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職人街で弟子入りします。
錬金術に挑戦します。
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各ギルドに登録して三ヶ月が経った。
先月は染め物工房、今月からは革製品の加工・製作工房。
そして。
「ふふ、ふふふふふ」
「……お嬢様」
「ふふふふふ、良いじゃない。やぁっと手に入れたんだから!」
決して広いとは言えないダイニングにドンと鎮座しているのは鍋。ティーポットの様なずんぐりした形の巨大鍋。
ギルド併設の書庫でひたすら本を読み続けて三ヶ月。
錬金術の概念からレシピまで、ただ文字情報を覚えるだけの日々も今日で終わり。
勿論知識はまだまだ足りないから書庫通いは止めないけど、ようやく手に入れたそれをレイフレッドに見せびらかす。
鍋のデザインはまるでねずみの王国の黄色い熊が持つはちみつ壺の様で可愛い。
「後で空間に錬金スペースを用意するけど……」
「お嬢様、その中には僕は入れないんですか?」
うーん、どうなんだろう?
その辺の説明は書いてなかったからなぁ……。
ステータスノートを開き、改めて確認してみると……あ、空間作成スキルがいつの間にか2つも上がってる。
「私が許可した人なら入れるみたい。ただ、出入口は私にしか開けないから出入り自由とは言えないみたい」
説明に従いスキルを発動させると、私の神眼石から光の玉が飛び出し、レイフレッドの神眼石に触れて消えた。
「……これで入れるはず」
錬金釜をアイテムボックスにしまい、空間の入り口を開く。
レイフレッドはそっと空間の歪みに腕を伸ばし差し入れる。
何度か出し入れし、何ともないと分かると意を決して一歩を踏み出した。
後に続いて私はいつも通りに見慣れた空間に入り、さっさと錬金スペースを確保する。
前世では錬金術は半ばお伽噺の中の技術として語られながらも時に料理に例えられて説明されていた。
そして、この世界の錬金術はまさに料理そのもの、特にカレーのレシピにぴったり嵌まる。
まず材料となる野菜や肉を炒め煮込むように、元となる素材――例えば金属素材を錬金釜に入れる。
続いてメインのスパイスで味付けするように特殊素材――魔物素材や薬草などを入れ特性や効果を付け。
牛乳やはちみつ、ワインなどの隠し味でコクやまろやかさをプラスするように、魔法で効果をプラスする。
そんな技術。
だから、技術の粋を集めた機械人形のゴーレムは造れても、人工生命体たるホムンクルスは創れないし、瀕死の状態を完治させるフルポーションは調合出来ても完全な死者を甦らせるエリクシールや不老不死の妙薬なんて作れない。
でも、鍛冶スキル等と合わせて使えば効率よく良質の武具や防具が作れる。
「と、いうわけでー、早速初心者錬金術師の登竜門、初級ポーションを作りたいと思いまーす」
鍋の横に設置した作業台(自作)の上に材料を並べていく。
「まずはー、レイフレッド君提供の青の蔓草と黒苺の実を黄金蜂のはちみつを入れて混ぜまーす」
青の蔓草は疲労回復効果のある薬草だけど単体で使うと青臭い強烈苦味がある割には気休め程度の効果しかない。
黒苺は体力回復効果があるけどクエン酸越えの酸味がある割には以下略。
黄金蜂のはちみつは気分が悪くなるほど甘ったるいが薬草の効果を高める。
混ぜて混ぜて、やがて素材の形が溶けてスムージー状になった所へ蒸留(自作)と少量の蒸留酒(自作)を加え、片栗粉を溶かした様なトロリとした液状になるまでまた混ぜて。最後に紅茶の茶葉(量産品)とオレンジ(市場で購入)の皮のすり下ろしを入れ、水と変わらないさらさらした液体状に変わったら、ポーション瓶コルク栓セット(ギルド提供品)をぽいぽい放り込めばあら不思議。
ポーション瓶に詰まった赤紫色のポーションが完成です。
試しに鑑定してみれば。
●初級ポーション
・HP及びMPを少量回復する
・追加効果:継続回復効果(小)
・オレンジティー味
この結果を紙に書いてレイフレッドに見せたら「売ってくれ」と頼まれた。
「初級ポーションとしては最上級品かと……」
レイフレッドによればHPとMPの数値は冒険者や兵士等の戦闘職種を持つ者のみステータスノートに表示される数値で、HPが無くなれば死、MPが無くなれば魔法が使えなくなる。とまあその辺はゲームの設定通り。
「冒険者にとってポーションは必需品ですが、安いものは効果が足りず、効果の高い高価な物も味は良くないのです」
つまりそれは量産すれば売れる、と。
試作品は材料調達の報酬と相殺し、タダであげたけどね。
先月は染め物工房、今月からは革製品の加工・製作工房。
そして。
「ふふ、ふふふふふ」
「……お嬢様」
「ふふふふふ、良いじゃない。やぁっと手に入れたんだから!」
決して広いとは言えないダイニングにドンと鎮座しているのは鍋。ティーポットの様なずんぐりした形の巨大鍋。
ギルド併設の書庫でひたすら本を読み続けて三ヶ月。
錬金術の概念からレシピまで、ただ文字情報を覚えるだけの日々も今日で終わり。
勿論知識はまだまだ足りないから書庫通いは止めないけど、ようやく手に入れたそれをレイフレッドに見せびらかす。
鍋のデザインはまるでねずみの王国の黄色い熊が持つはちみつ壺の様で可愛い。
「後で空間に錬金スペースを用意するけど……」
「お嬢様、その中には僕は入れないんですか?」
うーん、どうなんだろう?
