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領主のお仕事

徹底討論

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    「それで。どうして突然通行税なんて話が出て来たんでしょうね?」
    にっこり笑って尋ねる。
   「そもそも私の領地が何故出来たのか、その理由もお忘れで?」
    三国の緩衝地帯という名目だったはず。
   「今、我が領地では各国の品物が盛んに出入りし、同時に人の出入りもあって賑わっております。魔族も獣人も人間も居るのが当たり前の領地となっています」
    だけどまだまだ領民は少なく、もっと人手が欲しいところだ。当然そこは移民を期待しているところがある。
    勿論基本はただの一領地なのだから、そう沢山は受け入れ切れない。
    そのコントロールが難しいところだけど、少なくとも私達は他から無理に引き抜く真似はしていないのだ。
   「それなのに、貴殿方だけがその様な事を言い始めれば、他の国も黙ってはいませんよ?」
    そして、無為な戦争をしようとするなら――
   「私は容赦いたしません。戦争などする気も起きないようにしてさしあげましょう」
    そもそもあちらの言い分が無茶苦茶なのだから、私も力業で突っぱねた。
   「……むしろウチは民を引き取って欲しいのだが」
    そんなアライグマとは別の、あれはイタチか?
    別の大臣が話しかけてくる。
    先に述べた理由で移民自体は大歓迎なのだけど、だからといって闇ギルドの人間とか厄介な押し付けは困るんだよね。
    だから、詳細を訪ねた。
   「我が国は食糧自給率が低い。……特に産業がある訳でもない。が、出生率だけは妙に高くてな」
     食うに困る子供達が多く、人身売買の温床となり易いのだと言う。
    「子供達を引き取ってはくれないか」
     つまり、大量の孤児をどうにかしたいらしい。
     しかも……代価は望めない、と。
     子供達が得られるのは有難いことではあるが、だからと言って無限に子供達を受け入れられる訳じゃない。
    ただ一方的に子供達を受け入れるのは良くない。
   「……では、まずはウチの農作物を買い取っていただきましょうか」
    ついでに、本当に特産になるものがないのか見てみようじゃないか。
    本人達は価値を感じていなくても、実は……という事はしばしばあるものだしね。
    他にもいくつかの国との交易の話をまとめて会談は終了した。
    アライグマさんは……、ああ、どう見ても納得してないな、あれ。
    だけど私達は彼にばかり構ってはいられないわけで。
   「アレはなぁ、うちでも色々やらかしてる奴なんだよ」
    その後開かれた夜会で女帝に愚痴られましたよ。
    まぁ、周りにもそう言う奴だと知れてるなら、ウチが一方的に悪者になる事は無さそうだけど。
    「今回、レイフレッドの同行を要望したのは彼ですか?」
    「いいや、他の奴だよ」
     そう言って聞かされた名は先程の会合ではあまり目立たなかった奴だった。
    「何がしたかったのか……分かりませんでしたね」
    「嫌な感じよね」
     私達はなるべくアルコール摂取を控えたけれど、その晩も特に何事もなく過ぎ去っていった。
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