349 / 370
魔王対策
大陸一周の旅
しおりを挟む
「……あれが」
「ダムフール大陸……」
エルシー大陸を後にして数日後。
ダムフール大陸がようやく水平線上に青くそのシルエットが浮かび、次第にはっきりくっきり見えるようになりながら、その影は大きくなっていく。
私達がダムフール大陸の玄関口とする国の名はフレール。
軍港を持つ海軍国家であるらしい。
……一応陸軍はあるようだけど、海軍のおまけ部隊といった扱いで、その勢力差は名前こそ同じ階級の肩書きであろうとも、警察庁キャリア組と地方警察署の所轄署管轄の交番勤務のお巡りさん位の差があるらしい。
政治体制は王政だけれど、王になるのは海戦で多く功績をあげた者とされ、所謂“王家”が存在しない。
毎年開催される船上の武術大会で優勝した者が王となる。
そんな国ゆえに、港へ近づくと即座に巡視船が寄ってきた。
この国の船ではないから、海上で入国審査が行われるのである。
ここで逃げたりすれば即座に攻撃されるし、怪しいそぶりを見せれば尋問も厳しくなる。――勿論基本的には魔道具を設置しに来ただけの私達に疚しいところはない。
取り敢えずエルシー国の許可証を見せて、訪問理由を説明する。
「この通り神々の神託を授かり、エルシー国の許可を得て、この国の教会を訪ねたいのです」
「ついでに貿易交渉など出来るなら幸いですが、最低限本題さえ済ませられれば我々はすぐに隣国へと参ります」
「――念のため、我が国の王へと確認をとる。このまま少々待たれよ」
「勿論ですわ」
――程なく、巡視船から大砲が放たれ、空に色付の煙が数色流れた。
それからしばらくの後、今度は陸から大砲の音が空を裂いて響き渡り、同じ様に空に色の付いた煙が流れて消える。
「我が国は、そなたらの入国を歓迎する。そちらの用事が済み次第、王が会食に招きたいと仰せである」
「ありがとうございます。是非伺わせていただきます」
港のギルドで付近の地図を調べて教会のありかを調べ、私達はグリフィン車の旅に出る。
……寝起きは船や城でするんだけどさ。
教会は、最低限の説明だけしてエルシー国の許可証を見せれば大した問題も起きずに魔道具を設置させてくれる。
――正直、移動時間が勿体なく面倒だけど、実に簡単なお仕事だ。
その移動時間とて交代で船や城で仕事なり自由時間にあてられるのだから、たまに現れる自国周辺では珍しい魔物の討伐や採集等ついつい冒険者稼業をしていた頃に気分が戻る。
数日かけて仕事を終え、港の船へと戻ると、待っていたように――というか実際待っていたんだろうけど――使者が招待状を持って現れた。
明日の昼。この国の王との昼餐会の予定が決まった。
「ダムフール大陸……」
エルシー大陸を後にして数日後。
ダムフール大陸がようやく水平線上に青くそのシルエットが浮かび、次第にはっきりくっきり見えるようになりながら、その影は大きくなっていく。
私達がダムフール大陸の玄関口とする国の名はフレール。
軍港を持つ海軍国家であるらしい。
……一応陸軍はあるようだけど、海軍のおまけ部隊といった扱いで、その勢力差は名前こそ同じ階級の肩書きであろうとも、警察庁キャリア組と地方警察署の所轄署管轄の交番勤務のお巡りさん位の差があるらしい。
政治体制は王政だけれど、王になるのは海戦で多く功績をあげた者とされ、所謂“王家”が存在しない。
毎年開催される船上の武術大会で優勝した者が王となる。
そんな国ゆえに、港へ近づくと即座に巡視船が寄ってきた。
この国の船ではないから、海上で入国審査が行われるのである。
ここで逃げたりすれば即座に攻撃されるし、怪しいそぶりを見せれば尋問も厳しくなる。――勿論基本的には魔道具を設置しに来ただけの私達に疚しいところはない。
取り敢えずエルシー国の許可証を見せて、訪問理由を説明する。
「この通り神々の神託を授かり、エルシー国の許可を得て、この国の教会を訪ねたいのです」
「ついでに貿易交渉など出来るなら幸いですが、最低限本題さえ済ませられれば我々はすぐに隣国へと参ります」
「――念のため、我が国の王へと確認をとる。このまま少々待たれよ」
「勿論ですわ」
――程なく、巡視船から大砲が放たれ、空に色付の煙が数色流れた。
それからしばらくの後、今度は陸から大砲の音が空を裂いて響き渡り、同じ様に空に色の付いた煙が流れて消える。
「我が国は、そなたらの入国を歓迎する。そちらの用事が済み次第、王が会食に招きたいと仰せである」
「ありがとうございます。是非伺わせていただきます」
港のギルドで付近の地図を調べて教会のありかを調べ、私達はグリフィン車の旅に出る。
……寝起きは船や城でするんだけどさ。
教会は、最低限の説明だけしてエルシー国の許可証を見せれば大した問題も起きずに魔道具を設置させてくれる。
――正直、移動時間が勿体なく面倒だけど、実に簡単なお仕事だ。
その移動時間とて交代で船や城で仕事なり自由時間にあてられるのだから、たまに現れる自国周辺では珍しい魔物の討伐や採集等ついつい冒険者稼業をしていた頃に気分が戻る。
数日かけて仕事を終え、港の船へと戻ると、待っていたように――というか実際待っていたんだろうけど――使者が招待状を持って現れた。
明日の昼。この国の王との昼餐会の予定が決まった。
0
お気に入りに追加
1,081
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。
黒ハット
ファンタジー
前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました
竹桜
ファンタジー
自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。
転生後の生活は順調そのものだった。
だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。
その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。
これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる