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魔王対策
色欲の街
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ふと吉原の名が浮かんだけれど、周囲の建物は和風でも中華風でもない。
普通に石造りの集合住宅が並ぶが、どれも派手な色で塗装され、美しい女のみならず色男を見世に出している店もある。
表の看板は飲食店でも、店員は色女に色男で食後は部屋でむにゃむにゃするのが目的の店とか、マッサージやエステのはずが、やらしい系のそれだったり。
街は異様な活気に満ち溢れていた。
街を行く人々は頬を染めたり鼻の下を伸ばしたりとまぁ楽しそうな様子であるし、客を待つ方も上客を得ようとアピールに必死だ。
客引きらしい者や、同伴の最中なのかやたらとべたべたと相方にくっつく方々も少なくない。
確実に、18禁レベルの光景が当たり前に繰り広げられていた。……きっとこの通りの両端に建ち並ぶ建物の中ではもっと扇情的な光景が広がっているのに違いない。
――そんな街の中、肩身狭そうに端の暗がりに教会はあった。
神眼石が無ければまともに生活できないこの世界では、こんな街でも一つは教会はある。
けれどこの教会に訪れる者は、節目節目の儀式や結婚式などといった特別な日に思い出す程度の物らしく、ここのそれは周囲の派手な建物と比較せずとも随分と質素な佇まいで、周囲と比べてしまえば貧相とすら言える装いだった。
「おお……、これは……。これで……この教会を訪れる者が増えてくれれば良いのですが……」
例の魔道具を説明しながら設置し、一度作動させて見せれば、片手の数で足りるだけの人数しか居ない神職の者達は嘆きか感動か判別し難い涙を流した。
……普通この規模の街の教会なら二桁は人が居るのが普通なのに。
人の少ない辺境の村レベルの教会。……私達はきっとこの街が特殊なんだと思いたかった――の、だけど。
次の街も、その次の街も。
多少テイストや押しの店の種類が違う――飲食店系の店が多かったり、お泊まりの店が多かったり――という事はあっても、その手の店が主体となった街と物のついでのような教会という構図はほぼ一緒。
「この国に生まれた美人な子は大抵売られて親の懐を潤す糧にされるのが常でね。……けど、売られた子は商品にする為に衣食住は保証される。上手くすればこの国ではむしろ勝ち組になれるのですよ」
幾つ目かの街の教会で、私達はその教会の神職から話を聞いた。
「この国では食料を買う金が無ければ餓えて死ぬだけです。親が裕福なら良いが、この国ではそんなのはお上だけ。顔の出来の良くないのは大抵武を磨き兵を目指す。……そうすれば花町の用心棒や警備兵といった職にありつけますからな。……だが、それも出来ぬなら。教育など受けられぬ身では机仕事など望めぬ。せいぜい小遣い稼ぎの日雇いにこき使われて……」
「……俺が、アンリに拾われなければ辿るかもしれなかった未來、ですね」
「……嫌な空気だ」
普通に石造りの集合住宅が並ぶが、どれも派手な色で塗装され、美しい女のみならず色男を見世に出している店もある。
表の看板は飲食店でも、店員は色女に色男で食後は部屋でむにゃむにゃするのが目的の店とか、マッサージやエステのはずが、やらしい系のそれだったり。
街は異様な活気に満ち溢れていた。
街を行く人々は頬を染めたり鼻の下を伸ばしたりとまぁ楽しそうな様子であるし、客を待つ方も上客を得ようとアピールに必死だ。
客引きらしい者や、同伴の最中なのかやたらとべたべたと相方にくっつく方々も少なくない。
確実に、18禁レベルの光景が当たり前に繰り広げられていた。……きっとこの通りの両端に建ち並ぶ建物の中ではもっと扇情的な光景が広がっているのに違いない。
――そんな街の中、肩身狭そうに端の暗がりに教会はあった。
神眼石が無ければまともに生活できないこの世界では、こんな街でも一つは教会はある。
けれどこの教会に訪れる者は、節目節目の儀式や結婚式などといった特別な日に思い出す程度の物らしく、ここのそれは周囲の派手な建物と比較せずとも随分と質素な佇まいで、周囲と比べてしまえば貧相とすら言える装いだった。
「おお……、これは……。これで……この教会を訪れる者が増えてくれれば良いのですが……」
例の魔道具を説明しながら設置し、一度作動させて見せれば、片手の数で足りるだけの人数しか居ない神職の者達は嘆きか感動か判別し難い涙を流した。
……普通この規模の街の教会なら二桁は人が居るのが普通なのに。
人の少ない辺境の村レベルの教会。……私達はきっとこの街が特殊なんだと思いたかった――の、だけど。
次の街も、その次の街も。
多少テイストや押しの店の種類が違う――飲食店系の店が多かったり、お泊まりの店が多かったり――という事はあっても、その手の店が主体となった街と物のついでのような教会という構図はほぼ一緒。
「この国に生まれた美人な子は大抵売られて親の懐を潤す糧にされるのが常でね。……けど、売られた子は商品にする為に衣食住は保証される。上手くすればこの国ではむしろ勝ち組になれるのですよ」
幾つ目かの街の教会で、私達はその教会の神職から話を聞いた。
「この国では食料を買う金が無ければ餓えて死ぬだけです。親が裕福なら良いが、この国ではそんなのはお上だけ。顔の出来の良くないのは大抵武を磨き兵を目指す。……そうすれば花町の用心棒や警備兵といった職にありつけますからな。……だが、それも出来ぬなら。教育など受けられぬ身では机仕事など望めぬ。せいぜい小遣い稼ぎの日雇いにこき使われて……」
「……俺が、アンリに拾われなければ辿るかもしれなかった未來、ですね」
「……嫌な空気だ」
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