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目指せ勝ち組!~君と歩む花道~

体育祭

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    夏の暑さがようやく少し和らいだ秋の始めの空に白い綿雲が所々に浮かぶ晴天の下、体育祭は始まった。
    開会式で挨拶を述べるのは、学園長と生徒会長、体育祭の実行委員長。
    ……学園長のお話だけ、他二人の合わせたより長かったのは――まぁお約束。
    私は生徒会役員として会場内での誘導やアナウンスを行うためあちこち走り回りつつ、自分の番になれば競技場に出る事になっている。
    ん?    体育系の単位はもう取得済みだろうって?
    うん。単位はとってるけど、この体育祭での活躍度によって、年度始めの舞踏会の時のように内申点的なものが付くから出とけってさ。
    ただ、同級生と同じ演目では余りに差が大きいので、先生相手のデモンストレーションとしての参加が決まっている。
    ――生徒会役員として、今回は研修の時の様にレイフレッドの助けは望めないけれど、保護者席のどこかには居てくれてるはず。
    保護者が見に来ている子が圧倒的に多いけど、ウチは仕事があるし、弟もまだ小さいし……ね。
    精神的には大人な私的には思春期の同級生みたいな親に対するツンデレは無いけど、親が来ないからって寂しいとか思わないし。
    ……レイフレッドが来てくれてるけど、彼は他ならぬ私の冒険者仲間。当然今日やるデモンストレーション程度は見慣れたものなんだけど、ね。やっぱり応援に来てくれる人が居るって何だかんだ言っても嬉しいもんたね、コレ。
    ちらちらと物凄く視線を感じるのでさっきからあえて保護者席付近に近寄らないように気を付けてるから、未だに彼の姿を見つけられていないのだけど。……うっかり彼らに捕まると仕事が出来なくなるからね。それに加えて何言われるか分からない。
    何か余計な要求をされないとも限らず、余裕のある時ならやりようもあるけど、今みたいな忙しい最中にわーわー言われたら、どさくさに紛れて言った言わないのトラブルを始め、面倒臭いことになるから、君子危うきに近寄らず、で対抗中なのです。
    ……おっと、そろそろ時間だ。
    適当なところで仕事を切り上げ、入場門へと向かう。
    それは勿論今日の為の仮設の物なんだけど、前世の公立小中学校の運動会で見たようなパイプの骨組みに模造紙を貼り付けた様なハリボテではなく、業者プロの手による風光明媚かつ重厚な〝本物〟。
    舞台となるグラウンドは、生徒席や保護者席がぐるりと囲んで尚、正規サイズのサッカーコートが余裕で入る広さがある。
    「――それでは、次の演目です。弓術のデモンストレーション、一年Sクラス、アンリ=カーライル、弓術担当講師代表、アルト=デニス教官」
    名を呼ばれるのを待って、広い舞台の中央へと駆ける。……ドタバタ走らないよう優雅に、しかしモタモタせずに速やかに。
     所定の場所まで到達したら、すぐさまキビキビとまずは保護者席、生徒席、教師席へとそれぞれきっちり腰を折り頭を下げる。
    その隙に、係員によって場が整えられる。
     「――では、始め!」
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