その辺の説明は書いてなかったからなぁ……。
ステータスノートを開き、改めて確認してみると……あ、空間作成スキルがいつの間にか2つも上がってる。
「私が許可した人なら入れるみたい。ただ、出入口は私にしか開けないから出入り自由とは言えないみたい」
説明に従いスキルを発動させると、私の神眼石から光の玉が飛び出し、レイフレッドの神眼石に触れて消えた。
「……これで入れるはず」
錬金釜をアイテムボックスにしまい、空間の入り口を開く。
レイフレッドはそっと空間の歪みに腕を伸ばし差し入れる。
何度か出し入れし、何ともないと分かると意を決して一歩を踏み出した。
後に続いて私はいつも通りに見慣れた空間に入り、さっさと錬金スペースを確保する。
前世では錬金術は半ばお伽噺の中の技術として語られながらも時に料理に例えられて説明されていた。
そして、この世界の錬金術はまさに料理そのもの、特にカレーのレシピにぴったり嵌まる。
まず材料となる野菜や肉を炒め煮込むように、元となる素材――例えば金属素材を錬金釜に入れる。
続いてメインのスパイスで味付けするように特殊素材――魔物素材や薬草などを入れ特性や効果を付け。
牛乳やはちみつ、ワインなどの隠し味でコクやまろやかさをプラスするように、魔法で効果をプラスする。
そんな技術。
だから、技術の粋を集めた機械人形のゴーレムは造れても、人工生命体たるホムンクルスは創れないし、瀕死の状態を完治させるフルポーションは調合出来ても完全な死者を甦らせるエリクシールや不老不死の妙薬なんて作れない。
でも、鍛冶スキル等と合わせて使えば効率よく良質の武具や防具が作れる。
「と、いうわけでー、早速初心者錬金術師の登竜門、初級ポーションを作りたいと思いまーす」
鍋の横に設置した作業台(自作)の上に材料を並べていく。
「まずはー、レイフレッド君提供の青の蔓草と黒苺の実を黄金蜂のはちみつを入れて混ぜまーす」
青の蔓草は疲労回復効果のある薬草だけど単体で使うと青臭い強烈苦味がある割には気休め程度の効果しかない。
黒苺は体力回復効果があるけどクエン酸越えの酸味がある割には以下略。
黄金蜂のはちみつは気分が悪くなるほど甘ったるいが薬草の効果を高める。
混ぜて混ぜて、やがて素材の形が溶けてスムージー状になった所へ蒸留(自作)と少量の蒸留酒(自作)を加え、片栗粉を溶かした様なトロリとした液状になるまでまた混ぜて。最後に紅茶の茶葉(量産品)とオレンジ(市場で購入)の皮のすり下ろしを入れ、水と変わらないさらさらした液体状に変わったら、ポーション瓶コルク栓セット(ギルド提供品)をぽいぽい放り込めばあら不思議。
ポーション瓶に詰まった赤紫色のポーションが完成です。
試しに鑑定してみれば。
●初級ポーション
・HP及びMPを少量回復する
・追加効果:継続回復効果(小)
・オレンジティー味
この結果を紙に書いてレイフレッドに見せたら「売ってくれ」と頼まれた。
「初級ポーションとしては最上級品かと……」
レイフレッドによればHPとMPの数値は冒険者や兵士等の戦闘職種を持つ者のみステータスノートに表示される数値で、HPが無くなれば死、MPが無くなれば魔法が使えなくなる。とまあその辺はゲームの設定通り。
「冒険者にとってポーションは必需品ですが、安いものは効果が足りず、効果の高い高価な物も味は良くないのです」
つまりそれは量産すれば売れる、と。
試作品は材料調達の報酬と相殺し、タダであげたけどね。
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