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目指せ勝ち組!~君と歩む花道~
密約
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……まあ、ね。マティス殿下の婚約者が公爵令嬢なのは当然知ってましたとも、ええ、前世では王太子様に次いでよく攻略してましたからね、彼。だから当たり前の様に悪役令嬢として登場してきたディアナ嬢の事も、ゲームのキャラ情報としてはよく知ってる。
――ただ、この世界で生身で生きてるディアナ嬢については単なるクラスメイトとして得られた情報以上の事は知らない。
あの陳腐なイタズラ事件で意見されて以降、必要最低限の接触しかなかったから。
キャラの立ち位置的には同じ悪役令嬢でもディアナは貴族の最高位である公爵家の娘で、こちらは平民の娘。……お喋りしようにも何を話せば良いのか分からない。プライベートでセールストークを捲し立てる訳にはいかないしね。
――だというのに、何故。
……クラスの方の当番だったならその可能性を考えて心の準備もしただろう。
けれど今はクラブの当番だっだのだ。王子二人の親は王が来ても王妃が来ても大騒ぎになるので来ないことが決まっていて。
――他のメンバーも大半は貴族とはいえ最高位は侯爵、大半は伯爵以下で。
だから、油断していた。慌ててそれを悟られぬよう必死に礼を尽くした。
……展示の説明は殿下が担ってくれるようでほっとしていたのに。
「――成る程、確かにまだ少し荒いが目の付け所は悪くないし、新しい試みの草案は面白い。一年次でこれなら十分将来に期待できる。このまま努力を続けてくれ」
娘婿予定の王子に満足げなナイスミドル。
そのまま王太子殿下の課題と彼らの側近候補の課題を眺め――そろそろ帰るかな? と、期待した頃合いを見計らったかのように声をかけられた。
「――君。これは、君の課題だろう?」
「はい。確かにそれは私の課題ですが……、何か?」
「いくつか質問をしたいのだが良いかね?」
「私で答えられる質問であれば、お答え致します」
「では……」
――と、唐突に課題に対して深く掘り下げた質問を矢継ぎ早に連発され、何だ何だと思いながらもまぁ答えられない質問でもないので一つ一つ丁寧に回答していく。
その答えを、何故か王子と二人でやけに興味深げに聞いている公爵様。
「……優秀と聞いてはいたが。そこらの木っ端どころか仕事の出来ない下級貴族あたりの爵位を今すぐ剥ぎ取って君に授けてくれと王に願い出たい程に有能だな、君は。少なくとも例の子爵よりは君の方が遥かに上手く領地を治めるだろう」
「あ、ありがとうございます……。けれど流石にそれは言い過ぎ……と言いますか私を買いかぶり過ぎてはいませんか?」
「いや、今の質疑応答の内容で君の能力の程はある程度把握した。間違いないなく、子爵より君は有能だ。――故に、君を愚者の生け贄などという詰まらぬ潰れ方をして欲しくない。だから、我が公爵家が君の後ろ楯になろう。……王太子殿下の婚約者である別の公爵家への牽制にもなる」
「……それは、ありがたいお話ではありますが、このままでは少々心苦しいので――これを、受け取っては下さいませんか?」
先日月を跨いでからついに始めた子爵家の家捜し。
その成果のレポートのコピーを袖の下代わりに渡す。
「……これは!」
レポートに軽く目を通した公爵の表情が驚愕に染まる。
「……ふむ。やはり君とは敵対したくないな。――これについては追々有効に使わせて貰おう」
こうして私は頼もしい暗躍者を手に入れたのだった。
――ただ、この世界で生身で生きてるディアナ嬢については単なるクラスメイトとして得られた情報以上の事は知らない。
あの陳腐なイタズラ事件で意見されて以降、必要最低限の接触しかなかったから。
キャラの立ち位置的には同じ悪役令嬢でもディアナは貴族の最高位である公爵家の娘で、こちらは平民の娘。……お喋りしようにも何を話せば良いのか分からない。プライベートでセールストークを捲し立てる訳にはいかないしね。
――だというのに、何故。
……クラスの方の当番だったならその可能性を考えて心の準備もしただろう。
けれど今はクラブの当番だっだのだ。王子二人の親は王が来ても王妃が来ても大騒ぎになるので来ないことが決まっていて。
――他のメンバーも大半は貴族とはいえ最高位は侯爵、大半は伯爵以下で。
だから、油断していた。慌ててそれを悟られぬよう必死に礼を尽くした。
……展示の説明は殿下が担ってくれるようでほっとしていたのに。
「――成る程、確かにまだ少し荒いが目の付け所は悪くないし、新しい試みの草案は面白い。一年次でこれなら十分将来に期待できる。このまま努力を続けてくれ」
娘婿予定の王子に満足げなナイスミドル。
そのまま王太子殿下の課題と彼らの側近候補の課題を眺め――そろそろ帰るかな? と、期待した頃合いを見計らったかのように声をかけられた。
「――君。これは、君の課題だろう?」
「はい。確かにそれは私の課題ですが……、何か?」
「いくつか質問をしたいのだが良いかね?」
「私で答えられる質問であれば、お答え致します」
「では……」
――と、唐突に課題に対して深く掘り下げた質問を矢継ぎ早に連発され、何だ何だと思いながらもまぁ答えられない質問でもないので一つ一つ丁寧に回答していく。
その答えを、何故か王子と二人でやけに興味深げに聞いている公爵様。
「……優秀と聞いてはいたが。そこらの木っ端どころか仕事の出来ない下級貴族あたりの爵位を今すぐ剥ぎ取って君に授けてくれと王に願い出たい程に有能だな、君は。少なくとも例の子爵よりは君の方が遥かに上手く領地を治めるだろう」
「あ、ありがとうございます……。けれど流石にそれは言い過ぎ……と言いますか私を買いかぶり過ぎてはいませんか?」
「いや、今の質疑応答の内容で君の能力の程はある程度把握した。間違いないなく、子爵より君は有能だ。――故に、君を愚者の生け贄などという詰まらぬ潰れ方をして欲しくない。だから、我が公爵家が君の後ろ楯になろう。……王太子殿下の婚約者である別の公爵家への牽制にもなる」
「……それは、ありがたいお話ではありますが、このままでは少々心苦しいので――これを、受け取っては下さいませんか?」
先日月を跨いでからついに始めた子爵家の家捜し。
その成果のレポートのコピーを袖の下代わりに渡す。
「……これは!」
レポートに軽く目を通した公爵の表情が驚愕に染まる。
「……ふむ。やはり君とは敵対したくないな。――これについては追々有効に使わせて貰おう」
こうして私は頼もしい暗躍者を手に入れたのだった。
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