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領主のお仕事
共闘
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アレから二度追い付かれ、その度にあの男を投げ飛ばし。階段を見つけて上に上がったは良いけど……。
「まだ地下よね、これ……」
どうやら先程の階は〝地下一階〟ではなかったらしい。――果たして何階だったのか。
さらにもう一つ階段を上がると、何やら戦闘しているらしい音が聞こえてきた。
もしや、と音のする方へと向かうと――
「……おや。来てしまったのですねぇ。本当に使えない男だ」
あちこち傷を作ったレイフレッドと、無傷ながら目に涙を溜めているカイルが居た。そして彼らをなぶる、見るからに日本人な男が一人。
「母さん、奴は転移者だ! こいつが闇ギルドの助言者だよ、気を付けて! こいつ、全属性の魔法を使えるんだ!」
……成る程。なら私も――
「水刃!」
「氷盾!」
うん、攻撃は防がれたけど、魔法は使える。
「レイフレッド、カイルを私に渡して。……その方が動けるでしょ? 久々に冒険者の疾風の牙としてパーティー戦をやりましょう」
そう提案し、魔法を放つ。
「煙幕!」
敵の視界を奪い、その隙に柱の影に逃げ込む。勿論こんなのはすぐに見つかるのは分かっている。でも、数分で良いから時間が欲しかったから。
「アンリ……すみません」
「ううん、私こそ来るのが遅くなってごめんなさい。それに……多分も少ししたらあの馬鹿もここへ来るから」
「……また奴ですか」
「うん」
レイフレッドも、本来前衛職の自分より後衛のアンリが背負う方が息子は安全であろうと素早く彼をアンリに渡し、きっちり紐でくくりつけた。
「あと血も……。ひとまず回復しなさい」
「――ありがとうございます」
急を要するために、レイフレッドはアンリの首筋に牙を立てた。
……カイルは、もう何度も両親から血を貰っていた。けれど、レイフレッドがアンリから血を貰う場面は殆ど見た事がなく。ましてこんな至近距離で目にするのは勿論初めてだった。
吸血鬼等と言うお伽噺みたいな存在に自分がなったというのがこれまで上手く飲み込み切れなかったのだけど……。
見ていてすぐに分かる程、レイフレッドの疲労が癒されていく。
吸血を終えたレイフレッドはべろりと口の周りを舐め、そして体を反転させた。……敵の方を向き、駆け出していく。
アンリも柱の影から出ると、その動きを援護する為に魔法を次々と繰り出した。
そういえば、両親が共に全力で戦う様を見るのも初めてだったとカイルは気付く。
正直、自分が長男だというなら十歩位譲って良しとしても、一番上はそろそろ二十歳だと言うのに、その長女と大して歳が変わらない様に見える両親と言うのはどうなのかとも思うのだけど。
「ちくしょ、格好良いでやんの……」
ヒラヒラと身軽に舞うレイフレッドを見て、バイトが衣装着ただけのヒーローショーより格好良いと思ってしまったのは……取り敢えず内緒にしとこうと思う。
「まだ地下よね、これ……」
どうやら先程の階は〝地下一階〟ではなかったらしい。――果たして何階だったのか。
さらにもう一つ階段を上がると、何やら戦闘しているらしい音が聞こえてきた。
もしや、と音のする方へと向かうと――
「……おや。来てしまったのですねぇ。本当に使えない男だ」
あちこち傷を作ったレイフレッドと、無傷ながら目に涙を溜めているカイルが居た。そして彼らをなぶる、見るからに日本人な男が一人。
「母さん、奴は転移者だ! こいつが闇ギルドの助言者だよ、気を付けて! こいつ、全属性の魔法を使えるんだ!」
……成る程。なら私も――
「水刃!」
「氷盾!」
うん、攻撃は防がれたけど、魔法は使える。
「レイフレッド、カイルを私に渡して。……その方が動けるでしょ? 久々に冒険者の疾風の牙としてパーティー戦をやりましょう」
そう提案し、魔法を放つ。
「煙幕!」
敵の視界を奪い、その隙に柱の影に逃げ込む。勿論こんなのはすぐに見つかるのは分かっている。でも、数分で良いから時間が欲しかったから。
「アンリ……すみません」
「ううん、私こそ来るのが遅くなってごめんなさい。それに……多分も少ししたらあの馬鹿もここへ来るから」
「……また奴ですか」
「うん」
レイフレッドも、本来前衛職の自分より後衛のアンリが背負う方が息子は安全であろうと素早く彼をアンリに渡し、きっちり紐でくくりつけた。
「あと血も……。ひとまず回復しなさい」
「――ありがとうございます」
急を要するために、レイフレッドはアンリの首筋に牙を立てた。
……カイルは、もう何度も両親から血を貰っていた。けれど、レイフレッドがアンリから血を貰う場面は殆ど見た事がなく。ましてこんな至近距離で目にするのは勿論初めてだった。
吸血鬼等と言うお伽噺みたいな存在に自分がなったというのがこれまで上手く飲み込み切れなかったのだけど……。
見ていてすぐに分かる程、レイフレッドの疲労が癒されていく。
吸血を終えたレイフレッドはべろりと口の周りを舐め、そして体を反転させた。……敵の方を向き、駆け出していく。
アンリも柱の影から出ると、その動きを援護する為に魔法を次々と繰り出した。
そういえば、両親が共に全力で戦う様を見るのも初めてだったとカイルは気付く。
正直、自分が長男だというなら十歩位譲って良しとしても、一番上はそろそろ二十歳だと言うのに、その長女と大して歳が変わらない様に見える両親と言うのはどうなのかとも思うのだけど。
「ちくしょ、格好良いでやんの……」
ヒラヒラと身軽に舞うレイフレッドを見て、バイトが衣装着ただけのヒーローショーより格好良いと思ってしまったのは……取り敢えず内緒にしとこうと思う。
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