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雌伏の時

とんでもないモノ貰いました。

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    うん。魔王だの皇帝様とか言われちゃうとね、私の中では黒髪長髪に雄山羊の角という某堕天使風のビジュアルを勝手にイメージしてたんですけどね……?
    「面を上げよ」
    バリトンなイケボ……しかもしっとり色っぽい声に命じられて顔を上げれば。
    ……は?
    おいおいちょっと待て、何で息子のはずの領主皇子より若く見えるんだよ!
    ってな美青年がそこに居た。
    中性的なタイプじゃない。がっつり男の色気垂れ流しのエロいのが。
   前世によく居たキモいエロ親父みたいなやらしさは何処にも見当たらない硬質な雰囲気を持ちながら、エロさを併せ持つ。
    自分でも何言ってんのか分かんなくなりつつあるけど、確実に乙女の目の毒だ、あれは。
    その気が全く無いのに勝手に身体がゾクゾクする。
    ――ダメだ、気を強く持たないとヤられる。
   「陛下。私のパートナーをこのような公の場にて堕とすおつもりで我らを召喚したと仰るなら、私は契約に則り貴方に決闘を申し込まねばならなくなるのですが?」
    「フッ、済まんな。ちと試してみたくなっての。……その年でこの術に呼応した上で耐えて見せるとは愉快な娘よ」
    「――私を試した、と?」
    「うむ。何とも興味深い話を奴から聞いたのでな。……この術は男女の欲情に目覚めたものにしか効かず、尚且つ双方一定以上の絆を持たぬものにはレジストされる、我ら一族の固有スキルの中でも初歩の誘惑術だが……。仮にも一族の王たる余の魅了に耐えきるとは畏れ入ったぞ?」
    「……それは――どうも、と返すべきですかね?」
    「ふふ、無論無礼を働いた詫びは用意してある。――加えて余の期待に応えた褒美もな」
    その言葉は予め用意されていた台詞の様で、それを聞いた側仕え達が素早く動き、何かを王に差し出した。
    「まずは正当な報酬を」
    その言葉と共に、侍従がワゴンに乗せられた大量の皮袋を持って現れる。
    「次いで、褒美を。アンリ=カーライルには、我が支配下にある全ての国土に於ける永住権を。レイフレッドには我が帝国の男爵位を、そなたの成人を待って授ける事と致す!」
    「なっ――!」
    「そして詫びだがの、これは獣帝との連名でな。……詳細は後程あちらの皇帝から聞いてくれ」
    な、何かとんでもないモノ勝手にくれちゃってませんか、魔王様!
    「して、この者の両親とやらはそちらで間違いないか?」
    「……は、はい……」
    「そうか。そちらが難しい立場にある事は承知しておる。故に、そちらを我が国で保護する案も出ておる。――どうか?」
    「……!    ――っ、し、失礼ながら、偉大なる皇帝陛下に比べれば矮小ながら、我らにも守るべき者がございます。故に、大変勿体なくも、そのご提案をお受けするわけには参りません……」
    「その、そなたらが心配する者達もまとめて面倒を見よう」
    「……た、大変恐れながら、それを是とせぬ者も居ります故」
    「ふむ。助かる道を棄てても貫く信条とあらば、好きに殉じさせ、助かる者を確実に助けるのも守るべき責を負う者の義務ではないのか?    それとも。そなたらこそがその信条に殉じる者なのか?」
    「……」
    「まあ、良い。だが、覚えておくと良いぞ。そなたの一の姫は余の気に入りじゃ。このまま独り占めしたいが、先日物言いがついての。獣帝もその娘が欲しいそうだ。……それだけの価値ある娘と心得た上で、扱いに気を付けるが良いぞ」
    何かまだ企んでいるような悪い笑みを浮かべながら、「下がれ」と命じ、退出を促す皇帝陛下。
    ……。
   「これは、例の報告も一波乱はありそうですね」
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