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目指せ勝ち組!~君と歩む花道~

研修 ~手のひら返し~

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    この国は、魔族に対する偏見がまだ根強い。――かつて子供だったレイフレッドに対して不当な扱いをしていたのは、本来ならかなり良心的な孤児院だった。
    けれど、大人になって力をつけたレイフレッドに対しては、これまであからさまに態度に出して差別する者は居なかった。
    レイフレッド自身、外見的特徴以外に吸血鬼らしい行動を表だってする事もなかったし、怒らせて反撃されれば敵わないのを知っていて、魔族嫌いな連中は遠巻きにしてたから。
    特にこの数日は、吸血鬼らしい外見的特徴も含めイケメンな彼に惹かれる者が多かったから。
    それを、手のひら返すようにおぞましいものでも見るような目をレイフレッドに向ける。
    ……私に魔法を放った当人は、流石に割って入った先生方に取り押さえられているけど。
    「何だよ、やっぱあの男も化け物なんじゃないか!    何で化け物や平民の……それも女なんかが貴族を差し置いて粋がって得意になりやがって!    その出しゃばりに制裁を加えただけだ!    平民を躾るのは貴族の義務であり権利だろう……?」
    わめき散らしながら拘束から逃れようと暴れる。
    その主張には呆れた様子で顔をしかめても、レイフレッドや私に向ける視線は明らかに先程までとは違う、異分子を見る目をしていた。
    「う……」
    レイフレッドが身じろぎしながら呻き声を上げる。
    ぱっと見える部分の腫れは引いたけれど、服の下の見えないとことか、見た目は綺麗になっても痛みはまだ残っているのかもしれない。
    だけど、レイフレッドはゆっくりと目を開けて起き上がろうとした。
    私は、周囲のこの状況をレイフレッドに見せたくなくて、彼の目を手で覆った。
    ……だけど、耳までは塞げない。
    未だに勝手なことを叫んでいる耳障りな声に、レイフレッドが薄く苦い笑みを浮かべた。
   「……お嬢様、大丈夫ですよ。――私はもうあの頃の何も出来ない子供ではありませんから、この程度で傷ついたりなんかしませんよ。――元々ある程度の覚悟はしていましたし」
    レイフレッドは私の手をそっと退け、私と目を合わせて微笑んだ。
    「あの頃と違って、お嬢様を筆頭に私を仲間として扱ってくれる人々を今の私は沢山知っています。……どうやったって、全世界の人々に好かれるなんて誰だって出来るわけないんですから」
    私を立たせながら、自分も立ち上がり、振り返る。
    「――さて。確かに私は吸血鬼で、人間族ではありませんが、男爵位を賜るれっきとした貴族。それもこの国の貴族ではない以上、これが国際問題になる事、承知の上での行動でしょうか?」
    あーあ。珍しくレイフレッドが本気で怒ってる。
    あれは本当に周りなんか気にしちゃいないわ。……あの男、終わったな!
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