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第七章 元凶様がやって来た

夜会

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 「ふんふんふん~♪」

 吸血鬼という魔族の中でも美形種族とされる一族の者、それも特に美形が多いとされる王族。

 確かに顔面にはその血が頑張って仕事した痕跡はある。

 が、スマートな体型の者が大半の吸血鬼一族にしては少々――いや、かなり甘やかされボディなスタイルのせいで、首から上と下の対比がちぐはぐで。

 結果、イケメン枠から外れる結果となっている自覚のないお坊っちゃんは、現在とても上機嫌であった。

 「とうとう来たぞ、この国まで! 明日の外交スケジュールをこなせば後は自由だ!」

 彼の外交スケジュールもいよいよ終盤。

 今宵は明日の外交の前哨戦としての夜会に出席していた。

 「ほう! 貴方は噂のダンジョンに行った事があるのですか!」

 「ええ、最上級のお宿に宿泊して温泉というものを堪能して参りましたの。お陰で肌の調子が良くて……ホホホ」

 「うむ。海やらスキーやら下々の遊びはともかく、あそこかの劇場のレベルは王都と良い勝負。カジノは……楽しかったんだが嫁に止められてな……」

 招待客の中にはダンジョンに行った事のある者も居て、その話を聞きますます期待は高まっていく。

 ……明日の外交が長引けば、それだけダンジョン行きが遅れる。

 それを恐れた彼は、いつになく精力的に働いた。

 そして。

 「王都からかのダンジョン村まで馬車で二泊~三泊程かかります。途中、良い宿を確保しておりますので、もうしばしご辛抱を」

 頭を下げるのはかのギルマス。

 連絡を受けて青ざめたが、取り敢えずの目的は観光と聞き、とにかく触らぬ神に祟りなしとばかりに低姿勢で接する。

 機嫌を損ねないよう、さっさと満足して帰ってくれと、それだけを願い、ギルマス自ら案内役を買って出た。

 道中、賊に悩まされぬよう二週間前からギルマス権限で、道中近辺の賊退治に強制依頼を発動し、残党まで残らず山狩りまでして殲滅した。

 宿の者もしっかり言い含め、高級娼婦まで動員して待機させている。

 このまま、上機嫌のまま帰ってもらうのだ。

 皆の平穏の為に。

 そう願って……。


 しかし。
 どんなに気をつけようとも避けようのない爆弾が、ダンジョンその物にあるとは、ギルマスも気づいていなかった。
 まぁ、知る由もないので当然だろうが。

 それ故の一波乱があるとは……

 彼の脳の血管と胃に幸あらん事を祈るばかりである。


 そんな事は一切知らない坊ちゃんは相変わらずのほほんと上機嫌のまま。
 馬車に揺られ、確実に地雷原への道を進むのだった――。
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