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目指せ勝ち組!~君と歩む花道~
研修 ~ショッピング~
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夜営研修も終わり、明日は馬車で帰途につくという今日は、他クラス同様一日自由時間となる。
生徒会の取り締まり業務も今日はAクラスメンバーの仕事だ。――彼らもこないだの私達同様に静かな休暇を堪能したはずだからね。
……そう。私もレイフレッドも既にグルメもプールも堪能したし、宿題だってとっくに終わってる。
その上、あからさまなのこそ少ないけど、微妙な空気は未だ健在だ。
……その気になれば出来なくはないけど、こんな中で楽しく自由時間を楽しむって何すれば良いの?
「はぁ、ここは空間に逃げ込んでのんびりする? それとも空間伝いにこっそりどっかへお出掛けする?」
だから私はそう提案したんだけど。
「いえ、この状況で逃げ隠れすると勝手な憶測話が広がりかねません。……気分は良くありませんが、ここは堂々としていましょう。幸い、私達は先に色々と楽しみましたから、そこまで未練もないでしょう?」
と、レイフレッドにごく自然とエスコートされて連れて来られたのは――
「……レイフレッド?」
「たまにはこういうプレゼントもさせて下さい」
ブランド系ショップが並ぶショッピングフロアのうちの装飾品を扱う高級店だ。
貴族のお嬢様が集う店の中に堂々と私をエスコートした犯人は、ガラスのショーケースに展示された色とりどりに輝く宝石を散りばめたアクセサリーを私に見せて微笑む。
「さあお嬢様、どれでもお好きな物をお選びください?」
……並ぶ装飾品には恐ろしい額の値札が添えられている。――具体的に言えば、普通の平民の年収数年分の贅沢品ばかり。
そりゃぁね、私はそれ以上に稼いでいるからこのくらいの額を無駄遣いしたくらいで懐は痛まないし、その商会の副会頭を務め、男爵としての年金も貰えるレイフレッドも似たような懐具合なんだけども。
前世からの庶民的感覚からすると、こんな高いもので着飾っても怖いばかりで楽しくないんだよ!
それより実用的な魔道具アクセサリーに金をかけたい!
「ペアリングでは流石に誤解を招きそうですが……」
周囲から痛い程の視線を背に感じながら、私はレイフレッドが指差す先を見た。
――ごく控えめな青い小さな石――だけど“五年分”にもなりそうな値札がついた首飾りと、同じ石のピアスのセットだった。
「これならペアとは思われ難いのでは?」
……いや、この大衆の前でそれを言っちゃったら意味ないだろう。けど、明らかにわざとやってるよね、レイフレッド?
「お嬢様はご婚約者に贈り物などしていただいた事などありませんでしょう? 魅力的なお嬢様を蔑ろになさるあの方に少し危機感を覚えていただくのも宜しいかと」
いやいや、そんな必要ないからね?
次から次へと問題を起こされるのは困るけど、こっちを放っておいてくれる分にはむしろ有り難いから! その意味でだけはヒロインちゃんことアリスに感謝すらしてるから!
今更あの男にすり寄って来られるのなんて迷惑以外の何者でもないって知ってるよね!?
「……アクセサリー一つ程度の違いを、果たしてあの方が気づけるのか……という意味では正直不安なのですが」
それを余裕の笑みでチクリと皮肉を交えて蹴り飛ばすレイフレッド。
……ああ、うん。髪型の違いに気付ける男は希少種だからモテ易いのよねー。……普段から興味もない女の装いに気付ける男かと言われれば……うん、確かに気づかなそうだなぁ。
だけど……。
「そう言うことなら、この青い石よりこっちの紅い石の方が良いわ」
「――では、こちらを包んでいただきましょう」
勝者の笑みを浮かべたレイフレッドが会計を済ませ。
……その噂はその日の内にSクラス中に広まったらしい。
生徒会の取り締まり業務も今日はAクラスメンバーの仕事だ。――彼らもこないだの私達同様に静かな休暇を堪能したはずだからね。
……そう。私もレイフレッドも既にグルメもプールも堪能したし、宿題だってとっくに終わってる。
その上、あからさまなのこそ少ないけど、微妙な空気は未だ健在だ。
……その気になれば出来なくはないけど、こんな中で楽しく自由時間を楽しむって何すれば良いの?
「はぁ、ここは空間に逃げ込んでのんびりする? それとも空間伝いにこっそりどっかへお出掛けする?」
だから私はそう提案したんだけど。
「いえ、この状況で逃げ隠れすると勝手な憶測話が広がりかねません。……気分は良くありませんが、ここは堂々としていましょう。幸い、私達は先に色々と楽しみましたから、そこまで未練もないでしょう?」
と、レイフレッドにごく自然とエスコートされて連れて来られたのは――
「……レイフレッド?」
「たまにはこういうプレゼントもさせて下さい」
ブランド系ショップが並ぶショッピングフロアのうちの装飾品を扱う高級店だ。
貴族のお嬢様が集う店の中に堂々と私をエスコートした犯人は、ガラスのショーケースに展示された色とりどりに輝く宝石を散りばめたアクセサリーを私に見せて微笑む。
「さあお嬢様、どれでもお好きな物をお選びください?」
……並ぶ装飾品には恐ろしい額の値札が添えられている。――具体的に言えば、普通の平民の年収数年分の贅沢品ばかり。
そりゃぁね、私はそれ以上に稼いでいるからこのくらいの額を無駄遣いしたくらいで懐は痛まないし、その商会の副会頭を務め、男爵としての年金も貰えるレイフレッドも似たような懐具合なんだけども。
前世からの庶民的感覚からすると、こんな高いもので着飾っても怖いばかりで楽しくないんだよ!
それより実用的な魔道具アクセサリーに金をかけたい!
「ペアリングでは流石に誤解を招きそうですが……」
周囲から痛い程の視線を背に感じながら、私はレイフレッドが指差す先を見た。
――ごく控えめな青い小さな石――だけど“五年分”にもなりそうな値札がついた首飾りと、同じ石のピアスのセットだった。
「これならペアとは思われ難いのでは?」
……いや、この大衆の前でそれを言っちゃったら意味ないだろう。けど、明らかにわざとやってるよね、レイフレッド?
「お嬢様はご婚約者に贈り物などしていただいた事などありませんでしょう? 魅力的なお嬢様を蔑ろになさるあの方に少し危機感を覚えていただくのも宜しいかと」
いやいや、そんな必要ないからね?
次から次へと問題を起こされるのは困るけど、こっちを放っておいてくれる分にはむしろ有り難いから! その意味でだけはヒロインちゃんことアリスに感謝すらしてるから!
今更あの男にすり寄って来られるのなんて迷惑以外の何者でもないって知ってるよね!?
「……アクセサリー一つ程度の違いを、果たしてあの方が気づけるのか……という意味では正直不安なのですが」
それを余裕の笑みでチクリと皮肉を交えて蹴り飛ばすレイフレッド。
……ああ、うん。髪型の違いに気付ける男は希少種だからモテ易いのよねー。……普段から興味もない女の装いに気付ける男かと言われれば……うん、確かに気づかなそうだなぁ。
だけど……。
「そう言うことなら、この青い石よりこっちの紅い石の方が良いわ」
「――では、こちらを包んでいただきましょう」
勝者の笑みを浮かべたレイフレッドが会計を済ませ。
……その噂はその日の内にSクラス中に広まったらしい。
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