170 / 370
目指せ勝ち組!~君と歩む花道~
初任務
しおりを挟む
……顔合わせでは少々不穏な空気が漂いかけたけど、何とか気を取り直し、肝心の議題へと話を進ませることで仕切り直しをし。
「で、試験が終わった今、一番直近のイベントが研修旅行――つまり夏合宿だ」
と、まずは王太子殿下が口を開く。
「年間行事としての存在は知っていても、実際どんなものか、親兄弟がここの卒業生だという者は知っているだろうが、それでも生徒会目線の話を知る者は少なかろうから、一応説明するぞ」
夏合宿は、夏期休暇中に約一週間の日程で、クラス別に行われる行事なのだという。
「クラス別、って六クラス×三学年×2!? 」
「いや、全六学年のSクラス、全六学年のAクラス……という分け方になるから六週あれば足りるよ。夏期休暇は二ヶ月、八週あるからね」
「基本スケジュールはどのクラスも山の宿泊施設に泊まっての課外活動なんだけど、クラスによって課題に違いがある」
「Sクラスは途中コテージに宿泊、自炊訓練と魔物相手の討伐訓練が行われるが、Aクラスは魔物相手でなく猛獣相手の討伐訓練になる。Bクラスはそもそも討伐訓練そのものが無くなる、といった具合にな」
「そして我々生徒会はその全てに同行し、運営補佐を行います」
「ああ、無論自分達のクラスの番の時には研修が優先だ。……生徒会の大半はSクラスやAクラスだからそこはちとキツいが、その分他はむしろ楽に感じるぞ」
先輩方が次々に口を開き説明を加えていく。
「研修中の引率と指導は教師が専任で行うから、生徒会はその辺はノータッチだが、逆に移動中や宿泊施設内での生徒の統率は我々生徒会に委ねられている」
「この研修旅行の間、クラスを纏める責任者として実行委員が一人選出される。彼らは生徒会の臨時役員扱いとなるから、彼らを通して動くのが基本だ」
つまり。往復の経路や宿泊施設の選定、諸々の手続きなんかは学校側の大人がやってくれるけど、馬車の手配やその際の班分け、当日の点呼のタイミングとか、宿泊施設内での振る舞いについてとかの責任は私達生徒会が追う、と。
「……今回、会計にアンリ殿が居るお陰で手間が物凄く省ける上に色々その手腕を勉強させて貰えそうで嬉しいよ」
「ああ。道中の護衛の手配も毎年頭を悩ませるんだが……。今年はその点楽すぎて先達に要らぬお小言をいただくハメになるかもしれないな」
「……確かに私達は商人で、その様な手配は私たちの領分でございます。また、私達は黄金級の冒険者であり、実際の有事にはできうる限り対応致しましょう。……ですが、同時に私達も学生です。馬車の手数料くらいならまだしも、黄金級の冒険者を護衛に雇うのにいくら必要かご存じてすか?」
生徒会役員の一人としての権限内で働くなら、馬車の手配までは職務のうちだろう。けど、護衛はその限りではない。それでも、と言うならきちんと依頼料を払って護衛任務の指名依頼を受けなければ道理が合わないが、トップクラスの冒険者を雇うほどの予算を、例え貴族学校とはいえ生徒会が与えられている訳がない。
「……この様な任務にちょうど良い人材をお求めなら、普通に冒険者ギルドに依頼する方が確かですわ」
……私達はプロとして、ほいほいとタダで仕事を受ける訳にはいかないのだ。
「う、す、済まん。つい調子にのり過ぎたようだ、謝罪する。だが、助言位は期待してもいいだろうか?」
「ええ。勿論ですわ」
……幸いなことにこの生徒会、流石ブレインの集いだけあってちゃんと理由まで述べれば理解は早く、分らず屋のお馬鹿さんは居ない。
警戒を完全に解く気は無いけど、これなら常に警戒心剥き出しの子猫みたくしてなくても良さそうだね。
「で、試験が終わった今、一番直近のイベントが研修旅行――つまり夏合宿だ」
と、まずは王太子殿下が口を開く。
「年間行事としての存在は知っていても、実際どんなものか、親兄弟がここの卒業生だという者は知っているだろうが、それでも生徒会目線の話を知る者は少なかろうから、一応説明するぞ」
夏合宿は、夏期休暇中に約一週間の日程で、クラス別に行われる行事なのだという。
「クラス別、って六クラス×三学年×2!? 」
「いや、全六学年のSクラス、全六学年のAクラス……という分け方になるから六週あれば足りるよ。夏期休暇は二ヶ月、八週あるからね」
「基本スケジュールはどのクラスも山の宿泊施設に泊まっての課外活動なんだけど、クラスによって課題に違いがある」
「Sクラスは途中コテージに宿泊、自炊訓練と魔物相手の討伐訓練が行われるが、Aクラスは魔物相手でなく猛獣相手の討伐訓練になる。Bクラスはそもそも討伐訓練そのものが無くなる、といった具合にな」
「そして我々生徒会はその全てに同行し、運営補佐を行います」
「ああ、無論自分達のクラスの番の時には研修が優先だ。……生徒会の大半はSクラスやAクラスだからそこはちとキツいが、その分他はむしろ楽に感じるぞ」
先輩方が次々に口を開き説明を加えていく。
「研修中の引率と指導は教師が専任で行うから、生徒会はその辺はノータッチだが、逆に移動中や宿泊施設内での生徒の統率は我々生徒会に委ねられている」
「この研修旅行の間、クラスを纏める責任者として実行委員が一人選出される。彼らは生徒会の臨時役員扱いとなるから、彼らを通して動くのが基本だ」
つまり。往復の経路や宿泊施設の選定、諸々の手続きなんかは学校側の大人がやってくれるけど、馬車の手配やその際の班分け、当日の点呼のタイミングとか、宿泊施設内での振る舞いについてとかの責任は私達生徒会が追う、と。
「……今回、会計にアンリ殿が居るお陰で手間が物凄く省ける上に色々その手腕を勉強させて貰えそうで嬉しいよ」
「ああ。道中の護衛の手配も毎年頭を悩ませるんだが……。今年はその点楽すぎて先達に要らぬお小言をいただくハメになるかもしれないな」
「……確かに私達は商人で、その様な手配は私たちの領分でございます。また、私達は黄金級の冒険者であり、実際の有事にはできうる限り対応致しましょう。……ですが、同時に私達も学生です。馬車の手数料くらいならまだしも、黄金級の冒険者を護衛に雇うのにいくら必要かご存じてすか?」
生徒会役員の一人としての権限内で働くなら、馬車の手配までは職務のうちだろう。けど、護衛はその限りではない。それでも、と言うならきちんと依頼料を払って護衛任務の指名依頼を受けなければ道理が合わないが、トップクラスの冒険者を雇うほどの予算を、例え貴族学校とはいえ生徒会が与えられている訳がない。
「……この様な任務にちょうど良い人材をお求めなら、普通に冒険者ギルドに依頼する方が確かですわ」
……私達はプロとして、ほいほいとタダで仕事を受ける訳にはいかないのだ。
「う、す、済まん。つい調子にのり過ぎたようだ、謝罪する。だが、助言位は期待してもいいだろうか?」
「ええ。勿論ですわ」
……幸いなことにこの生徒会、流石ブレインの集いだけあってちゃんと理由まで述べれば理解は早く、分らず屋のお馬鹿さんは居ない。
警戒を完全に解く気は無いけど、これなら常に警戒心剥き出しの子猫みたくしてなくても良さそうだね。
0
お気に入りに追加
1,081
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。
黒ハット
ファンタジー
前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる