204 / 370
目指せ勝ち組!~君と歩む花道~
夏休み……?
しおりを挟む
「ただいまです~、シリカぁ」
体力的にはともかく、精神的に結構なストレスと疲労を溜めた研修がようやく終了した翌日、私達はようやく夏休みらしい夏休みを満喫……するより先に溜まりに溜まった仕事を片付けるため、空間伝いに領地に戻った。
「おう、お帰り。楽しかったかー? ……って聞くまでもなく疲れてるねぇ?」
「まぁこいつらの事だ、また面倒事をこれでもかと引き寄せたんだろうよ」
ぐぅ、あのケットシーめ。可愛い顔して相変わらずの毒舌ぶりだな。……ちっとも言い返せそうにないのがまた悔しい。
「……ん? お前らそれ――」
でも、あの男なら気付かないだろうと着けていた首飾りとピアスにシリカは反応した。
「ふぅん。何だ、ちゃんとそれなりには楽しんで来たらしいな」
ニヤニヤとオモチャを見つけた猫みたいに笑うシリカ。……隣の猫型二頭身マスコットなスコットは砂を吐きそうな呆れ顔なのとは対照的なのが面白い。
なんて思えるのはその矛先が向いてるのが私でなくレイフレッドだからなんだけど。
まぁ油断しすぎてると火の粉が飛んできそうだから気は抜かないけどね。
「シリカ、それより先にそこの山を片付けさせろよ。のろのろしてたらまたすぐ学校が始まっちまうだろ」
執務机にそびえ立つアルプス山脈を指してスコットがシリカを止める。
一瞬助かったと表情を緩めたレイフレッドはそれを見てすぐに浮かべかけた微笑みを凍らせ顔をひきつらせた。
「これは……また見事な山並みで……」
「ははは。夏休みらしい夏休みを少しでも多く堪能したいなら死ぬ気で片付けろやー?」
「ぐ……、正論だと分かってはいますが……相変わらずムカつきますね。両手に乗せて全力でもふって差し上げましょうか?」
「ざけんな! カワイイ娘ならまだしもテメーみたいな野郎なんぞに全身撫で回されるなんざ御免だ! 鳥肌立つだろうが!」
……ああ。気楽で良いなぁ。和むし癒されるわー。
けど、私もとっとと執務を片付けないとせっかくの夏休みが仕事で終わってしまう。
夏休みの終盤、シリカの国の王都で夏祭りが行われるらしい。
花火に屋台。乙女ゲームに付き物な夏祭りイベントである。当然外せるわけないでしょ!?
壁のように積み上げられ視界を塞ぐ書類を、まず一枚取って机に向かう。
……うん。ローマへの道もまずは一歩から、だよね!
「久々に人目を気にせず堂々とお嬢様とデートする機会を逃したくはありませんからね。――全力で片付けてやりますよ」
レイフレッドが隣の机でペンを取った。
――それからアルプス山脈を更地に均すのに要した時間は一週間。
翌日は一日グロッキーになりましたよ、流石に……。
前世じゃこんな過酷な夏休みとかあり得なかったよ!
