111 / 370
念願の旅路で
街の明暗
しおりを挟む
「……で?」
私達が居るのは街の目抜通り。
そこで騒いだんだから、当然の様にすぐさま警備兵がわらわらと駆け寄ってきて、この現状に目をむいた彼らの事情聴取を受ける流れになるのは……まあ仕方ないよね、って思えるんだけど……ね……。
「お前たちは何者だ?」
兵士達は私達に疑念の視線を向けてくる。……いや、転がされたチンピラは実に手慣れた様子で連行されて行ったから、あちらが悪さした事は分かっているのよね?
「私達は冒険者です。ここいらで一番大きく栄えた街と噂を聞いて立ち寄ったのですけど、どうやら私の様な年齢の子供には少々難がありそうでしたので、あちらの門から街を出ようと通りを車で移動していたところを先程のチンピラに絡まれたので、自衛のため身柄を拘束しただけです」
冒険者であることを証明するため神眼石のステータスノートを可視化させて見せる。
「……まさか、こんな子供が黄金級のAランクだと?」
「信じがたいが……。ステータスノートの表示は非表示にして隠蔽する事は出来ても表示されている表記を誤魔化すことは不可能だ。信じる他あるまい……」
驚愕する兵士からの謝罪を受け、私達は解放されることになった。
「いや、申し訳ない。こんな街なもんで、有り金全部すっちまった輩が居着いて悪さをするんで、いくら取り締まっても鼬ごっこでキリがないんすよ」
……まあありがちではあるよね。
じゃぶじゃぶ潤うのも居るだろうけど、そちらが明るい分闇もまたそれだけ暗く根深くなっていくから。
大人のチンピラはともかく、子供達はボロボロの野良みたいで嫌が応にも庇護欲が湧いてくるから困ったものだ。
だから。
カツン、と兵士のヘルムに小石が当たり、それを投げたのがおそらく先程の子供達の一味と知った兵士達が即座に彼らを追いかけに行き。
「おい、お前たちついてこい!」
と、兵士が駆け去ったのとは別の路地からまた新たに子供達が表れ、明らかに怯えていると分かる態度で、それでも私に声をかけてきた彼らについついていく気になっちゃったんだよね。
当然レイフレッドには呆れられたけど。
でも、まるで過去の自分を見るような目であの子達を見ていたのはレイフレッドだったんだしね?
……路地を少し入るとすぐに車では通れない狭い路地裏の道で、人通りもなく荒れた街並みに変わる。
仕方なく馬車をリルフィごと空間に戻すと、子供達が一様に驚愕の表情を浮かべた。
「……それで、あなた達のご用件は何かしら? そろそろ教えてくれない?」
「ま、まだだ! も、目的地までだまってついてこい!」
震える声で、必死に威勢を保つリーダーらしい犬耳のハーフの子が先頭に立って歩く。
そうして連れてこられたのは。
「スラム……ですか」
私達が居るのは街の目抜通り。
そこで騒いだんだから、当然の様にすぐさま警備兵がわらわらと駆け寄ってきて、この現状に目をむいた彼らの事情聴取を受ける流れになるのは……まあ仕方ないよね、って思えるんだけど……ね……。
「お前たちは何者だ?」
兵士達は私達に疑念の視線を向けてくる。……いや、転がされたチンピラは実に手慣れた様子で連行されて行ったから、あちらが悪さした事は分かっているのよね?
「私達は冒険者です。ここいらで一番大きく栄えた街と噂を聞いて立ち寄ったのですけど、どうやら私の様な年齢の子供には少々難がありそうでしたので、あちらの門から街を出ようと通りを車で移動していたところを先程のチンピラに絡まれたので、自衛のため身柄を拘束しただけです」
冒険者であることを証明するため神眼石のステータスノートを可視化させて見せる。
「……まさか、こんな子供が黄金級のAランクだと?」
「信じがたいが……。ステータスノートの表示は非表示にして隠蔽する事は出来ても表示されている表記を誤魔化すことは不可能だ。信じる他あるまい……」
驚愕する兵士からの謝罪を受け、私達は解放されることになった。
「いや、申し訳ない。こんな街なもんで、有り金全部すっちまった輩が居着いて悪さをするんで、いくら取り締まっても鼬ごっこでキリがないんすよ」
……まあありがちではあるよね。
じゃぶじゃぶ潤うのも居るだろうけど、そちらが明るい分闇もまたそれだけ暗く根深くなっていくから。
大人のチンピラはともかく、子供達はボロボロの野良みたいで嫌が応にも庇護欲が湧いてくるから困ったものだ。
だから。
カツン、と兵士のヘルムに小石が当たり、それを投げたのがおそらく先程の子供達の一味と知った兵士達が即座に彼らを追いかけに行き。
「おい、お前たちついてこい!」
と、兵士が駆け去ったのとは別の路地からまた新たに子供達が表れ、明らかに怯えていると分かる態度で、それでも私に声をかけてきた彼らについついていく気になっちゃったんだよね。
当然レイフレッドには呆れられたけど。
でも、まるで過去の自分を見るような目であの子達を見ていたのはレイフレッドだったんだしね?
……路地を少し入るとすぐに車では通れない狭い路地裏の道で、人通りもなく荒れた街並みに変わる。
仕方なく馬車をリルフィごと空間に戻すと、子供達が一様に驚愕の表情を浮かべた。
「……それで、あなた達のご用件は何かしら? そろそろ教えてくれない?」
「ま、まだだ! も、目的地までだまってついてこい!」
震える声で、必死に威勢を保つリーダーらしい犬耳のハーフの子が先頭に立って歩く。
そうして連れてこられたのは。
「スラム……ですか」
0
お気に入りに追加
1,081
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
異世界に転生した俺は農業指導員だった知識と魔法を使い弱小貴族から気が付けば大陸1の農業王国を興していた。
黒ハット
ファンタジー
前世では日本で農業指導員として暮らしていたが国際協力員として後進国で農業の指導をしている時に、反政府の武装組織に拳銃で撃たれて35歳で殺されたが、魔法のある異世界に転生し、15歳の時に記憶がよみがえり、前世の農業指導員の知識と魔法を使い弱小貴族から成りあがり、乱世の世を戦い抜き大陸1の農業王国を興す。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました
竹桜
ファンタジー
自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。
転生後の生活は順調そのものだった。
だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。
その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。
これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる