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第一章 もしかして異世界……?
弐話 〝私〟は星野陽彰である。
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私、星野陽彰は孤児だ。
父親は顔も名前も知らないが、おそらくはまだこの世で生きているだろう。……もしかすると腹違いの兄弟だって居るかもしれない。何しろ両親の直接の離婚理由が父親の浮気だったから。
けど、そんなの私の知った事じゃない。
母親は顔も名前も知っている。というか、私の星野という名字は母の旧姓だ。
……けれど、私の実父とは別の男と再婚して以来一度も会っていないし、年賀状すら来なくなって久しい。
父方祖父母と母は折り合いが悪く、母方祖父母宅には母の兄――つまり私の伯父家族が同居していて、たまに遊びに行くならともかく、気軽には頼れなかった。
……だから今、私は施設に居る。
公立高校に通ってはいるけど、今どきスマホどころかガラケーも持ってない女子高生が、クラスでどんな立ち位置に置かれるかなんて言うまでもないでしょ?
現状、ヒキコモリなんて出来る環境じゃないし、この先も生きていくには働かなきゃいけなくて、その為には少しでも多く学んで少しでも就職活動を有利に進められるようにしないと、ただでさえハンデを背負っているのだから、遊んでる暇はない。
――だけど、現実ってホントままならない。
両親の直接の離婚理由は父親の浮気だけど、そうなった原因は私にある。
私がまず女だったから。
跡継ぎ長男を望んだ父の両親は母を責めた。
その上、身体の弱かった私は頻繁に入退院を繰り返していた。
……特に重大な病や障害を抱えていた訳じゃない。
だから、これといった治療をするでもなく、ただ対処療法をするしかない、先の見えない闘いと義両親からのいびりに疲弊する妻を、夫である父は見てみぬフリして浮気。
病弱な孫娘なんか要らない義両親は、その不倫相手を歓迎し、父は母を捨てて再婚。
……これらは私が三歳になるかならないかの頃の話だから、私は実父の顔も名前も知らない。
その後、私を抱えた母は必死に働いて養ってくれたけど、私の病弱な身体は一向に変わらず、母が過労で倒れたのが私が小学生に上がる直前で。
私は、施設に預けられた。
預けられてすぐは母も頻繁に会いに来てくれていたのに。……いつからだっただろう。母に彼氏ができ、やがて再婚してからは一度も会っていない。
だから、今の私は正しく孤児なんだろうな、と理解はしていた。
なにより物心ついた頃からは、この病弱な身体の理由にも見当がついたから。
幼い頃は虚言癖と片付けられた奴らの存在。
――幽霊。妖怪。モノノケ。あやかし。
気付けば見えていた、本来見えてはいけないモノ。
アレにかかわると、私の身体は体調を崩す。
そんなだから、当然私に友達なんて出来る訳もなく。
だから私は今日も奴らの入って来れない安全地帯で本を読んでいた。
いつもと変わらない、日常――。
その、はずだったのに。
父親は顔も名前も知らないが、おそらくはまだこの世で生きているだろう。……もしかすると腹違いの兄弟だって居るかもしれない。何しろ両親の直接の離婚理由が父親の浮気だったから。
けど、そんなの私の知った事じゃない。
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……けれど、私の実父とは別の男と再婚して以来一度も会っていないし、年賀状すら来なくなって久しい。
父方祖父母と母は折り合いが悪く、母方祖父母宅には母の兄――つまり私の伯父家族が同居していて、たまに遊びに行くならともかく、気軽には頼れなかった。
……だから今、私は施設に居る。
公立高校に通ってはいるけど、今どきスマホどころかガラケーも持ってない女子高生が、クラスでどんな立ち位置に置かれるかなんて言うまでもないでしょ?
現状、ヒキコモリなんて出来る環境じゃないし、この先も生きていくには働かなきゃいけなくて、その為には少しでも多く学んで少しでも就職活動を有利に進められるようにしないと、ただでさえハンデを背負っているのだから、遊んでる暇はない。
――だけど、現実ってホントままならない。
両親の直接の離婚理由は父親の浮気だけど、そうなった原因は私にある。
私がまず女だったから。
跡継ぎ長男を望んだ父の両親は母を責めた。
その上、身体の弱かった私は頻繁に入退院を繰り返していた。
……特に重大な病や障害を抱えていた訳じゃない。
だから、これといった治療をするでもなく、ただ対処療法をするしかない、先の見えない闘いと義両親からのいびりに疲弊する妻を、夫である父は見てみぬフリして浮気。
病弱な孫娘なんか要らない義両親は、その不倫相手を歓迎し、父は母を捨てて再婚。
……これらは私が三歳になるかならないかの頃の話だから、私は実父の顔も名前も知らない。
その後、私を抱えた母は必死に働いて養ってくれたけど、私の病弱な身体は一向に変わらず、母が過労で倒れたのが私が小学生に上がる直前で。
私は、施設に預けられた。
預けられてすぐは母も頻繁に会いに来てくれていたのに。……いつからだっただろう。母に彼氏ができ、やがて再婚してからは一度も会っていない。
だから、今の私は正しく孤児なんだろうな、と理解はしていた。
なにより物心ついた頃からは、この病弱な身体の理由にも見当がついたから。
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――幽霊。妖怪。モノノケ。あやかし。
気付けば見えていた、本来見えてはいけないモノ。
アレにかかわると、私の身体は体調を崩す。
そんなだから、当然私に友達なんて出来る訳もなく。
だから私は今日も奴らの入って来れない安全地帯で本を読んでいた。
いつもと変わらない、日常――。
その、はずだったのに。
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