体力的にはともかく、精神的に結構なストレスと疲労を溜めた研修がようやく終了した翌日、私達はようやく夏休みらしい夏休みを満喫……するより先に溜まりに溜まった仕事を片付けるため、空間伝いに領地に戻った。
「おう、お帰り。楽しかったかー? ……って聞くまでもなく疲れてるねぇ?」
「まぁこいつらの事だ、また面倒事をこれでもかと引き寄せたんだろうよ」
ぐぅ、あのケットシーめ。可愛い顔して相変わらずの毒舌ぶりだな。……ちっとも言い返せそうにないのがまた悔しい。
「……ん? お前らそれ――」
でも、あの男なら気付かないだろうと着けていた首飾りとピアスにシリカは反応した。
「ふぅん。何だ、ちゃんとそれなりには楽しんで来たらしいな」
ニヤニヤとオモチャを見つけた猫みたいに笑うシリカ。……隣の猫型二頭身マスコットなスコットは砂を吐きそうな呆れ顔なのとは対照的なのが面白い。
なんて思えるのはその矛先が向いてるのが私でなくレイフレッドだからなんだけど。
まぁ油断しすぎてると火の粉が飛んできそうだから気は抜かないけどね。
「シリカ、それより先にそこの山を片付けさせろよ。のろのろしてたらまたすぐ学校が始まっちまうだろ」
執務机にそびえ立つアルプス山脈を指してスコットがシリカを止める。
一瞬助かったと表情を緩めたレイフレッドはそれを見てすぐに浮かべかけた微笑みを凍らせ顔をひきつらせた。
「これは……また見事な山並みで……」
「ははは。夏休みらしい夏休みを少しでも多く堪能したいなら死ぬ気で片付けろやー?」
「ぐ……、正論だと分かってはいますが……相変わらずムカつきますね。両手に乗せて全力でもふって差し上げましょうか?」
「ざけんな! カワイイ娘ならまだしもテメーみたいな野郎なんぞに全身撫で回されるなんざ御免だ! 鳥肌立つだろうが!」
……ああ。気楽で良いなぁ。和むし癒されるわー。
けど、私もとっとと執務を片付けないとせっかくの夏休みが仕事で終わってしまう。
夏休みの終盤、シリカの国の王都で夏祭りが行われるらしい。
花火に屋台。乙女ゲームに付き物な夏祭りイベントである。当然外せるわけないでしょ!?
壁のように積み上げられ視界を塞ぐ書類を、まず一枚取って机に向かう。
……うん。ローマへの道もまずは一歩から、だよね!
「久々に人目を気にせず堂々とお嬢様とデートする機会を逃したくはありませんからね。――全力で片付けてやりますよ」
レイフレッドが隣の机でペンを取った。
――それからアルプス山脈を更地に均すのに要した時間は一週間。
翌日は一日グロッキーになりましたよ、流石に……。
前世じゃこんな過酷な夏休みとかあり得なかったよ!
0
お気に入りに追加
1,081
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢キャロライン、勇者パーティーを追放される。
Y・K
ファンタジー
それは突然言い渡された。
「キャロライン、君を追放する」
公爵令嬢キャロラインはダンジョンの地下100階にて、いきなり勇者パーティーからの追放を言い渡された。
この物語は、この事件をきっかけにその余波がミッドランド王国中に広がりとてつもない騒動を巻き起こす物語。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
私が豚令嬢ですけど、なにか? ~豚のように太った侯爵令嬢に転生しましたが、ダイエットに成功して絶世の美少女になりました~
米津
ファンタジー
侯爵令嬢、フローラ・メイ・フォーブズの体はぶくぶくに太っており、その醜い見た目から豚令嬢と呼ばれていた。
そんな彼女は第一王子の誕生日会で盛大にやらかし、羞恥のあまり首吊自殺を図ったのだが……。
あまりにも首の肉が厚かったために自殺できず、さらには死にかけたことで前世の記憶を取り戻した。
そして、
「ダイエットだ! 太った体など許せん!」
フローラの前世は太った体が嫌いな男だった。
必死にダイエットした結果、豚令嬢から精霊のように美しい少女へと変身を遂げた。
最初は誰も彼女が豚令嬢だとは気づかず……。
フローラの今と昔のギャップに周囲は驚く。
さらに、当人は自分の顔が美少女だと自覚せず、無意識にあらゆる人を魅了していく。
男も女も大人も子供も関係なしに、人々は彼女の魅力に惹かれていく。
断罪された商才令嬢は隣国を満喫中
水空 葵
ファンタジー
伯爵令嬢で王国一の商会の長でもあるルシアナ・アストライアはある日のパーティーで王太子の婚約者──聖女候補を虐めたという冤罪で国外追放を言い渡されてしまう。
そんな王太子と聖女候補はルシアナが絶望感する様子を楽しみにしている様子。
けれども、今いるグレール王国には未来が無いと考えていたルシアナは追放を喜んだ。
「国外追放になって悔しいか?」
「いいえ、感謝していますわ。国外追放に処してくださってありがとうございます!」
悔しがる王太子達とは違って、ルシアナは隣国での商人生活に期待を膨らませていて、隣国を拠点に人々の役に立つ魔道具を作って広めることを決意する。
その一方で、彼女が去った後の王国は破滅へと向かっていて……。
断罪された令嬢が皆から愛され、幸せになるお話。
※他サイトでも連載中です。
毎日18時頃の更新を予定しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる