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国王のお仕事

レイフレッドの両親

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    「――ほら、これだよ」
    国での処刑が済み、各国から招いたお客をもてなし無事送り返し、手続きやらなにやら片付けたらもう入学式で。
    ようやく落ち着いたのは五月に入ってからだった。
    スケジュールに少し余裕ができたので、私達は以前シリカが言っていた本を閲覧させて貰いに来たのだ。
    シリカから手渡されたのは、両手で抱えるような大判で分厚い本だった。
    「これの……ああ、あった、これだ」
    まるで証明写真ように、胸から上を撮った個人写真が家計図表に名前と共に載っていた。
    「これが……俺の両親……」
    父親は、あのお祖父さんから険という険を全て取り除いた人畜無害な表情をしているだけの生き写しのような顔をしていた。
    正直レイフレッドと似ている部分を探すのは難しい。
   「写真で見るとな、まるで似ていないだろう?    だが、奴をよく知る者は、なかなか真面目な奴だと言っていた。……何より愛妻家だったとな。家族を道具か何かを見るような爺とはえらい違いだと当時はよくからかいのネタになっていたらしい」
    ……そう言えば、彼の死因も妻を守っての討ち死にだ。
    「その分、外見は母親に似たな」
    その彼と二重線で結ばれた先に居るのは、昔のレイフレッドそっくりの女性だった。……今でこそ男らしくなってしまっているから印象が違うけれど、昔のレイフレッドを知っていればそっくりだと誰もが言うだろう。
    「後で食堂に来るようにと、かつて彼と付き合いのあった連中を呼びつけてある。飯を食いながら昔話に花を咲かせると良い」
    じっと写真を見下ろすレイフレッドを置いて、シリカは書庫を出て行った。
    「……何というか、複雑な気持ちです」
    レイフレッドは眉間にシワを寄せながらも口角を上げて笑う。
    「悲しい、と言う気持ちは……正直ありません。この人達が俺の親なんだ、と理解はしますけど……やっぱり実感はない。だけど……」
    レイフレッドは本を押し退けて机に顔を押し付けるように突っ伏した。
    「一度で良いから、話してみたかった……。そんな気がして……何となく寂しい気がして……。でも、俺にも両親が居たんだと思うと嬉しい。……喜怒哀楽のどれをどう表現したら良いか分からないんです」
    そう言うレイフレッドは肩を震わせ、机に滴の跡をぽつぽつ作る。
    「うん……。一度に全部感情を処理する必要なんて無いよ。また、ここへ来たときに何度でも見せて貰えば良いんだもの。私達にはまだまだ、時間はたっぷりとあるんだからさ」
    私はレイフレッドに寄り添い、彼が落ち着く時をじっと待ち続け――書庫の中で十二時の鐘の音を聞いた。
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