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念願の旅路で

神子対策

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    「それでお嬢様、結局あれはどうするおつもりなんですか?」
    翌日。エルフの森を早々に抜けるべくリルフィを急がせていると、車の中で仮眠を取っているはずのレイフレッドが壁越しに尋ねてきた。
    「そうね。……過去の記録に残る神子は四体いたわ」
    「ちなみにそれらは?」
    「一体は、それを鎮めるために生け贄の動物を供物として神子に肉体と言う実体を与えて殺した所、局所的に甚大な被害が出たそうだけど、一応解決したそうよ」
    エネルギーの固まりを爆発させたようなものだもんね……。まあ放置すれば際限無く被害が広がり続けることを考慮しても素直に解決したとは認めたくない事案だ。
    「後は退治するんじゃなく何とかご機嫌をとろうと農作物やら宝物やら供えたり躍りや音楽で楽しませようとしたり……そういう方向で奉り上げようとしたケースもあったみたい。……最初は上手くいってたらいくて、少しずつ神子の自我も成長していた様なんだけど、何が気に入らなかったのか、ある時神子が癇癪起こして力を暴走させて被害が出たけど、神子もそれに耐えきれず消滅したそうよ」
   まるで天岩戸の失敗例みたいな話だけど、お伽噺でなく実際に被害が出ているんだから笑えない。
   「ちょ、厄介極まりないじゃないですか、本気でどうするおつもりなんです!?」
    がばりと寝台から身を起こす気配がしてレイフレッドが叫ぶ。
    「うん。だからね、その過去の事例を踏まえて今は魔道具を制作中なの」
    先の事例は神子は実体のあるものに宿る事が出来るという話であり、後者は自我を育てる事が可能ということ。
    「だからね、その魔道具に神子を宿らせて力と自我を別に制御できないかと試行錯誤中でね」
    これまで作った魔道具は、前世の便利アイテムの再現が主だったから製作は比較的簡単だったけど、今回は完全にファンタジーな魔道具で、一から理論やら何やら考えて作る必要があるせいで開発にちょっと時間がかかってしまっているけど。
    「上手くやれば、私たちの未来の領地の土地神様になって貰えるかもね」
    「――神竜まで居るんです。やり過ぎれば痛くない腹を探られますよ、神の名を冠するあの国に」
    「分かってるわ。そんな大々的にやるつもりはないわよ、色んな意味で厄介だもの」
    いつしか森を抜け、マルクニア帝国領との国境が近くなる。
   「――国境を越えたら何処へ行きますか?」
    「そうね。一度馬車ごと拠点に戻りましょうか」
    竜にしろ神子にしろ、人の居ない場所で一度腰を落ち着けしっかり取り組まないとそろそろまずい。
    「小休止をしたらまた次の旅へ出掛けましょう」
    けど、こうしてレイフレッドと旅が出来る貴重な時間を長く費やすつもりもないから。
    「一週間で何とかするわ」
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