177 / 370
目指せ勝ち組!~君と歩む花道~
大鴉 vs. リルフィ
しおりを挟む
リルフィが翼を羽ばたかせ、急上昇していく。
レイフレッドはあぶみで一応固定はしているけど、両手に剣を装備している状態では手綱は握れず、跨がる両足で必死に振り落とされないよう踏ん張りながら、敵を見据える。
「ぎゅい!」
リルフィが嘴を開けて大きく息を吸い込んで胸を膨らませ――まずは初撃と火炎放射の魔法を大鴉に浴びせかける。
グリフィンの気配に流石に目を覚まし、ぎょろりとこちらを睨んだ大鴉は即座に炎を避けるべくこちらもまた翼を広げ飛び出した。
丸まっている状態でも日本の烏が雀大に見えてしまう程大きかったのだけど、翼を広げてみればなお大きい。……地球にあんな大きな鳥類いたっけ? いや、地球最大の鳥がダチョウだったんだ、あれより明らかに大きいんだよ、あれ。
けど、それに果敢に向かっていくリルフィ。その背に乗るレイフレッドが双剣を構え、足の爪で引っ掻けようとする敵相手に剣で捌いて払い、フリーのもう片方の剣で足の付け根の肉の部分を切りつけ、片足をもいだ。
「グギャァァァ!」
魔物は耳障りな悲鳴をあげて暴れ、リルフィはすぐさまその煽りを受けない距離まで離脱する。
私はその隙を狙って弓を構え、魔法矢を打ち込む。狙いは手羽。痺れの追加効果を期待して、雷撃をお見舞いしてやる。
撃ち込まれた矢を目指して落雷が直撃すれば、翼を支える軸に火傷の痕が残り、翼の羽ばたきが乱れ動きが鈍くなる。
リルフィは速攻で敵の懐に潜り込み、レイフレッドは羽毛に埋もれた柔らかい腹を十字に切り裂き、地上に血の雨を降らせた。――おまけとばかりに闇魔法で視界を塞いですぐに離脱。
リルフィが先程避けられてしまった火炎を再びお見舞いしてやる。
視界を塞がれ、動きも鈍った大鴉は今度こそ火炎の直撃を受けて羽毛ごと身体を焼かれ、たまらず地上に降りて辺りを転げ回る。
炎を消したいのだろうが、そうはさせない。
風の刃で首を落とし、レイフレッドが脳天に剣を刺して終わらせる。
報告のため、荷車に死骸をくくりつけて山を下りる。……皆が居るから堂々と空間収納が使えないのは不便だけど仕方ないか。
けど。
この時彼らを無事安全な場所まで送ることばかりに気をとられ、今回の異変をこのユニークモンスターと安易に思い込んで周囲の探索を怠ったことを、私達は後に後悔する事になる。――が、この時の私はそんな事知る由もなく。
「原因、狩って来ましたよ」
と、ギルマスに報告して冒険者としての任務は終了。生徒会役員としての任務に戻り、馬車でEクラスのメンバーと共に宿泊所へと戻った。
その帰りの馬車の中、
「いや、流石は黄金級冒険者の戦いっぷりは見応えあったな!」
「あのグリフィンのアクロバットな飛び方に耐えられるとか、レイフレッド殿は凄いな!」
「その上剣筋も素晴らしかった! 確かに騎士の剣とは異なるが、とても身軽で繊細で……何より美しかった」
と、物凄く興奮した男子達からキラキラした目で熱く語られたのは……正直ちょっと鬱陶しかった。
「でも、こうして誉められるのはちょっと気分良いです。特にこの国で、って辺りが、ね。今なら……あの人も少しは違う感想を持ってくれるのかな?」
夕飯の後で血の提供のために会ったレイフレッドは少し複雑な顔で言った。
「あの孤児院の院長さん? うーん、どうだろうね。ああいう人は個人がどうとかじゃなく、吸血鬼だからって、差別してた人だから。それも普段悪い人どころか良い人なだけに逆に考えを変えるのは難しいと思う」
……私だって悔しいしムカつくけど。
「でも、時間をかけてでも、皆の意識が少しでも変われば違ってくると思うよ」
だから。私の目標が叶ったら、次はレイフレッドの為に頑張ろうと思うんだ。
レイフレッドはあぶみで一応固定はしているけど、両手に剣を装備している状態では手綱は握れず、跨がる両足で必死に振り落とされないよう踏ん張りながら、敵を見据える。
「ぎゅい!」
リルフィが嘴を開けて大きく息を吸い込んで胸を膨らませ――まずは初撃と火炎放射の魔法を大鴉に浴びせかける。
グリフィンの気配に流石に目を覚まし、ぎょろりとこちらを睨んだ大鴉は即座に炎を避けるべくこちらもまた翼を広げ飛び出した。
