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目指せ勝ち組!~君と歩む花道~
遭遇イベント
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学食、カフェテリア、中庭。
貴族の生徒が集まりそうな場所を避け、やって来たのはクラブ棟前のグラウンドの端。
昼はクラブ活動は禁じられているから、まあ静かなものだ。
校舎とグラウンドの境の花壇の縁に腰を下ろし、収納空間から弁当を取り出し広げる。
中身は何の変哲もない、白飯と卵焼きにミニトマトと茹でブロッコリー。……勿論、この世界では別の名前が付いてるんだけど面倒くさいからその辺の説明は省くことにして。うずらの卵とベーコンを串に刺したもの。
うん、前世の高校時代のお弁当を彷彿とさせる内容である。
冒険者ライフで豪快料理に慣れたお腹には物足りないけど……。変に目立ちたくないし。
さっさと食べて教室へ戻ろう。
そう、思っていたんだけど……ね?
「お前は……」
な・ん・で・こんな所に王子がお付きも連れず一人で居やがるんだチクショウ!
それもウチのクラスの第二王子じゃない、二つ上の王太子の方。
ヤバい。ものすごーくヤバくてマズイ。
王太子に見つかった時点で既に1アウト。こんな場面を第三者に見られたらどうなる?
「……申し訳ありません。このような場所に王太子殿下が居られるとは思わず、お邪魔をしてしまいましたわ。ええ、私はすぐに退散致しますから、どうぞごゆっくり――」
愛想笑いを浮かべて頭を下げ、さっさと退散を決め込む、が……
「殿下ー、ご注文の品を買って参りましたよー」
タイミング悪く退路を塞ぐ様に男がやって来た。
……騎士団長の息子、クレイグ・フォン・ロバート。彼が手にぶら下げているのは多分購買のサンドイッチ。どうやら殿下は彼をパシらせていたらしい。
「……っ、と。やあお嬢さん、君は?」
尋ねられてしまえば答えない訳にはいかない。
「私は一年Sクラス、アンリ=カーライルと申します。お昼の場所を探していて、まさかこちらに殿下がいらっしゃるとは思わずお邪魔をしてしまいましたの。では、ごきげんよう――」
「待て、と言っている。一年のSクラスということはあれと――マティスと同じクラスなのだろう?」
「左様でございますが、私はしがない平民。おそれ多くも王太子殿下とお話出来るような身分では本来無いのです。無知故の無礼をお許し下さるなら、この場を下がらせていただきたく存じます」
「……ほう。カーライルの名には覚えがある。平民とはいえ我が国でも有数の商家であろう? それに、平民と言う割にはマナーが完璧過ぎやしないか?」
「私はビル・フォン・ラッセル子爵子息の許嫁。故に作法に関しては特に厳しく躾られましたので」
「へぇ? アンリ=カーライル。カーライルの名ばかりでなくその名も聞き覚えがある。我が国の中央で使われている魔道具の仕入れ先の商会の会頭の名と同じようだが?」
「……はい。『疾風の牙』商会の会頭は確かに私で間違いありませんわ。シレイドの国王陛下からは、以前通信用の魔道具の大量注文を頂いた頃から定期的にご注文いただいております」
「――そして我らが皇帝陛下とも取引があるのだったか?」
「はい。……よくご存じで」
「私はこれでも王太子だ。マティスはどうか知らぬが、このくらいの知識は持っていて当たり前だと私は思うが」
へぇ。もしかするとこの王太子、今のシレイド王より優秀かも。
「それが、あの見た目詐欺で有名なラッセルの息子の婚約者? ……平民とはいえそりゃ御愁傷様、だな」
あ、何かクレイグ先輩に哀れまれた。
「――今からでは場所の確保も大変だろう。構わぬからここで食っていけ」
いや、アナタが構わなくても私は構うんだって!
