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国外追放がほぼ死刑な件。
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カナンに前世の記憶が戻ったのは、まさにあの5歳の時の殿下との対面の直後だった。
初対面のはずの殿下の顔に何となく見覚えがあった。
……殿下どころか陛下のご尊顔すらこの時初めて間近に見たのだ。
何故、と、幼心に疑問に感じ、帰りの馬車の中でもあの衝撃的な言葉かけの事と共に思い悩み、その晩何故か熱を出した。
「知恵熱!」
……とても不本意だが、侍医はそう診断を下し、熱冷ましだけ置いて下がったその深夜。
カナンはひどい頭痛に見舞われた。
膨大な量の記憶を収めていた鍵付き扉の鍵が壊れ、中からそれらが溢れ出し、5歳のカナンの記憶と混じり合い。
そうして理解したのが。
「私、悪役令嬢ぢゃん。」
それも、国外追放がデフォの。
国外追放される予定なのは、だだっ広いだけの何もない砂漠。
そんな場所を領有しても得にはならず、そこを進軍するのもかなり難儀する土地ゆえ、周辺諸国は緩衝地帯として扱い、長く放置していた土地。
……食糧どころか、水の確保さえほぼ不可能。
国外追放とは言うが、実際彼らが直に手を下さないだけの実質死刑だ。
残念ながら、生まれながらの婚約で、それをこちらから破棄することは出来ず。
仲を改善しようにも聞く耳持たない殿下のお守りをこの先もずっと……なんて……
なら、どうすれば?
そう悩んだ末、今の未熟な私じゃろくな案も練れないと、私は様々な知識や技術を貪欲に求め始めた。
最初は父に温室をねだり、薬草園を拵え、薬学の勉強を始めた。
……なにせ転生モノあるあると言うか、中世ヨーロッパ風の世界だけあって医療技術は未発達。
うっかり風邪も引きたくない。それ以上の病気は尚更に。
なら、自分で薬を作れるようになれば良い!
ついでにハーブで化粧水や入浴剤でも作れれば小遣い稼ぎにもなるし……
そう思って始めた薬学から派生して、次に私は錬金術に興味を持った。
……が、だ。
薬学の研究をしつつ更に錬金術も……と言うのは……
私一人では手も頭も時間も足りず。
どうしたものかと悩んでいた頃。
私はそのスキルを発現させた。
その名も〈並列存在〉。
私がもう一人居る、と言うスキル。
そしてもう一つが〈メモリーズエリア〉。
一種の空間魔法なんだけど。
この中でなら、〈並列存在〉が肉体を得て活動が可能、と言う。
つまり私が錬金術を学ぶ傍ら、もう一人の自分は薬学の研究に専念できる、と。
そしてそのスキルのレベルが一つ上がる毎に並列存在が一人増えていき、その分手を出せる分野が増えていき。
「取り敢えず、まずは私の衣食住の確保から始める。食はしばらくここでとるし。だからまずはひとまずまともな作業着と、まずは住む場所を確保するわよ!」
今ではこんなに沢山居る私達に指示を出し、私はこの砂漠での生活の第一歩を踏み出すのだった。
初対面のはずの殿下の顔に何となく見覚えがあった。
……殿下どころか陛下のご尊顔すらこの時初めて間近に見たのだ。
何故、と、幼心に疑問に感じ、帰りの馬車の中でもあの衝撃的な言葉かけの事と共に思い悩み、その晩何故か熱を出した。
「知恵熱!」
……とても不本意だが、侍医はそう診断を下し、熱冷ましだけ置いて下がったその深夜。
カナンはひどい頭痛に見舞われた。
膨大な量の記憶を収めていた鍵付き扉の鍵が壊れ、中からそれらが溢れ出し、5歳のカナンの記憶と混じり合い。
そうして理解したのが。
「私、悪役令嬢ぢゃん。」
それも、国外追放がデフォの。
国外追放される予定なのは、だだっ広いだけの何もない砂漠。
そんな場所を領有しても得にはならず、そこを進軍するのもかなり難儀する土地ゆえ、周辺諸国は緩衝地帯として扱い、長く放置していた土地。
……食糧どころか、水の確保さえほぼ不可能。
国外追放とは言うが、実際彼らが直に手を下さないだけの実質死刑だ。
残念ながら、生まれながらの婚約で、それをこちらから破棄することは出来ず。
仲を改善しようにも聞く耳持たない殿下のお守りをこの先もずっと……なんて……
なら、どうすれば?
そう悩んだ末、今の未熟な私じゃろくな案も練れないと、私は様々な知識や技術を貪欲に求め始めた。
最初は父に温室をねだり、薬草園を拵え、薬学の勉強を始めた。
……なにせ転生モノあるあると言うか、中世ヨーロッパ風の世界だけあって医療技術は未発達。
うっかり風邪も引きたくない。それ以上の病気は尚更に。
なら、自分で薬を作れるようになれば良い!
ついでにハーブで化粧水や入浴剤でも作れれば小遣い稼ぎにもなるし……
そう思って始めた薬学から派生して、次に私は錬金術に興味を持った。
……が、だ。
薬学の研究をしつつ更に錬金術も……と言うのは……
私一人では手も頭も時間も足りず。
どうしたものかと悩んでいた頃。
私はそのスキルを発現させた。
その名も〈並列存在〉。
私がもう一人居る、と言うスキル。
そしてもう一つが〈メモリーズエリア〉。
一種の空間魔法なんだけど。
この中でなら、〈並列存在〉が肉体を得て活動が可能、と言う。
つまり私が錬金術を学ぶ傍ら、もう一人の自分は薬学の研究に専念できる、と。
そしてそのスキルのレベルが一つ上がる毎に並列存在が一人増えていき、その分手を出せる分野が増えていき。
「取り敢えず、まずは私の衣食住の確保から始める。食はしばらくここでとるし。だからまずはひとまずまともな作業着と、まずは住む場所を確保するわよ!」
今ではこんなに沢山居る私達に指示を出し、私はこの砂漠での生活の第一歩を踏み出すのだった。
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