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目指せ勝ち組!~君と歩む花道~

エスコートを断られました。

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    週末。
    本来なら休日であるはずの土曜日。
    この国の学校は基本週休二日制なのだけど、貴族の通うパーティーに、令嬢のエスコート役は欠かせない。
    そのエスコート役は父親や男兄弟、あるいは婚約者を伴うのが当然とされ、隣の上級学校にその兄弟や婚約者が居る者は珍しくないからこその日取り。
    貴族のパーティーといえば夜会が一般的なのだけど、流石に学校行事に含まれる為にお昼時に開催される。
    で、そのセオリーからすればあのアホ坊が私のエスコートをするべき……なんだけど。
    通常の夜会ならば、かつて私の家で行われた誕生日パーティーの様に招待状が届いたりするんだけど。年間行事に組み込まれたこのパーティーにそんなモノはなく、通常は誰がエスコートするかなど入学前には既に決まっているもの……らしい。
    けど、私のところにそんな話は来ていない。
    「……どうすればいいか迷うところだけど、念のためレイフレッド、お願いしても良いかしら」
    そして、この新入生歓迎会は、上級学校と合同で行われる行事の一つ。上級学校との共同行事はこれと卒業パーティーとがある。
    ――卒業パーティー。
    乙女ゲームに於けるお約束。
    それはこのちょっと風変わりな乙女ゲームでも外さずきちんと踏襲している。
    この初等部の卒業時に悪役令嬢の断罪イベントが行われ、ヒロインは上級学校で攻略に成功したキャラと存分にイチャイチャする運びとなる。……が、ここでヒロインの育成が甘いと逆にヒロインのがバッドエンドを迎える事になる。
    ……この乙女ゲームの悪役令嬢は攻略対象の数だけ存在するけれど、今のところヒロインがウチのクラスの王子様達に接触した形跡はない。
    まだ一週間、けれどこの一週間で全てのキャラとの遭遇イベントが起こる。
    ……この一週間で遭遇し損ねたキャラは攻略出来なくなる。
    そして、同じクラスで確実に顔合わせだけは済んでいるはずの私の婚約者様。
    この一週間、どこかで彼らとかち合う授業があるだろうと思っていたから、あえてこちらから訪ねて行かなかったんだけどね、こうなると、最低限お伺いは立ててやらないといけない。ああ、面倒くさい。
    と、思っていたんだけど。
    「おい!    アンリ=カーライルは居るか?」
     金曜日のホームルーム終了後、帰り支度をしていたら、不意に教室後ろの扉が開いた。
     私の名を口にしたのは、最後の攻略対象である私の婚約者様。
    「……ええ。ご無沙汰致しまして申し訳ありませんわ」
    ニコリと営業スマイルで応対に出ると、彼は一人ではなかった。
    「ふん、実の無い謝罪等不愉快だ」
    おや、それを察する程度には賢くなったのか?
    ……と、一瞬思ったのだけど。
    「私は、お前の様な我が家の爵位狙いの女など娶る気はない。明日のパーティーには彼女と行くからな」
    と、人前で堂々と肩を抱いていたその彼女――ヒロインちゃんを前に出した。
    ……ああ。馬鹿は馬鹿のままだったらしい。
    他の攻略対象はまともそうなのに、何でこの男だけバグみたくお馬鹿さんなんだろ?
    「いいか、醜い嫉妬等して彼女を虐めたりしたら許さんからな!」
     それだけ宣言すると、さっさと立ち去って行った。
    「……彼は――確か子爵家の息子だったか?」
     その一部始終を見ていた王子様が呆れた様に溢す。
    「ええ。……現当主は無能の評判を欲しいままにする、貧乏子爵家の長男ですね」
    「無能……にしても……。あれは……彼女の価値も知らないのか、仮にも婚約者なのに」
    「アンリ殿、今日の明日で代役は見つかるのか?    もし良ければ誰か紹介しようか?」
    「いいえ、殿下。私の様な平民に勿体ないお話ですが、幸い当てなら御座いますので、ご心配なさらず」
    て言うかね、まさかゲーム開始早々やってくれるとは思わなかった。
    「……寧ろ、今見聞きした話を忘れていただきたく」
    明日、面倒な婚約者のお守りをせずに良くて、レイフレッドと行けるのは私にとってはご褒美に等しい。
    卒業パーティーと違って、エスコート役以外の参加は許されていないから、あの男に注目する者など居るまい。……が、私の事を知っていそうな王子様が私の獲得に動いたら?
    それが子爵の耳に入れば。
    大事な金蔓を逃す訳にはいかない子爵の邪魔が入ってしまう。それだけは阻止せねばならない。
     「無論、タダでとは申しませんわ」
    だから。私は、とびきりの営業スマイルを王子様に向けた。
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