じて魔族と呼ぶ。この世界は魔族の王候貴族が人間を治めている。私も優菜も蒼月も、そういう家の生まれではあるが、既に家は出ている」
……現代の日本に制度としての身分はないけれど、金持ちと貧乏人の間には確かに格差はあって。だから、何か事情がありそうだと気づいた私はそれについてはあえて追求はしなかった。
だけど、つまり見た目分かりやすいのは蒼月さんだけじゃなく、皆人外だと。……あの魔物を倒した時に見せたアレらはそういう事なんだろう。
「では、今日の分の質問は終わりだ。……寝るぞ」
火の始末をしてしまうと、小屋はあっという間に闇に閉ざされた。そして数分もすると、すうすうと規則正しい寝息が四人分聞こえてくる。
枕代わりの鞄に布団なしの木板の床にかけるものもなく。
疲れてはいたからうとうととはするけれど、あっという間に体が痛くなり、とてもではないが熟睡には程遠い。何も見えない闇の中で、手に入れたばかりの情報がぐるぐると回り続ける。
今後どうなるのか。自分はどうしたいのか。
未だ明確な選択肢の無い今は考えても仕方ないと理解していても不安は募る。あまりにも異世界に来たのが突然すぎて、また突然戻るんじゃないかって気もするんだけど、いざ戻ったところで、あの落雷の直後に戻れるならまだしも、そうでないならどうしたら良いのか。もしも居場所が無くなっていたら……?
「私……帰りたいのかな?」
正直元の世界に戻っても生活に苦労するのは変わらない。……文明の利器分は楽だろうけど。
私は私がとうしたいのか分からないまま夜を明かした。
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