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目指せ勝ち組!~君と歩む花道~
ご立腹な王子様
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それは。その日一日の全ての授業が終わり、終礼のHRに出るため、一度部室から自分のクラスへと戻った時の事。前の時間が選択科目で各自特室棟から戻って来たときの事、だったらしい。
一番に戻ったのは着替えなどの必要の無い科目を受講していた王子様達で、ちょうど担任のグラシエル先生と一緒に教室に入って、それの第一発見者になってしまったと。
で、憤慨する王子の声に後から戻ってきた生徒達がなんだなんだと見てみれば、私の机にぶちまけられた虫やら爬虫類やらといった嫌われものの生き物達。
……それらが黙ってじっとしているはずもなく、その時点で既に一部被害が周囲の机にも及んでいたらしい。
そんなものを見たお嬢様が悲鳴をあげないなんてあり得ない。
で、クラブ棟に居た私が教室に着いたときには騒ぎに驚いた生き物が散り散りになって、更に騒ぎが拡大しつつあって、私には〝何かがあった〟事と、その原因らしい生き物の現状しか分からず、とにかく落ち着くにはあれを何とかしないと、と、冷風で動きを鈍らせまとめて窓の外へ放り出す。
その辺の木陰に放してやれば後は自分でどうにかするだろうし。
ついでに火と水と風を同時に操り簡単に掃除をしてやれば、まぁ簡単に元通りにはなる。……少なくとも教室は。
「……アンリ=カーライル。危うくパニックになりそうだった所、的確な対処をしてくれて助かった。それについては礼を言うが、これはどういう事なのか。話を聞かせて貰うぞ」
だけど、普段綺麗なものしか見ないようなご令嬢の何人かは気分が悪いと保健室へ行ってしまうし、王子様は憤慨してるし。
教室の空気は元通りどころか余計に緊迫感を増してしまった。
「……あの、私もつい今しがた……殿下よりも後から教室に戻ったばかりで、今見たままの事しか分からないのですが。何をお話しすればよろしいのでしょうか?」
取り敢えずかわいく笑って誤魔化そうとしてみたんだけど。
「知っているか? 王城というのは古今東西どこでも多少の差はあれ何かと陰湿な足の引っ張り合いが絶えないものだ。特に後宮の女達の嫌がらせは私も幼少時に一通り目にしたことがある。虫だの蛇だのの詰め合わせの贈り物など、定番中の定番だったな」
……つまり、私が虐められている事はバレた、と。だとするとこれ以上の下手な誤魔化しは偽証罪とか不敬罪になる恐れがある。
――仕方ない。お嬢様のご機嫌を損ねるだろうが、私はお嬢様のご機嫌よりはレイフレッドに余計な迷惑をかけない方が大事だ。
「……先日の新入生歓迎会の後より、下駄箱や机などへの落書きや、私の持ち物の紛失や破損が相次いでありました。――が、平民の身で目立てばこの様な事もあろうかと事前に対策をしておりましたので、これまで大事にせず済んでいましたが、今回は殿下に迷惑をおかけする事態になってしまったようで……申し訳ありません」
迷う事なく即座にその場に膝をつき、頭を下げる。
私は平民で、相手は自国の王子様。
その怒りを買ったならこれが当然……いや場合によっては土下座でも足りない。
でも。
「……私は。私だけでなく王太子である兄上もが皆に忠告したはずだ。それをこうも軽んじられるとは、な。それで? 対策をしていたというなら、当然犯人の目星はついているのだろう?」
そう、真に彼の怒りを買ったのは私じゃない。
ああ……。これは、終わったかもしれない。これで彼女が更迭されてしまったら……。それに便乗してあのアホがバカな事しでかしてこの件が子爵にばれたら。
これまでの努力もパァになる……。
だから黙っていたのに、あのお馬鹿ヒロイン……!
何で程々で満足しておかないのか!
あああ、どうしてくれよう……!
一番に戻ったのは着替えなどの必要の無い科目を受講していた王子様達で、ちょうど担任のグラシエル先生と一緒に教室に入って、それの第一発見者になってしまったと。
で、憤慨する王子の声に後から戻ってきた生徒達がなんだなんだと見てみれば、私の机にぶちまけられた虫やら爬虫類やらといった嫌われものの生き物達。
……それらが黙ってじっとしているはずもなく、その時点で既に一部被害が周囲の机にも及んでいたらしい。
そんなものを見たお嬢様が悲鳴をあげないなんてあり得ない。
で、クラブ棟に居た私が教室に着いたときには騒ぎに驚いた生き物が散り散りになって、更に騒ぎが拡大しつつあって、私には〝何かがあった〟事と、その原因らしい生き物の現状しか分からず、とにかく落ち着くにはあれを何とかしないと、と、冷風で動きを鈍らせまとめて窓の外へ放り出す。
その辺の木陰に放してやれば後は自分でどうにかするだろうし。
ついでに火と水と風を同時に操り簡単に掃除をしてやれば、まぁ簡単に元通りにはなる。……少なくとも教室は。
「……アンリ=カーライル。危うくパニックになりそうだった所、的確な対処をしてくれて助かった。それについては礼を言うが、これはどういう事なのか。話を聞かせて貰うぞ」
だけど、普段綺麗なものしか見ないようなご令嬢の何人かは気分が悪いと保健室へ行ってしまうし、王子様は憤慨してるし。
教室の空気は元通りどころか余計に緊迫感を増してしまった。
「……あの、私もつい今しがた……殿下よりも後から教室に戻ったばかりで、今見たままの事しか分からないのですが。何をお話しすればよろしいのでしょうか?」
取り敢えずかわいく笑って誤魔化そうとしてみたんだけど。
「知っているか? 王城というのは古今東西どこでも多少の差はあれ何かと陰湿な足の引っ張り合いが絶えないものだ。特に後宮の女達の嫌がらせは私も幼少時に一通り目にしたことがある。虫だの蛇だのの詰め合わせの贈り物など、定番中の定番だったな」
……つまり、私が虐められている事はバレた、と。だとするとこれ以上の下手な誤魔化しは偽証罪とか不敬罪になる恐れがある。
――仕方ない。お嬢様のご機嫌を損ねるだろうが、私はお嬢様のご機嫌よりはレイフレッドに余計な迷惑をかけない方が大事だ。
「……先日の新入生歓迎会の後より、下駄箱や机などへの落書きや、私の持ち物の紛失や破損が相次いでありました。――が、平民の身で目立てばこの様な事もあろうかと事前に対策をしておりましたので、これまで大事にせず済んでいましたが、今回は殿下に迷惑をおかけする事態になってしまったようで……申し訳ありません」
迷う事なく即座にその場に膝をつき、頭を下げる。
私は平民で、相手は自国の王子様。
その怒りを買ったならこれが当然……いや場合によっては土下座でも足りない。
でも。
「……私は。私だけでなく王太子である兄上もが皆に忠告したはずだ。それをこうも軽んじられるとは、な。それで? 対策をしていたというなら、当然犯人の目星はついているのだろう?」
そう、真に彼の怒りを買ったのは私じゃない。
ああ……。これは、終わったかもしれない。これで彼女が更迭されてしまったら……。それに便乗してあのアホがバカな事しでかしてこの件が子爵にばれたら。
これまでの努力もパァになる……。
だから黙っていたのに、あのお馬鹿ヒロイン……!
何で程々で満足しておかないのか!
あああ、どうしてくれよう……!
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