ダンジョン・ホテルへようこそ! ダンジョンマスターとリゾート経営に乗り出します!

彩世幻夜

文字の大きさ
上 下
71 / 80
第七章 元凶様がやって来た

元凶様、動き出す。

しおりを挟む
 「かの国より使者が参っております」

 「通せ」

 「はっ!」

 呼ばれて来たのは初老の男。――勿論かの国の人間である。

 「それで、そちらの返答は如何に?」

 「はっ、我が国の国王陛下の名代として、我が国の決定をお伝え申し上げます」

 うやうやしく取り出した巻紙を開いて持ち、それを読み上げる。

 『我が国への訪問は歓迎するが、近隣諸国との関係を鑑み、外遊の名目で、各国の城をそれぞれ訪問する中の一国という立場を取らせていただきたい。
 我が国では一晩夜会にご参加いただいた後、かのダンジョンへの案内と馬車、宿を用意させていただく。
 ダンジョン内での事に関しては、国家の権力の及ぶ所ではなく、ダンジョン内でのトラブルの責任は我が国では負いかねる。
 その点をご理解頂いた上、先の件をご一考下さることを願います』

 「以上が、我が国の返答にございます」

 「……はぁ。面倒臭い」

 「しかし、かのダンジョンはギルド主導でダンジョン村まで出来たそうでございます。
 ……流石に冒険者ギルドを敵に回すのは我が国でもなるべく避けたいところ。
 ここは面倒でも大人しく従う方がむしろ楽で早いやもしれませんぞ」

 「分かっている。流石に国の面子は潰せない。早急に手配しろ」

 「承知致しました」

 そして、それから一月後。

 カモフラージュの外遊の為、彼は馬車に乗り込んだ。

 「お楽しみは最後か……。もどかしいが仕方ないか。楽しみは後に取っておくものだしな」

 馬の蹄と車の車輪のリズミカルな音を聞きながら、彼は早速惰眠を貪り始めた。

 ……彼の放蕩ぶりは他国でも有名で。

 しかしかの国の軍事力は人間国家においては驚異であるため、打診されれば余程の理由がない限りおいそれとは断れない。

 故に実現したこの外遊。

 元凶様ご一行は、着実にダンジョンへと迫りつつあった。

 が。

 「うーん、お金の勉強は私もしなくちゃな……。流石にこの近辺で使われる貨幣は早々に覚えたけど、最近他国のお金を使おうとする人も増えたし、無知と侮られて偽金使われちゃたまらないし」

 「むしろ、両替所を作りませんか? このダンジョン内でのみ使えるお金を発行し、それと各通貨と両替する施設を」

 「ああ。それなら専任だけ育てれば良くて効率も良くなるな。それで行こう! ……まぁ、私は責任者だからどっちにしろ覚えなきゃならないんだけどさ」

 ――と。
 こちらは比較的平和な会話を交わしていて。

 危機が訪れようとしているとはちっとも考えてはいなかった。

 しかし。

 「……気のせいか? 何だか嫌な気配が近付いてる気がするんだが。ちっ、胸糞悪ぃ」

 一人、機嫌を悪くしていた者は居た。

 「そのまま通り過ぎてくれりゃ良いんだがな」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。 魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。 洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。 身動きもとれず、記憶も無い。 ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。 亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。 そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。 ※この作品は「小説家になろう」からの転載です。

遅刻勇者は異世界を行く 俺の特典が貯金箱なんだけどどうしろと?

黒月天星
ファンタジー
 命の危機を女神に救われた高校生桜井時久(サクライトキヒサ)こと俺。しかしその代価として、女神の手駒として異世界で行われる神同士の暇潰しゲームに参加することに。  クリア条件は一億円分を稼ぎ出すこと。頼りになるのはゲーム参加者に与えられる特典だけど、俺の特典ときたら手提げ金庫型の貯金箱。物を金に換える便利な能力はあるものの、戦闘には役に立ちそうにない。  女神の考えた必勝の策として、『勇者』召喚に紛れて乗り込もうと画策したが、着いたのは場所はあっていたけど時間が数日遅れてた。 「いきなり牢屋からなんて嫌じゃあぁぁっ!!」  金を稼ぐどころか不審者扱いで牢屋スタート? もう遅いかもしれないけれど、まずはここから出なければっ!  時間も金も物もない。それでも愛と勇気とご都合主義で切り抜けろ! 異世界金稼ぎファンタジー。ここに開幕……すると良いなぁ。  こちらは小説家になろう、カクヨム、ハーメルン、ツギクル、ノベルピアでも投稿しています。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

大海サバイバル! チートな船で俺TUEEE な旅を満喫します

彩世幻夜
ファンタジー
突然異世界に転移させられ、神様から与えられたのは一艘の船でした。 無人島&手漕ぎボートから始まる冒険譚が、今ここから始まる―― ※主人公は女です、あしからず! (ボクっ子じゃありません、心と体の性別が違う子でもありませんし、男の娘でもありません! 正しく女性が主人公です!)

処理中です...