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国王のお仕事

ホテルへ移動しました。

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    船が港に着いたのは、朝食を終えた頃だったのに。
    私達が港に下りたのは昼食を済ませてから休憩を挟む余裕があった位の時間だった。
    用意された車に乗り込むと、それはリムジン的な車で私達の感覚だとそれなりに豪華な代物ではあったのだけど……。
    (……気のせいかな。船から見えてた車より若干グレードダウンしてないか?)
    朝に見た車に比べると小さいというか……。
    そして車は、港の前に建ち並ぶ完全オーシャンビューのビルのその後ろに建つホテルへと私達を導いた。
    明らかに前のビルよりランクが低いと分かる……んだけど、それでも高級ホテルには違いなく、私達は早々に部屋へと通された。
    窓からは前に建つビルの隙間から一応海が見える。
    まずリビングがあり、そこから複数の寝室に繋がる廊下が伸びている。
    トイレ、洗面、バスルームもすべて部屋付きだ。
    これ、日本のホテルならスイートレベルの部屋だよね。リビングのテーブルにはウェルカムフルーツとドリンクが用意されてるし。
     時間はちょうど午後のお茶のタイミングだ。
   「……着替える前に少しだけ休憩しましょうか」
     どうせパーティー会場でもたっぷり待たされるのだろう。これまでの扱いからそう容易く予想がついてしまうから、先に少し腹を満たしておくのも悪くない。
    「おお、甘い。これ美味いよ」
    子供達が喜んでフルーツにかぶりついた。
    私も一つ、巨峰の実を房から取って食べる。つるんと皮から飛び出した実は張りがあって食べごたえ十分、甘い果汁が口内を潤した。そのままもう二、三個頬張り、お茶を飲む。
    お茶が済んだら、流石に夜会の準備を始めないといけない。
    この国の扱いにはカチンとくるけど、私達が新参なのは確かなのだ。早々に粗相をして他国からのイメージを下げるなんて事はしたくない。
    支度を終えると、やはりすぐに迎えが来た。
    先程のリムジンが待っていて、会議場に一番近いホテルへと私達を送り届けた。
    どうやらこの国に特に優遇された国はリムジンの迎えもなく、本当に時間ギリギリまでこのホテルの部屋でのんびり出来る仕様らしい。
    ……その中には勿論我らが三皇帝も含まれる。
   「俺達の代では無理でも、いつか彼らに並ぶ国にしたいですね」
    三国に囲まれているから、国土は増やしようが無いけど、技術や経済を発展させれば国は潤う。
    「……今でも、私達の国より国力の低い国はあるはずよ。少なくとも闇ギルドの件で沈んだ国よりは栄えているはずだもの。それをこの国には理解して貰わないと。――外交、頑張りましょう」
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