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目指せ勝ち組!~君と歩む花道~

新学期

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    ああ、戻ってきたな……、と。
    ギラギラと照りつける暴力的な暑さを伴う陽光と、そんな中でも濃い緑を元気に生い茂らせる植物が眩しい花壇を見て思う。
    春にはチューリップの様な色とりどりの花が植えられていた花壇は、夏の休みの間に小振りな花の咲く物に植え替えられ、以前より葉の緑が目立つ。
    ――まぁ、貴族の多い学校だけに、校内に一歩入れば涼しいんだけどね。毎度ありがとうございます!
    まだ残暑厳しいこの季節に冷房ナシとかそんな精神修行はしたくない。……早々に空調魔道具開発しといて良かったと心底思った瞬間でした。
    「ああ、涼しくて助かるな」
     いわゆる始業式的な行事の為に講堂に集められた時、王子がしみじみ呟いていたのもまた印象的ではあった。
    「はは、出掛けに父上にやっかまれてしまったよ。最近の子供達は楽で良いな、とね」
    私がアレを開発する以前は、貴族の多いこんな場所でもせいぜい魔術師を雇って冷風の魔法を使わせる位しか出来ず、こんなに涼しくはならなかったらしい。
    前世の公立校の灼熱地獄な体育館よりは多少マシ程度の状態が当然だった世代から見れば……まあ羨ましかろうな。気持ちは分からんでもない。
   「けれど、父上を始め国の上層部は皆、あの発明には誰もが恩恵を受けている。――特に騎士や兵士はな」
    真夏に冷房なしの部屋でのデスクワークに重要会議、果ては厳しい訓練……。
    文明の利器に慣らされた元日本人の私には耐えられません、そんなの。
    「ええ。馬車や冷蔵庫と並んで我が商会の看板商品ですもの。ご愛用いただけているようで光栄ですわ」
    壇上では、宿泊研修中に起きたトラブルと、その処罰についてなどの説明が行われている。
    ビルとアリスは当初聞かされた通り、既に夏休み中の強制補習が行われ、今日から当分謹慎処分となりしばらく学校へは来ない事が発表され。
    王子を巻き込み私を攻撃しようとしたあの彼については退学処分とされ、夏休み中に荷物も全て引き払ったらしい。
    ……ただ、あくまでこれは学校側の処分で、王子を巻き込みかけた公的な処罰はまだこれから詳しい取り調べなどが行われてから改めて申し渡されるらしい。
    学生の身とはいえ、王族を害しかけたのだから、軽い処分にはならないだろう。
    過ちの代償は大きい。
    ……貴族の身でも、王族に危害を加えればこうなるのだ。
    私も十分気を付けなければ、平民の身で子爵程度とはいえ貴族を下手に害すればもっと酷い未来もありうるのだと、自分への戒めとして記憶に刻む。
    まぁ、当分あの二人を気にせず学校生活が送れるのだ。この貴重な機会を存分に生かしつつ、本格的にあの男の弱みを探りにいこうと思う。
    ……私たちの未来のために、私は反撃に出る。
    今日は始業式だけだけど、明日から本格的に動く。
    「秋は色々行事も続くからね。生徒会も忙しくなるよ」
    新学期が、始まる。
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