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領主一族のお仕事

イアンのお仕事

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    イアンは双子の兄の方。
    彼は剣も魔法もそこそこ使えるけれど、剣はシンに劣り、魔法はレイリアに劣る。
    だからどちらの専門にも就かずに、レイフレッドの仕事の補佐をするように、巡視団を組織しそれを統括する立場に就いた。
    ちなみに巡視団、と言うのは役人の不正を取り締まったり、税の支払いを渋る者への督促に赴いたりといった業務や、そもそもその地域の税制が現状に即しているかを検証したり……といった業務を主に行う部署……らしい。
    基本的には事務仕事だけど、不正をやらかす者を取り押さえるには多少の肉体言語も必要だろうと、剣や魔法の修行は欠かしていなかった。
    商会から空間拡張型の馬車を数台買い込み、班毎に一台支給し、各地を回らせている。
    そして収集した情報を城の一画で吟味したり、捕らえた者を一時収監し、罪状次第では警らに突き出す。
    「うー、俺も馬車で仕事がしてえ……」
    けれど総括の立場ではなかなか城の本部は離れられず、そのストレスを発散するように義兄や姉との訓練を重ねていた。
    「パートナーは決めたよ。姉さんとは真逆の大人しい娘だよ。鬼族の子なんだけどさ、親御さん……つーか親父さんがまた……頑固一徹な職人タイプで、パートナーならともかく『結婚はまだ早い!』って言って聞かなくてさー」
     聞くとそのお父様は和菓子職人、らしい。
     そういえば何度かお土産に和菓子を買ってきていたな、と思えばやはり彼女の実家で購入した物だと言う。
   「近々紹介したいなぁ、とは思ってるんだけどねぇ……」
   少し遠い目をしてレイフレッドを見る。
   「アレ見てると……まだもうしばらくは難しいかもなぁ、とも思っちまうんだよなぁ……」
    レイリアの結婚式は一先ず乗り越えたけれど、まだがある事を思い出したレイフレッドはカレンのパートナーを気にしていた。
    「俺も姉妹が居る身だから、ろくでもない男にひっかかったら……って心配する気持ちはまぁ分かるんだけどさ。――俺、ろくでなしじゃないし。そんな風に見えるのか?」
    「見えないわよ。顔やら性格やらは人の好みもあるでしょうけど、人としては何ら問題ないわよ」
    「だろ?    義兄さんだってそうじゃん。……なのにあの人はああだったしさ」
    困ったように苦笑したイアンは、「まあ気長に説得するさ。時間はまだあるんだし」と肩を竦めた。
    「俺はハーフと言えど吸血鬼だし、彼女は鬼族だ。吸血鬼には劣るものの、人間よりは寿命も長いからな」
   ……イアンの結婚式はまだまだ先になりそうだ。
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