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水盤工事

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 「ほう。これでしたら昼間でも問題無くこちらの小屋で仕事が出来そうですね。……裏の泉(予定)も。流石に洞窟の外へは、日が沈まねば出たくありませんが」

 完成した洞窟は、幸いセスには好評で。
 「……確かに砂埃などで折角の飲料水が砂だらけになるのは忍びない。何らかの対策は必要でした。これなら余計な日差しも防げて一石二鳥でしょう」

 と、取りあえず叱責は免れた。
 ……あれ、一応私セスの主人のハズ……

 「何か?」
 「いえいえ、何でも……」

 とにかく怒られなかったとはいえ、洞窟を作った分水盤を作る予定が遅れたのは確かなので、急いで水盤工事に取り掛かる。

 『……工事ってーとどうしても私主導になるのね』
 『あきらめろ、魔法担当。ほら、特製石は置いとくから』

 細く深々掘っただけの穴を、途中から円錐を描くように広げていき、石を貼り付けていく。
 一本、洞窟の外まで続く農業用水路と、飲料水専用の井戸用の竪穴を家の中の土間に造り。

 泉の周りに少しばかり堤防代わりの縁をつけて……

 「よし、出来た!」

 四方のうち三方と天井を岩に囲われ、残る一方も小屋と緑のカーテンで遮られた薄暗い洞窟の中の泉は、まるで地底湖の様で、この砂漠の中にあっては神秘的な雰囲気さえ纏っていそうな……

 「これで水の確保は出来た」

 次は、食べ物。
 人は食べずとも何とか7日は生きれる生き物らしいし、一応空間の中の畑で採れる物もあるから、敢えてここで作らなくても私一人くらいなら生きていけるんだけど。

 「流石に何もない、と言うのもね……」
 しかし、砂漠でも育つ植物など世界を違えようとそう種類はない。
 食べられる植物など育たないからこそ各国とも領有したがらない土地なのだから。

 だけど、洞窟を拵え日陰を作った今なら……

 「モヤシとキノコくらいなら栽培できるか……」

 表に畑も作りたいけど、まずは……

 「農業担当、ここでモヤシとキノコ作りたいんだけど?」
 『あー、取りあえず湿度調節のためのハウスを作れ。それと棚もな。それからも一度声掛けてよ』

 つまり、また工事……
 「魔法担当ー!」

 『またかよ! ちょ、いい加減特別ボーナス要求するよ!?』

 ここに来てから他の担当より確実に多く働かされている魔法担当はそろそろキレそうである。

 「あー、今日のおやつ私の分アンタにあげるからさー」
 『私は子供か!』
 「……栽培の目処が立ったらサンドワーム倒しに行くから」
 『くっ、そうかここは砂漠……。普段冒険者も立ち入りたがらないせいで中々手に入らないサンドワームの素材もここなら取り放題……!』
 「錬金担当とか、他に欲しい人も居るだろうし。取りあえず最初の一匹目の素材はアンタに優先権あげるから」
 『乗った……!』

 ふふふ、さすが私。チョロイもんである……(泣)
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