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領主のお仕事

乱闘騒ぎ Ⅱ

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    まずはレイフレッドが武器を構えて血路を拓くべく突進を繰り出した。
    私は魔法を使える様にするため、拓けた道を駆けて外へ出た。
    人の塊を抜け出たところで反転し、手加減した水魔法で彼らを混乱させる。
     その隙にレイフレッドが騎士達を無力化させていく。――今回は先の奴隷以上に傷つけたら余計な罪状が付きかねないから、レイフレッドもかなり慎重に動いていた。……先に吸血をして貰っといてよかった。でなければレイフレッド的にコレはかなりキツかっただろうから。
    だけど、先程と違い私も魔法を使えるから、戦闘そのものは――いや、素人の奴隷と騎士プロとの差でトントンか……。
    しかし……見てみると騎士達は皆人間のようだ。――してみるとここはヒューリア帝国領内か?    しかも騎士の制服に物凄く見覚えがあるんだよね……、これ。
    まさかとは思うが……ここ、シレイド国内か!?
    騎士達の三分の二が動きを止められた時点で騎士達はこちらの意外な実力に顔をしかめた。
   「クソッ、お前らどこの盗賊団の者だ!」
   「俺達は賊じゃない!    その賊に拐われた被害者だ!    中には連中が使っていた奴隷が居る。確認してくれ!」
   レイフレッドが声を張り上げる。
   「何!?    これだけの戦闘力を有した輩を捕らえられる賊だと!?」
    ……うん。私達、これで黄金級冒険者だからね。それを抑える賊なんて誰が討伐するんだって話だよね。
    「……俺の妻は今は妊婦だ。不意を突かれて魔術を封じられれば、普通の女性と変わらない。俺は彼女を助けに来たんだ!」
    「……確かに奥方の腹は出ているが。……おい、誰か中を見て来い!」
    隊長の声に何人か砦の中に駆け込んでいく。
   「居ました!    獣人や魔族の奴隷です!」
   「……なら、アンタ達は――」
   「申し遅れました、私アンリ=カーライルと申します。至急陛下かマティス様に報告申し上げたいことが御座います。お取り次ぎをお願いできますか……?」
    「なっ、まさかお貴族様で御座いますか……!?」
    「はい。……私達を拐った賊について、マティス様が追っているはずなのです。ぜひ情報を共有すべきだと思いますの」
   「は、ははは、はい!    ……ですが、少々お時間をいただきたく。ここから王都は少々距離があります故に」
   「あの、ここがシレイド国内だと言うことは把握しているのですが、正確にここが何処だか分かっていないのですが……、ここは……?」
   「――ここは、旧ラッセル領……その外れの砦でございます」
    なんと、旧子爵寮だと言う。
   「なら……一度実家に帰るのが良さそうね」
   「――そうですね」
    騎士に馬車を回してもらって、私達は実家のカーライル家を訪れたのだった。
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