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君花2

乱入者

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    ……こういう展開になる可能性は、予め想定していた。だから、会場に城ではなく空間で繋げた森の中の小屋へとご案内したのだ。
    「俺達も暴れるぜ!」
    そして、近くで見ていた子供達も参戦してくる。
    多対一なのだが、この爺さん中々やる。平和な領地を治めてたハズなのに。
   「この爺さんは当主を継ぐ以前は軍に居てブイブイ言わせてた……らしいよ、ドルトムントの爺共の話じゃさ!」
    「道理で、剣術が素人のものじゃないはずだ!    体さばきとか術の使い方が上手すぎるぜ!」
    「ああ。魔術の援護がなきゃキツかったな、これ」
    だけど、楽勝ではないがこのままいけば制圧できる、その程度の話だったのだ。――その瞬間までは。
    「ふふふふふ、来たよ!    ついにこの時が来た!」
    不意に聞き覚えのある――だけど二度と聞きたくなかった声がした。
    空間の出口が開いてもいないのに勝手に開き、そこから出てきた男は……
   「誰、アンタ」
    声には聞き覚えがあるので既に見当は付いていたけど、あまりに容姿の変わりようが凄まじくて一瞬耳を疑ってしまったのだ。
   「あ‘’あ‘’!?」
    すると目ばかりギラギラさせた表情で睨み付けられた。……恐ろしくはないが、怖い。こんな奴にやられるとは思わないけど、顔が怖い。何というか、生身の人間らしくない顔で……。   
    「さあ、殺戮の宴の始まりだよぉ!」
    その声で空間から出てくる奴隷と魔物。そして…… 
   「アンタ……まさか元子爵」
    何やら精魂尽き果てたような老人が現れる。……けど、どこか見覚えのある面影。
   「……はは、ちょっと薬の味を覚えさせたらあっという間に壊れちゃったよ、これ」
    薄笑いを浮かべる男はその襟首を人差し指と親指とで摘まんで――投げた。
   「だけどまだ盾代わりにはなるからね!」
    そして魔法の空気砲でその背を撃った。
    撃たれた子爵が身体を逆くの字にして吹き飛ばされてくる。
     ……下手に攻撃はしかねるので空間を開こうとして――
    「なっ、また魔法が使えない!?」
     ここはウチの小屋。事前に確かめて何の仕掛けもなかったはずなのに、どうして! 
    咄嗟に勢いのまま投げ飛ばし、私は衝突を免れたけど、元子爵は呻いて動かなくなってしまった。……生きていると思いたい。
     「さぁ、ようやくあの日の屈辱を晴らす時が来たんです!    お前達、存分に戦いなさい!」
    奴が楽しそうに笑う。
   「お母様は下がっていて!」
    ……魔法が使えないと役立たず度が上がる私は子供達に後ろに下げられてしまった。
    仕方なくポーション配りに徹して彼らの戦いの補佐に回る。
   「お前は今ここで捕らえて、今度こそ処刑台に送ってやる!」
     ……小屋の中、死闘が始まった。
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