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目指せ勝ち組!~君と歩む花道~

業務外任務

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    「……流石です、お嬢様。こんな時でさえお嬢様と居るとトラブルに巻き込まれるのですね」
    「う……。今回ばかりは言い返せない……」
    私とレイフレッドの二人だけで行くなら、この程度の依頼内容、トラブルのうちに入らない。
    でも、同行者に素人――例え多少戦う術を教わっていても実戦経験もない初心者ビギナーじゃ場合によっちゃ素人より質が悪い――、それもちょっとでも怪我させたら多方面から叱責されそうな面子ばかりを連れての行軍は全く気の休まる時がなくて地味に疲れる。
    話にあった場所までの間にもゴブリン程度の魔物は出ていた。それはレイフレッドが瞬殺してくれていたけど、王子達――特に騎士団長子息に少しずつ不満が蓄積されていくのが分かる。
   「……次、開けた場所に出たら殿下達にもお願いする事もあるでしょう。ですが、人一人が歩くのが精一杯ですれ違うこともままならない場所で何かあっても私達がすぐフォローに動けません。どうかご理解いただきたく」
    「――ゴブリン程度、お前達の助力等なくとも倒せる!」
    「……この辺りに棲息しているのは何もゴブリンばかりではありません。ちらほらオーガやオークも居ます。あのデカブツをこの様な狭い場所で迎え撃ちたくありません。故に、お嬢様が影の魔法を駆使して奴らを誘導して下さっています。どうか、お聞き分け下さい」
   「オーガもオークも私なら魔法の一撃で瞬殺はできます。ですが、銅級ランクの冒険者でも本来は盾役が注意を引き付けている間に剣や槍の使い手が弱らせ、魔術師が仕留めるのがセオリーとされています。オーガもオークもゴブリンに比べてはるかに体躯が大きく、怪力です。ゴブリンで自信をつけすぎた見習い上がりの初心者冒険者の死因トップ10です」
    あ、ようやく少し開けた場所に出た。
   「――ほら、来ますよ!」
     獣そのもののうなり声と共に藪から姿を表す巨体。
     ……この即席パーティーには盾役なんか居ないから、私が氷の壁で盾の代わりをする。
    「さあ、今のうちに!」
    更にレイフレッドが正面から突つく事で奴の気を引く。
    「背後か側面から攻撃してください!」
    こうして間近に生きた魔物を見るのは初めてなのか、少し腰が引けている様だけど……。
    「応!」
    そこは流石にS・Aクラスで生徒会役員になる位に優秀な人達に、騎士団長子息まで揃った、素人学生パーティーにしては豪華面子だけあってそれぞれ何とか一撃ずつ入れていく。
    最後、正面からレイフレッドが止めを刺せば終わり。
    一様にほっとする面々に、私は釘を刺す。
    「皆さん、今の魔物は依頼に無い露払いの討伐でしかありません。本番はまだこれからですよ」
    でも、まだ山に入って少しのところでもうオーガやオークが出るとは……。確かにおかしい。
    この山に来たのは初めてだけど、こんな山裾に出るのはゴブリン程度がせいぜいなのはどこでも大して変わらない。
    私とレイフレッドはお互い頷き合い、警戒レベルをもう一段階引き上げたのだった。
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