丸まっている状態でも日本の烏が雀大に見えてしまう程大きかったのだけど、翼を広げてみればなお大きい。……地球にあんな大きな鳥類いたっけ? いや、地球最大の鳥がダチョウだったんだ、あれより明らかに大きいんだよ、あれ。
けど、それに果敢に向かっていくリルフィ。その背に乗るレイフレッドが双剣を構え、足の爪で引っ掻けようとする敵相手に剣で捌いて払い、フリーのもう片方の剣で足の付け根の肉の部分を切りつけ、片足をもいだ。
「グギャァァァ!」
魔物は耳障りな悲鳴をあげて暴れ、リルフィはすぐさまその煽りを受けない距離まで離脱する。
私はその隙を狙って弓を構え、魔法矢を打ち込む。狙いは手羽。痺れの追加効果を期待して、雷撃をお見舞いしてやる。
撃ち込まれた矢を目指して落雷が直撃すれば、翼を支える軸に火傷の痕が残り、翼の羽ばたきが乱れ動きが鈍くなる。
リルフィは速攻で敵の懐に潜り込み、レイフレッドは羽毛に埋もれた柔らかい腹を十字に切り裂き、地上に血の雨を降らせた。――おまけとばかりに闇魔法で視界を塞いですぐに離脱。
リルフィが先程避けられてしまった火炎を再びお見舞いしてやる。
視界を塞がれ、動きも鈍った大鴉は今度こそ火炎の直撃を受けて羽毛ごと身体を焼かれ、たまらず地上に降りて辺りを転げ回る。
炎を消したいのだろうが、そうはさせない。
風の刃で首を落とし、レイフレッドが脳天に剣を刺して終わらせる。
報告のため、荷車に死骸をくくりつけて山を下りる。……皆が居るから堂々と空間収納が使えないのは不便だけど仕方ないか。
けど。
この時彼らを無事安全な場所まで送ることばかりに気をとられ、今回の異変をこのユニークモンスターと安易に思い込んで周囲の探索を怠ったことを、私達は後に後悔する事になる。――が、この時の私はそんな事知る由もなく。
「原因、狩って来ましたよ」
と、ギルマスに報告して冒険者としての任務は終了。生徒会役員としての任務に戻り、馬車でEクラスのメンバーと共に宿泊所へと戻った。
その帰りの馬車の中、
「いや、流石は黄金級冒険者の戦いっぷりは見応えあったな!」
「あのグリフィンのアクロバットな飛び方に耐えられるとか、レイフレッド殿は凄いな!」
「その上剣筋も素晴らしかった! 確かに騎士の剣とは異なるが、とても身軽で繊細で……何より美しかった」
と、物凄く興奮した男子達からキラキラした目で熱く語られたのは……正直ちょっと鬱陶しかった。
「でも、こうして誉められるのはちょっと気分良いです。特にこの国で、って辺りが、ね。今なら……あの人も少しは違う感想を持ってくれるのかな?」
夕飯の後で血の提供のために会ったレイフレッドは少し複雑な顔で言った。
「あの孤児院の院長さん? うーん、どうだろうね。ああいう人は個人がどうとかじゃなく、吸血鬼だからって、差別してた人だから。それも普段悪い人どころか良い人なだけに逆に考えを変えるのは難しいと思う」
……私だって悔しいしムカつくけど。
「でも、時間をかけてでも、皆の意識が少しでも変われば違ってくると思うよ」
だから。私の目標が叶ったら、次はレイフレッドの為に頑張ろうと思うんだ。
0
お気に入りに追加
1,081
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。
黒ハット
ファンタジー
前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。
伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました
竹桜
ファンタジー
自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。
転生後の生活は順調そのものだった。
だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。
その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。
これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる