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乙女ゲームの舞台で

ランチタイム

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    その後、お化粧品のお店でお化粧を教わりながらお勧めの商品を買ったり、美容関係のお店に連れて行かれた私。……ルカはもう半死半生だ。
    「あら、もうこんな時間!    お昼にしましょうか」
     そのお母様の言葉にようやくルカが息を吹きかえし笑顔になった。
    それは、お洒落な高級店ではなくごちゃごちゃ騒がしい町の食堂だった。
    こういう雰囲気に慣れていないルカは目を白黒させていたけれど、お母様は慣れた様子で店員を呼び寄せる。
    「今日のおすすめを三つ、コーヒー一つと果汁一つと……アンリは飲み物何が良い?」
    「では、ジンジャーエールを下さい」
     私も冒険者としての旅の最中や、ルクスドではレイフレッドとよくこういう店でお昼を食べたからこういう大衆食堂的な雰囲気には慣れている。
    「あら、アンリはジンジャーエールを飲むの?」
    「はい。もう少し落ち着いた店ならお茶を頼んだりしますけど、こういう店では酒飲みに合わせた味付けの食事が多いですから。ジンジャーエールの方が合う気がして……」
    「ふふふ、お祖父様もね、素面でないといけない時はよくジンジャーエールを頼むのよ、貴女と同じ事を言っていたわ」
    「お祖父様が?    ……と言うか、お母様はどうしてこの様な店に?」
    「あら、私はあの人と結婚するまではお祖父様の娘だったのよ?    お祖父様――いいえ、私のお父様と外で食事をする時にはよくここへ連れてきてもらったわ」
    ああ、そう言えば私があの職人ギルドのプログラムに参加したとき、お母様も前に参加したことがあるとか聞いたことがあったっけ。
    そっか、ギルマスの娘とはいえ、職人ギルドの長の家ではそんなそんな風なのかな?
    「そうなのですか!?」
    「そうよ、ルカ。ルカがいつも行くお洒落なお店はお父様――私が旦那様に嫁ぐまでは滅多に行くことの無い、お祝い事の時だけ行ける特別な場所だったわ。でも、アンリとは一度も外でご飯を食べたことが無かったな、って思ったらね……。いつものお洒落なお店より、こっちに来たいと思ったの」
    お母様には兄弟が一杯いる。いとこも合わせたら、もっと。そんな大人数で来ることもよくあったという。
    「うちではお上品を求められるけど。うちはお金持ちでも貴族じゃないんだもの。たまにはわいわい騒いで楽しむ食事を楽しみたくなったのよ」
    やがて運ばれてきた料理は骨付きフライドチキンにフライドポテトにハンバーガー。どれも手掴みでかぶりついて食べるような、カーライルの家ではまず出てこないような料理ばかり。
     どうやって食べるのか分からないらしいルカの隣で、お母様が真っ先にフライドチキンにかぶりついた。
    その姿にあんぐり口を開け呆けるルカには悪いけど、その肉汁滴る熱々のフライドチキンのスパイシーな香りにそそられ私も豪快にかぶりついた。
    うん、美味しい。
    恐る恐る見よう見まねで小さく噛みついたルカも、その美味しさに二口目からは遠慮なくかぶりついた。
    うん、ジャンクフードは礼儀なんか気にしてたら美味しくないもんね!
    ……それを、あのマナー講座の元祖鬼教官だったお母様が真っ先にやってるのを見ると、まだ信じられない気もあるにはあるけど。
    やっぱりお母様もどこか無理してた部分があったのかな……。
     
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