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国王のお仕事
外交官とお食事
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会食と言いつつここはエルシー国で、連れてこられる人員も制限されていたから、出される食事はエルシー国の、それもこのホテルの料理だ。
和食っぽい料理をフォークやナイフ等のカトラリーを使ってお上品に食べるのはちょっと違和感があるけど、今はそれどころじゃない。
「それにしても……この国の外交官はとても優秀なんですね」
表情だけは取り繕って笑顔を浮かべているけど、心の中は怒りの炎が渦巻いている。
「小国とはいえ一国の国主のおもてなしを御一人で担われるとは……。余程王に信頼されているのでしょうね?」
「ああ……確かに。――そういえば我が国からのお土産をお持ちしたのですが、受け取って下さいますか?」
チクリと嫌みをぶつけつつ、まずは餌を撒く。
渡すのは、かつて私が開発した冷蔵庫から進化した商品、クーラーボックスだ。
「は?」とか思ったお客様、これをグレードダウンと思ったら大間違い! 保冷剤を入れて冷やすだけのキャンプ用品と一緒にしないでくださいね?
こちら、空間拡張魔法を施してありまして、外見は持ち運びしやすいトートバッグサイズながら、家庭用冷蔵庫三台分は収納出来る優れモノ!
まさに今、こういうお貴族様の遠出には重宝する代物ですよ!
……てな説明を、オブラートに包み貴族仕様に飾った言葉で述べ、差し出した。
「他にも部屋の温度を調節する空調魔道具など取引のお話などさせていただきたいと思っていたのですけどね?」
――うん。王様が待っていたら、話の流れ次第でその可能性があったのは嘘ではない。
冷暖房用の魔道具も、かつて私が作った物から発展して色々便利なものが生まれている。
だけど。
「……この短い会議中、多くの国々から色々お話をいただいていますの。二度目があるか無いか分からないのではお話合いは難しそうですね。ああ、でも貴国の鉱物資源には興味がございましてね?」
こちらは女王である私が、きちんと予習した上で乗り込んでいるのだ。徹底的に利益をむしり取ってやる。
「ぜひお話を聞かせて下さいな♪」
「え、ええ……勿論」
ふふふ、外交官の顔色が悪い?
そんなの先に舐めてかかった方が悪いんだから気にしない。……いや、倒れられちゃ困るから最低限の配慮はするけどさ。だけどこの国際会議に無能を連れては来ないだろうから、それなりに遊べるものと期待しよう。
「アンリが楽しそうで何よりです」
救いを求めるようにレイフレッドを見た外交官は、その台詞に絶望の眼差しに変えて彼を見直した。
「ご馳走さまでした。料理はとても美味しかったですわ。さぁ、本題に入りましょうね?」
「はい……」
和食っぽい料理をフォークやナイフ等のカトラリーを使ってお上品に食べるのはちょっと違和感があるけど、今はそれどころじゃない。
「それにしても……この国の外交官はとても優秀なんですね」
表情だけは取り繕って笑顔を浮かべているけど、心の中は怒りの炎が渦巻いている。
「小国とはいえ一国の国主のおもてなしを御一人で担われるとは……。余程王に信頼されているのでしょうね?」
「ああ……確かに。――そういえば我が国からのお土産をお持ちしたのですが、受け取って下さいますか?」
チクリと嫌みをぶつけつつ、まずは餌を撒く。
渡すのは、かつて私が開発した冷蔵庫から進化した商品、クーラーボックスだ。
「は?」とか思ったお客様、これをグレードダウンと思ったら大間違い! 保冷剤を入れて冷やすだけのキャンプ用品と一緒にしないでくださいね?
こちら、空間拡張魔法を施してありまして、外見は持ち運びしやすいトートバッグサイズながら、家庭用冷蔵庫三台分は収納出来る優れモノ!
まさに今、こういうお貴族様の遠出には重宝する代物ですよ!
……てな説明を、オブラートに包み貴族仕様に飾った言葉で述べ、差し出した。
「他にも部屋の温度を調節する空調魔道具など取引のお話などさせていただきたいと思っていたのですけどね?」
――うん。王様が待っていたら、話の流れ次第でその可能性があったのは嘘ではない。
冷暖房用の魔道具も、かつて私が作った物から発展して色々便利なものが生まれている。
だけど。
「……この短い会議中、多くの国々から色々お話をいただいていますの。二度目があるか無いか分からないのではお話合いは難しそうですね。ああ、でも貴国の鉱物資源には興味がございましてね?」
こちらは女王である私が、きちんと予習した上で乗り込んでいるのだ。徹底的に利益をむしり取ってやる。
「ぜひお話を聞かせて下さいな♪」
「え、ええ……勿論」
ふふふ、外交官の顔色が悪い?
そんなの先に舐めてかかった方が悪いんだから気にしない。……いや、倒れられちゃ困るから最低限の配慮はするけどさ。だけどこの国際会議に無能を連れては来ないだろうから、それなりに遊べるものと期待しよう。
「アンリが楽しそうで何よりです」
救いを求めるようにレイフレッドを見た外交官は、その台詞に絶望の眼差しに変えて彼を見直した。
「ご馳走さまでした。料理はとても美味しかったですわ。さぁ、本題に入りましょうね?」
「はい……」
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