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吸血鬼と一緒に。
契約成立
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「……ところでシリカさん、私はこれから何をどうすれば良いので……?」
「何、簡単な事だ。……レイフレッド、用意は出来ているんだろう?」
「――はい」
レイフレッドは懐から小瓶を取り出した。
人差し指と親指で摘まむサイズの小瓶の中には見覚えのある色合いの飴玉みたいな丸い塊が入っている。
「これは……あの時の……」
忘れもしない、去年の誕生パーティーで私を助けてくれたレイフレッドの――
「いいえ、お嬢様。まあ、物としては似たようなものですが、術としては根本から異なる物です」
「それは、吸血鬼が一生の内にたった一度しか使えぬ種族固有のスキルにて得る物。そいつをアンリが口にすれば契約そのものは成立する……が、儀礼に則るなら、もう少々手順を踏む必要がある」
ひらり、と一枚の用紙をテーブルに置いた。
それはまるで何かの契約書の様な――。
「そいつを飲めばお前達の間では契約し、お前達は契約に縛られらる。が、対外的には何の縛りも効果もない。故に、後付けで対外的に制約を設ける魔法契約を結び、これを公的に納める事で、他人のパートナーに手を出す行為を禁じ取り締まる根拠とするのさ」
これに名を記し血判を押すらしい。
更に見届け人のサインを記して役所に届ける。
「これもな、王候貴族ともなると書式から血判の押し方まで細々決め事があったりするんだが……まあ今回は必要あるまい」
シリカさんの目配せを受けて王妃様と王様が頷く。
「そしてもう一つ。……これも必要かと言われれば要らんのだが、まあ一応様式美と言うやつだな、パートナーであると見届け人に見せる為に一口、皆の前でパートナーの血を飲んでみせる。これがお前ら二人が為すべき事の全てだ」
うん。特に難しい事でなくてホッとした。
「……双方、覚悟は良いか?」
王様の問いに迷わず答えを返す。
「はい」
「――ではレイフレッドよ、彼女が正しくパートナーである事を皆の前で示すがよい」
「――はい」
いくら幼女とはいえ流石に人前で胸元くつろげるのは恥ずかしいから、ここは手首からで勘弁してもらおう――そう思って袖口に手をやるより早く、レイフレッドは王子が姫の手に口付けるかの如く、手の甲に浅く牙を立てた。
……お、王様達の前だからレイフレッドも気にしたのかな?
けど、私の方は顔が赤くなってないか心配だよ……。
「うむ。確かに見届けた。――では、契約の儀を始めよ。」
牙を受けたその手を表に返し、その掌に、瓶の中の物を出して握り込まされる。
控えていた侍女がグラスに水を注いで渡してくれる。
そっとそれを口に含むと無味無臭の、ただ硬く冷たい氷砂糖の様で。
薬を飲む要領で水を口に含み、一緒に飲み込めば、大きな塊が喉を通過していくのがよく分かる。
……これで、私は正しくレイフレッドのパートナーになった――はず。
今のところ何の違和感も感じないけれど、今この瞬間に人とは違う寿命を生きる未来が確定したんだ。
……その代わり、もうこの間のようなもどかしさを味わわずに済む。
「では、契約証明書にサインを」
ペンを渡され、まずレイフレッドが、そして次に私が署名する。
ピカピカに磨かれたナイフで指の腹に傷を付け、血判を押し。
最後に王様がサインをしているその隙に、サッとレイフレッドがその指先を啜り傷を消し。
「これで、二人の契約は成った」
何事も無かった体で王様の宣言を聞く。
「これは此方で然るべき部署へ回しておこう」
お父様。
アンリ=カーライル、四歳。
本日付でレイフレッドのパートナーになりましたわ。
事後報告になってしまって申し訳ないけれど。
どうかお許しくださいませね……?
「何、簡単な事だ。……レイフレッド、用意は出来ているんだろう?」
「――はい」
レイフレッドは懐から小瓶を取り出した。
人差し指と親指で摘まむサイズの小瓶の中には見覚えのある色合いの飴玉みたいな丸い塊が入っている。
「これは……あの時の……」
忘れもしない、去年の誕生パーティーで私を助けてくれたレイフレッドの――
「いいえ、お嬢様。まあ、物としては似たようなものですが、術としては根本から異なる物です」
「それは、吸血鬼が一生の内にたった一度しか使えぬ種族固有のスキルにて得る物。そいつをアンリが口にすれば契約そのものは成立する……が、儀礼に則るなら、もう少々手順を踏む必要がある」
ひらり、と一枚の用紙をテーブルに置いた。
それはまるで何かの契約書の様な――。
「そいつを飲めばお前達の間では契約し、お前達は契約に縛られらる。が、対外的には何の縛りも効果もない。故に、後付けで対外的に制約を設ける魔法契約を結び、これを公的に納める事で、他人のパートナーに手を出す行為を禁じ取り締まる根拠とするのさ」
これに名を記し血判を押すらしい。
更に見届け人のサインを記して役所に届ける。
「これもな、王候貴族ともなると書式から血判の押し方まで細々決め事があったりするんだが……まあ今回は必要あるまい」
シリカさんの目配せを受けて王妃様と王様が頷く。
「そしてもう一つ。……これも必要かと言われれば要らんのだが、まあ一応様式美と言うやつだな、パートナーであると見届け人に見せる為に一口、皆の前でパートナーの血を飲んでみせる。これがお前ら二人が為すべき事の全てだ」
うん。特に難しい事でなくてホッとした。
「……双方、覚悟は良いか?」
王様の問いに迷わず答えを返す。
「はい」
「――ではレイフレッドよ、彼女が正しくパートナーである事を皆の前で示すがよい」
「――はい」
いくら幼女とはいえ流石に人前で胸元くつろげるのは恥ずかしいから、ここは手首からで勘弁してもらおう――そう思って袖口に手をやるより早く、レイフレッドは王子が姫の手に口付けるかの如く、手の甲に浅く牙を立てた。
……お、王様達の前だからレイフレッドも気にしたのかな?
けど、私の方は顔が赤くなってないか心配だよ……。
「うむ。確かに見届けた。――では、契約の儀を始めよ。」
牙を受けたその手を表に返し、その掌に、瓶の中の物を出して握り込まされる。
控えていた侍女がグラスに水を注いで渡してくれる。
そっとそれを口に含むと無味無臭の、ただ硬く冷たい氷砂糖の様で。
薬を飲む要領で水を口に含み、一緒に飲み込めば、大きな塊が喉を通過していくのがよく分かる。
……これで、私は正しくレイフレッドのパートナーになった――はず。
今のところ何の違和感も感じないけれど、今この瞬間に人とは違う寿命を生きる未来が確定したんだ。
……その代わり、もうこの間のようなもどかしさを味わわずに済む。
「では、契約証明書にサインを」
ペンを渡され、まずレイフレッドが、そして次に私が署名する。
ピカピカに磨かれたナイフで指の腹に傷を付け、血判を押し。
最後に王様がサインをしているその隙に、サッとレイフレッドがその指先を啜り傷を消し。
「これで、二人の契約は成った」
何事も無かった体で王様の宣言を聞く。
「これは此方で然るべき部署へ回しておこう」
お父様。
アンリ=カーライル、四歳。
本日付でレイフレッドのパートナーになりましたわ。
事後報告になってしまって申し訳ないけれど。
どうかお許しくださいませね……?
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