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玄関と勝手口

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 『――つまり、どーゆーことよ?』

 ま、ほぼ字面通りなんだけど。
 「つまり、今ここに既に出してる入り口を玄関として固定するのが〈入り口固定〉、その上でもう一個出入り口を作れるのが〈セカンドドア〉。ここに玄関固定しとけば、外出先で出した〈セカンドドア〉でこの空間伝いにいつでもこの場所に戻って来れるって訳」

 まぁ、これをすると固定した入り口は常に開きっ放しになるから、こうして小屋や洞窟で入り口が隠せてある程度守れるからこそ可能な方法ではあるけれど。

 『つまり、帰り道限定のどこ○もドアが使えるってコト?』
 「そゆこと」

 セカンドドアの方は私が空間にいても消せるからな。
 ……空間からはセカンドドアを開く事は出来ないんだけど。

 「つまり、対策なしにこの空間の屋敷や小屋を定宿にするのは危険、と……」

 並列存在が空間を出られないのはセカンドドアも同じ。
 唯一出られるのは……

 「しかし、私も強烈な日光の下には出たくありませんからね」

 「つまり、最低限のサバイバルの準備は必要だからね、頼むよ」
 『了解~♪』

 携帯食料に水、武器とポーション、服。テントに魔道具。それらを入れたリュックとウエストポーチ。

 「それじゃ、出発しますか」

 どっぷり日の暮れた砂漠を歩き出す。
 「……本当に、昼の暑さが嘘の様に寒いですね」
 「まぁ……。で、ホントについて来る気なの?」
 「たまにはお嬢様方のお世話以外の仕事もしませんと」
 「そりゃ身体能力の高い吸血鬼族の前衛が居てくれるのはありがたいけど……」

 一応武器も使えるけど、魔法と比べたら圧倒的に私は後衛職がやりたい派だ。
 ただ、セスは盾役職タンクではなく盗賊職とか暗殺者ジョブなんだよね。

 「それで、どちらへ進まれるので?」
 「あー、ここから東……えーと、あのブラックベア座の方角にいるみたい……」
 手にした魔道具を見下ろす。

 (いや、ドラ○ンボールレーダーかい!)
 魔道具担当の作ったそれは、某7つの玉を探して龍に願いを叶えてもらうお話に出てくるアイテムそのものだった。

 ……そのツッコミは私の並列存在以外誰も理解してくれないので、脳内で密かに突っ込みつつそう答えた。

 「では、行きますか」

 この砂漠には、目的のサンドワーム以外にもサソリや虫などあまり乙女の目に優しくないモンスターが溢れている。
 油断しないよう、私たちは東へと歩き始めた。

 「もっと可愛い、ハムスターみたいなモンスターとか居たらいいのに」

 しかも、目的は巨大芋虫退治。
 「あー、テンションさがるわー」
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