上 下
188 / 370
目指せ勝ち組!~君と歩む花道~

面倒臭い男

しおりを挟む
    「ビル様。貴方はご自分が何をなさったか覚えておられますか?」
    面倒臭いし、こんな奴に様付けの上に敬語使って話すのは非常に遺憾である。が、残念ながら退っ引きならない事情故に仕方なく相手をする。
     「貴方とアリス様が行方不明になったと引率の先生から通報を受けたギルドから指名で捜索依頼を受けたので仕事として迷子の回収に参った次第です」
    「なっ、迷子だと!?」
    「……アリス様はともかく、何故冒険者でもないビル様がダンジョンになど入ったのです?」
    「た、ただの洞窟だと思ったんだ!」
    「――仮にただの洞窟だとしても、この様な山奥では魔物や猛獣の巣穴という場合も多々ございます。研修で先生方から注意があったはずですが?」
    「し、知らん!    つ、疲れていたから休もうと思っただけだ!    だいたい貴族がどうしてこの様な山歩きをせねばならんのだ!」
    ……むしろ貴族だから、だろう。
   貴族は領地持ちも多いし、領軍を持つ家も少なくない。その指揮をする人が山を知らないのは……ねぇ?
   山近くに住む平民なら嫌でも生きるために学ばなくちゃいけないことだし、冒険者や旅する商人も勉強しない奴はだいたい死んでいく。
    けど、貴族がわざわざ自ら山に入るなんてしないだろうからこんな行事が恒例になったんじゃないの?
    ……いや、実際のとこは知らんけど。
   「そういう苦情は後で学校に言って下さい。とにかく、ここはダンジョンで、いつ魔物が出てもおかしくない場所です。早く出ましょう」
    ……もっと階層の多いダンジョンだとボス戦の後にワープポイントが出てきたりするのもあるんだけど、これだけお喋りしていてもそんなものは何処にも現れないからね。
    宝箱はもう箱ごと回収して後で確認しよう。
    「……リルフィはお使いに出しちゃったし、仕方ないからアリスは私が背負うわ」
    「――ビル殿はご自分で歩けますか?」
    「はん、これ以上歩くなどごめんだ!」
    「……困りましたね。モンスターが出たときに備えて手は空けておきたかったのですが」
    「仕方ないわね。フロス!」
    「あい、ご主人様!」
    「私達二人とも手が塞がるから、弱い魔物ばかりで悪いけど、出てくる魔物全部狩ってちょうだい」
    「あーい!」
     フロスは機嫌よく返事をし、私達の前を歩き始めた。
   「なっ、それは何だ!」
   「お嬢様の従魔です。あなたを背負うので魔物が出ても俺はろくに戦えません。出てくるのは雑魚ばかりとはいえここはダンジョンです。数は際限なく出てきますから、適当に間引かないと大変なことになります」
    ……レイフレッドが怖い笑顔で説明するけど。
   「……っ、それが僅かにでもアリスや私を害したなら、後で父上に言って処分させるからな!」
   は?    ウチの可愛いフロスちゃんに何て事言いやがる、コイツめ……!
    「お嬢様の助けがなければ貴方は今頃ボスにやられて死んでいたというのに。謝罪や礼の言葉もなく、口から出るのは暴言ばかり……ですか」
    レイフレッドの顔から笑顔が消え、表情が無になった。
    「お嬢様、やっぱりこの人達はダンジョンに殺られたみたいですって事にして置いて帰りませんか?    ボスは倒しちゃいましたけど、またいくらか経てば復活するでしょうし、ボスでなくともトロールかゴブリンパーティーあたりが始末してくれるでしょ?」
    「私もそうしたいけど……」
    それを聞いても尚「ふざけるな!」等と喚けるビルにはある意味感心するけど。
    「それは後が面倒だし。――落としましょう」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢キャロライン、勇者パーティーを追放される。

Y・K
ファンタジー
 それは突然言い渡された。 「キャロライン、君を追放する」  公爵令嬢キャロラインはダンジョンの地下100階にて、いきなり勇者パーティーからの追放を言い渡された。  この物語は、この事件をきっかけにその余波がミッドランド王国中に広がりとてつもない騒動を巻き起こす物語。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

私が豚令嬢ですけど、なにか? ~豚のように太った侯爵令嬢に転生しましたが、ダイエットに成功して絶世の美少女になりました~

米津
ファンタジー
侯爵令嬢、フローラ・メイ・フォーブズの体はぶくぶくに太っており、その醜い見た目から豚令嬢と呼ばれていた。 そんな彼女は第一王子の誕生日会で盛大にやらかし、羞恥のあまり首吊自殺を図ったのだが……。 あまりにも首の肉が厚かったために自殺できず、さらには死にかけたことで前世の記憶を取り戻した。 そして、 「ダイエットだ! 太った体など許せん!」 フローラの前世は太った体が嫌いな男だった。 必死にダイエットした結果、豚令嬢から精霊のように美しい少女へと変身を遂げた。 最初は誰も彼女が豚令嬢だとは気づかず……。 フローラの今と昔のギャップに周囲は驚く。 さらに、当人は自分の顔が美少女だと自覚せず、無意識にあらゆる人を魅了していく。 男も女も大人も子供も関係なしに、人々は彼女の魅力に惹かれていく。

断罪された商才令嬢は隣国を満喫中

水空 葵
ファンタジー
 伯爵令嬢で王国一の商会の長でもあるルシアナ・アストライアはある日のパーティーで王太子の婚約者──聖女候補を虐めたという冤罪で国外追放を言い渡されてしまう。  そんな王太子と聖女候補はルシアナが絶望感する様子を楽しみにしている様子。  けれども、今いるグレール王国には未来が無いと考えていたルシアナは追放を喜んだ。 「国外追放になって悔しいか?」 「いいえ、感謝していますわ。国外追放に処してくださってありがとうございます!」  悔しがる王太子達とは違って、ルシアナは隣国での商人生活に期待を膨らませていて、隣国を拠点に人々の役に立つ魔道具を作って広めることを決意する。  その一方で、彼女が去った後の王国は破滅へと向かっていて……。  断罪された令嬢が皆から愛され、幸せになるお話。 ※他サイトでも連載中です。  毎日18時頃の更新を予定しています。

処理中です...