唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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私の従者が可愛すぎる。

お金儲けは楽しいです!

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    ……とまあ、日々の授業では実に色々あるけど。
    最初の数ヶ月こそ週五であった授業が最近では週四に減った。

    最初こそ、休日のはずの土曜日に指南役としてお父様に紹介されたジョルジとレイフレッドを連れてやっていた露店が思った以上に人気が出て、お父様がこれを本格的に授業の一環として格上げし、改めて休日2日が確保されたワケだけど。

    露店で売る商品がハンドクラフト品な以上はそれを作る時間が要る。
    日々の早朝、休憩時間、就寝前にもこつこつ作り溜めているけど、やっぱり土日に作るのが一番捗る。

    本来勉強部屋として与えられた部屋は、レイフレッドと授業を受けるようになってリビングのテーブルばかり使うものだから、今では勉強机の上にはミシンが鎮座している。
    幾つも並んだ段ボール箱の中は生地や糸で一杯。
    ……アイテムボックスに収納すれば全部キレイに片付くんだけどね。
    ただでさえ「規格外」認定されまくっている中で今更なんだけど、このくらいは隠しておこうかな、と。

    いやね、アイテムボックス使えるのに、スキルが「クリエイト」に内包されているせいで身分証ページに「アイテムボックス」は表示されないんだよ!

    ……同じ理由で、適正持ちしか使えない攻撃魔法を全属性扱えるのに、光と闇属性以外は表示されない。
    明確な理由なくステータスの開示を迫るのを良しとしない風潮のおかげでまだ問題になっては居ないけど。
    五歳の鑑定式がどうなるか、今から戦々恐々してたりもする。
    三歳の鑑定式では「クリエイト」としか表示されなかった時点で結果が予想できるだけにね……。

    この1年で空間魔法のレベルが上がり、「空間作成」というスキルを新たにゲットした。
    どんなスキルかと言えば、一言で纏めると文字通りの亜空間作成スキルだ。
    アイテムボックスとはまた違う、自分が出入り可能な異空間を作成するスキル。
    まだ低レベルな今は六畳一間程の空間だけど、こつこつ貯めたへそくりで買った糸車や織機を置くのに使っている。
    次の目標は、錬金術の道具を買ってコソーリ錬金術を試すこと。
    もう少し空間が広くなっから鍛冶も始めたい。

    まあ、どれももうしばらくはお預け案件なんだけど。

    髪飾りと栞がメイン商材で、シートを敷いた上に商品を並べたバザー型式の露店だった初期。
    今では露店用に特注した屋台車を使い、衣服や鞄等も販売する様になっている。

    計算を覚えたレイフレッドも十分な戦力になってくれている。
    最近ではジョルジに帳簿付けも習い始めている。

    「いらっしゃいませー」
    「ねえ、この服なんだけど、同じデザインのサイズ違いはない?」
    「申し訳ございません、大きいサイズ在庫はまだございますが、小さいサイズは先程売れてしまったのです。来週にまた入荷しますのでお取り置きしておきましょうか?」
    「じゃあお願いするわ」
    「かしこまりました」

    店を出した当初こそ遠巻きにヒソヒソしていた娘さん方も、最近ではすっかりレイフレッドのファンになっている。
    まぁ、フロスキーになってからこっち、毎日清潔にしているし、私の手製の香り付石鹸愛用しているから、甘ったるさを可能な限り排除した柑橘系の良い香りがする。
    加えて持ち前のイケメンフェイスというパッシブスキルを備えているのだから当然娘さん達のテンションは上がる訳だ。

    色とりどりのこの世界の人の瞳の色も、彼のような赤い瞳は魔族――それも吸血鬼特有のものらしいから、彼が吸血鬼である事は皆知っている。
    それでも騒ぐのは、決して魔族に対する偏見が無くなったから……ではない。

    彼女達は檻に閉じ込めた黒豹を檻の外から眺め愛でているだけなのだがら。

    日本で接客業に少しでも関わった事のある人なら分かるかな?
    「お客様は神様です」
    そんな神話に踊らされる客の無法に理不尽を噛み締めながらも頭を下げなければならない悔しさを。
    客商売で客にそっぽを向かれてはまずいから、こちらは大抵の場合で泣き寝入りを強いられる。

    彼女達もそれを分かっているから、彼が店員である内は安全と見なして寄ってくる。

    正直不愉快極まりないから、レイフレッドには店に立たなくても良いと言ったことがあるけど、それは本人に断られた。
    「この程度どうと言うことはありませんよ。まだ好意的な分気も楽ですし。そもそも僕の役割はお嬢様の護衛です。あのような場所について行かないとか、職務怠慢で旦那様に叱責されろとお嬢様は仰るので?」

    ……本当に、「餌貰ったからって尻尾振らない」と言っていた頃の奴は何処行った!?
    何かもう最近精神年齢的には十近く年下のはずの彼に振り回されてる感が半端なくて。

    打倒婚約の目標こそ忘れた事は無かったけれど、元々空気だった婚約者様御本人の事なんかまるっと記憶の彼方に飛ばしていた。

    石橋叩いて渡るくらいでもまだ心配と、あれ程言われていたのに――。
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