内心悲鳴を上げたけど、王太子殿下のご配慮を平民の分際で無下には出来なくて。
渋々王子様とランチタイムイベントをこなす羽目になってしまった……。とほほ……。
貴族の生徒が集まりそうな場所を避け、やって来たのはクラブ棟前のグラウンドの端。
昼はクラブ活動は禁じられているから、まあ静かなものだ。
校舎とグラウンドの境の花壇の縁に腰を下ろし、収納空間から弁当を取り出し広げる。
中身は何の変哲もない、白飯と卵焼きにミニトマトと茹でブロッコリー。……勿論、この世界では別の名前が付いてるんだけど面倒くさいからその辺の説明は省くことにして。うずらの卵とベーコンを串に刺したもの。
うん、前世の高校時代のお弁当を彷彿とさせる内容である。
冒険者ライフで豪快料理に慣れたお腹には物足りないけど……。変に目立ちたくないし。
さっさと食べて教室へ戻ろう。
そう、思っていたんだけど……ね?
「お前は……」
な・ん・で・こんな所に王子がお付きも連れず一人で居やがるんだチクショウ!
それもウチのクラスの第二王子じゃない、二つ上の王太子の方。
ヤバい。ものすごーくヤバくてマズイ。
王太子に見つかった時点で既に1アウト。こんな場面を第三者に見られたらどうなる?
「……申し訳ありません。このような場所に王太子殿下が居られるとは思わず、お邪魔をしてしまいましたわ。ええ、私はすぐに退散致しますから、どうぞごゆっくり――」
愛想笑いを浮かべて頭を下げ、さっさと退散を決め込む、が……
「殿下ー、ご注文の品を買って参りましたよー」
タイミング悪く退路を塞ぐ様に男がやって来た。
……騎士団長の息子、クレイグ・フォン・ロバート。彼が手にぶら下げているのは多分購買のサンドイッチ。どうやら殿下は彼をパシらせていたらしい。
「……っ、と。やあお嬢さん、君は?」
尋ねられてしまえば答えない訳にはいかない。
「私は一年Sクラス、アンリ=カーライルと申します。お昼の場所を探していて、まさかこちらに殿下がいらっしゃるとは思わずお邪魔をしてしまいましたの。では、ごきげんよう――」
「待て、と言っている。一年のSクラスということはあれと――マティスと同じクラスなのだろう?」
「左様でございますが、私はしがない平民。おそれ多くも王太子殿下とお話出来るような身分では本来無いのです。無知故の無礼をお許し下さるなら、この場を下がらせていただきたく存じます」
「……ほう。カーライルの名には覚えがある。平民とはいえ我が国でも有数の商家であろう? それに、平民と言う割にはマナーが完璧過ぎやしないか?」
「私はビル・フォン・ラッセル子爵子息の許嫁。故に作法に関しては特に厳しく躾られましたので」
「へぇ? アンリ=カーライル。カーライルの名ばかりでなくその名も聞き覚えがある。我が国の中央で使われている魔道具の仕入れ先の商会の会頭の名と同じようだが?」
「……はい。『疾風の牙』商会の会頭は確かに私で間違いありませんわ。シレイドの国王陛下からは、以前通信用の魔道具の大量注文を頂いた頃から定期的にご注文いただいております」
「――そして我らが皇帝陛下とも取引があるのだったか?」
「はい。……よくご存じで」
「私はこれでも王太子だ。マティスはどうか知らぬが、このくらいの知識は持っていて当たり前だと私は思うが」
へぇ。もしかするとこの王太子、今のシレイド王より優秀かも。
「それが、あの見た目詐欺で有名なラッセルの息子の婚約者? ……平民とはいえそりゃ御愁傷様、だな」
あ、何かクレイグ先輩に哀れまれた。
「――今からでは場所の確保も大変だろう。構わぬからここで食っていけ」
いや、アナタが構わなくても私は構うんだって!
内心悲鳴を上げたけど、王太子殿下のご配慮を平民の分際で無下には出来なくて。
渋々王子様とランチタイムイベントをこなす羽目になってしまった……。とほほ……。
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