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領主のお仕事
逃亡
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騒ぎに気付いたのは、階段を降りかけた時の事だった。……階下がやけに騒がしい。
「――何だ?」
シリカも訝しげな顔をして先を睨んだ。
「あ、シリカ様!」
階段を駆け上がってきた騎士がシリカを見て即座に頭を下げた。
「申し訳ございません! 逃げられました!」
「何?」
「あのデ……いえ太った男は無事収監したのですが、もう一人の男に逃げられました!」
何と。ブレーンが逃げた!? 魔封じの魔道具を着けさせられていた筈だけど……。
「そう言えば、魔法は使えなくともスキルには使えるものもあったわ……」
何のスキルを使ったかは分からないが、面倒なのを取り逃がしたものだ。
「……済まない。せっかく苦労して捕まえたものを」
即座にシリカが謝罪をくれた。
「いえ、私達も考えが足りませんでした。――でも、目的の一人は捕まえたんです。まず一つ、終わりにしましょう」
ブレーンを取り逃がしたことで、呼ぶのはマティス一人になったけど。
「ふふふ、私とは久しぶりだね、ビル? 全くパッと見ただけでは誰だか分からない程に肥え太って醜くなって……。元々たかが知れていた器ではあったけど、人ってここまで堕ちるんだ。――ありがたく反面教師として覚えておくよ」
まぁ端から分かっていた事ではあったけれど、やはり大した情報も持っていなかったビルは、マティス様が引き取っていかれた。
国で処刑するそうだ。
「見に来たいならいくらでも招待状を用意するけど、要る?」
「――私は欲しいです」
その問いに、レイフレッドが即答した。
「間違いなく終わったのだと、この目で見届けたい」
「私は……」
私は、どうしたいんだろう。……散々賊退治とかしてるんだから、今更人死にがどうのと言う気はないけど、だからって敢えて見たいものじゃない。
少なくとも処刑をエンターテイメント扱いするのは無理だ。
それも、仮にも婚約者だった相手だ。
敢えて見たいとは思わないけど。でも、レイフレッドが言うように見届けなければ終わったと本当に安心できるのか?
少なくとも今回ブレーンは逃がしているし、元子爵は未だにどこかで生きている。まだ終わりではない。
「――私の分も、お願いします」
「了解。日時が正式に決まったら通知と一緒に送るよ」
そうして各国にはブレーンの存在だけを告知して、今回の誘拐事件は取り敢えず終結したのだった。
「父さん、怪我の具合はどう?」
「ん? もう治ったよ。血を飲んだからな」
「……吸血鬼の身体って便利だな」
「パートナーが居れば、な。……パートナー無しに吸血出来ずに生きるとなると地獄でしかないぞ、吸血鬼ってのは」
カイルの問いに、それを実体験として知るレイフレッドは肩を竦めて苦笑した。
「――何だ?」
シリカも訝しげな顔をして先を睨んだ。
「あ、シリカ様!」
階段を駆け上がってきた騎士がシリカを見て即座に頭を下げた。
「申し訳ございません! 逃げられました!」
「何?」
「あのデ……いえ太った男は無事収監したのですが、もう一人の男に逃げられました!」
何と。ブレーンが逃げた!? 魔封じの魔道具を着けさせられていた筈だけど……。
「そう言えば、魔法は使えなくともスキルには使えるものもあったわ……」
何のスキルを使ったかは分からないが、面倒なのを取り逃がしたものだ。
「……済まない。せっかく苦労して捕まえたものを」
即座にシリカが謝罪をくれた。
「いえ、私達も考えが足りませんでした。――でも、目的の一人は捕まえたんです。まず一つ、終わりにしましょう」
ブレーンを取り逃がしたことで、呼ぶのはマティス一人になったけど。
「ふふふ、私とは久しぶりだね、ビル? 全くパッと見ただけでは誰だか分からない程に肥え太って醜くなって……。元々たかが知れていた器ではあったけど、人ってここまで堕ちるんだ。――ありがたく反面教師として覚えておくよ」
まぁ端から分かっていた事ではあったけれど、やはり大した情報も持っていなかったビルは、マティス様が引き取っていかれた。
国で処刑するそうだ。
「見に来たいならいくらでも招待状を用意するけど、要る?」
「――私は欲しいです」
その問いに、レイフレッドが即答した。
「間違いなく終わったのだと、この目で見届けたい」
「私は……」
私は、どうしたいんだろう。……散々賊退治とかしてるんだから、今更人死にがどうのと言う気はないけど、だからって敢えて見たいものじゃない。
少なくとも処刑をエンターテイメント扱いするのは無理だ。
それも、仮にも婚約者だった相手だ。
敢えて見たいとは思わないけど。でも、レイフレッドが言うように見届けなければ終わったと本当に安心できるのか?
少なくとも今回ブレーンは逃がしているし、元子爵は未だにどこかで生きている。まだ終わりではない。
「――私の分も、お願いします」
「了解。日時が正式に決まったら通知と一緒に送るよ」
そうして各国にはブレーンの存在だけを告知して、今回の誘拐事件は取り敢えず終結したのだった。
「父さん、怪我の具合はどう?」
「ん? もう治ったよ。血を飲んだからな」
「……吸血鬼の身体って便利だな」
「パートナーが居れば、な。……パートナー無しに吸血出来ずに生きるとなると地獄でしかないぞ、吸血鬼ってのは」
カイルの問いに、それを実体験として知るレイフレッドは肩を竦めて苦笑した。
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