唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

目指せ勝ち組！～君と歩む花道～

宿のイチオシを楽しみましょう！

    ……はぁ。
    取り敢えずお腹は満ちた。――微妙にお腹より少し上の部分は満ちる以上に一杯一杯にさせられた気がするけど。
    整えられたベッドに身を投げ出してゴロゴロするの気持ちいぃ……。
    「お嬢様、まだこの宿の一番の売りが残っていますよ」
   ……うん。部屋についてる露天風呂だよね？
   部屋に一つずつ。当然男女別に別れてなんかいないから。
   「先、レイフレッドが行ってきなよ。私はも少し休んでから入りたい」
    今お湯になんか浸かったら確実にのぼせる。
    ……今そんなことになったら誰が私の介抱をするの？    一人しか居ないよね？
   だから、私はレイフレッドに先を譲ったのだけど。
    「どうせなら一緒に入ります？」
     なんてタチの悪い冗談は止めとこうね？
    ……と、いうか。
   「良いお湯加減ですよ」
    衝立の目隠しの向こうの水の音がほぼダイレクトに聞こえて――これ、ヤバい……下手に見せられるよりなんかえっちぃ感じがする！ 
    考えないようにすればするほど何故か想像力が掻き立てられる。
     いっそTVのロケみたくタオルで隠して一緒に入ってしまえば妙な想像をする余地も消えたのでは……？    なんて血迷った考えすら時折頭をよぎる。
    私は痴女じゃない、痴女じゃないから！ 
    ……けどさぁ。予めお湯に浮かべてあった柑橘風の果物の香りまで遮られる事なく届く――つーか、隔てられてるのは視界のみっていうね？
    つまらんAVを見せられるよりこれ、キツい……。
    「お先にお湯、いただきました」
    ゆっくりお湯を堪能したレイフレッドが着替えまで済ませて私に声をかけるまで、それなりに時間を要していたはずが……気づけばあっという間で。
    私はちっとも休めた気がしないまま、部屋着を脱ぎにかかる事に……。
    けど……。これ、私に聞こえたんだから……レイフレッドには尚ダイレクトに色々伝わるよね、これ？
    そう一度思い当たれば、当然羞恥心で一杯になる。
    だけど、涼しい夜の風に吹かれ満天の星空の中で入る柑橘露天風呂は、さざ波を立てて私を誘う。
    衝立の向こうにレイフレッドの気配を感じながら、そっと湯船に足を浸ける。
    お湯加減は……少しだけぬるめ。
    少し温まって上がれば夜風がより涼しく心地よくさっぱり感じられるようになるだろう温度だ。
    一人で贅沢に手足を伸ばして入れるのもまた良い。
    大浴場も勿論広くて気持ちよかったけど、やっぱり〝一人で〟ってのが良い。
    ……うん。一人で、だ。うっかり変な想像なんかしてないんだからね!?
    だけど。
    頃合いを見計らって上がれば、明らかにベッドの上で悶々と枕に顔を埋めてうつ伏せに寝転がるレイフレッドを発見。
    ……あー、どうするかなぁ……