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第二章 異種族パーティー

参話 そして質問タイムを

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    「異世界人……ね……」
    「異世界に来ちまった割には落ち着いてやがるな?」
    「騒いだところで何も解決しませんから。それよりは有用な情報を得る方が得策です」
    「へぇ、魔物相手にびびってたのに?」
    「私が住んでいた所は……まぁ、割と都会でしたので、あんな風に獣と遭遇なんてまずあり得ませんでしたから。でも、私はあちらの世界でも孤児でしたからね。生き汚さは折り紙付きですよ」
   「ふむ。お前、異世界人って事は行く所は無いんだよな?」
    「……どこか私でも住み着いて仕事が貰えれば――ですけど、難しそうなら……そうなるでしょうね」
    「陽彰、お前は何が出来る?」
    確認するように草治が尋ねてきた。
   「……戦うことは無理だし、職人的な技術や知識もないわ。私の世界ではまだ学生だったから……読み書き計算は出来る――と言いたいところだけど、世界を越えたから……計算能力以外はこの世界でどの程度役に立つものか……」
    「少なくともこの近辺の田舎の町ではあまり役に立ちそうにないな」
   「……ですよね」
    うん。何となくそんな気はしていた。
   「仕方ない。ここから一番近い都市までは面倒を見てやる。しばらくは俺達についてきて、この世界のことについて学べ」
    そしてそれが、彼が下した判断だった。
   「分かりました。よろしくお願いします」
    私も、こんな森の中で一人放り出されてしまえば死んでしまうんだから、大人しく頷いて頭を下げておく。
    ……取り敢えずファーストコンタクトが悪い人達でなくて良かったと胸を撫で下ろした。
   「では早速。私の知識と常識がどの程度この世界で通用するか知りたいので、質問しても良いですか」
   「……そうだな。だが、明日も朝は早いんだ、あまり沢山は受けられない。一晩につき二つまで質問に答えよう」
    「……では。最初にこの世界の文字について。こうして会話を交わすのには問題が無いようですが、読み書きが現時点で通じるのか分からないので、ちょっとこのノートに書いてみて貰えませんか?」
    唯一この世界に持ってきた学生鞄に入っていたノートとシャープペンシルを彼に押し付けるように渡した。
   「書くのは構わんが……随分と質の高い紙だな。……お前孤児だと言っていなかったか?」
   「そうですよ?    それ100均で三冊セットで売られていた超安物ですもん」
   「これが安物?    ばかな。こんな物、王でさえ特別な物にしか使わんのではないか?」
    ……どうやら王の居る世界の様だが、彼らの服装から何となく予想はしていたが、やはり文明的には日本よりかなり遅れているらしい。
    「技術が特に発展した国だったんです」
    「……今は良いが、これは持っていると面倒に巻き込まれるぞ。森を出る前に焼却する」
    さらさらと何かを書き付けて彼は言った。
    「読めるか?」
     彼が書いたのは、ひらがな、カタカナ、漢字、アラビア数字。……アルファベットはないけれど、読める。
     彼らが先程名乗った名前が漢字と読み仮名付きで書かれた下に0~9までの数字が書かれていた。
    「はい。有り難いことに、読み書きは問題無さそうです」
     ノーとはともかく教科書まで焼かれてしまうのはちょっと困る……んだけど、そもそも元の世界に戻れるかどうかも分からない状況では教科書より自分の命のが大事だし。
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