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第五章 進むリゾート計画

魔物図鑑

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 ショービジネスをするなら。

 音響や証明設備、舞台設備の整った劇場ハコも確かに必要だろう。

 しかし何より、そしてこれまでどの層でもそこまでは必要とされなかったマンパワーが絶対不可欠だ。

 これまで、他の層の仕事は基本、ゴブリンとオーク、オーガで十分過ぎる程間に合ってきた。

 多少の例外を挙げるとすれば、海で溺れた客の救出要員としてセイレーンを後から導入した位だろうか?

 勿論、監視員は最初からオーガを配置していたのだが。

 海の沖まで流されてしまうと、オーガの遊泳スキルレベルでは救出までに時間がかかってしまう事例が数件報告されたのだ。
 一応救出された人は無事だったけど、ヒヤリハットを繰り返せばいずれ最悪の事態も起こるだろう。

 なら、水難救助のエキスパートを雇えばいい。
 溺れた人を即座に浜で待機するオーガやゴブリンに届けてくれる要員を。

 そうして導入されたのがセイレーンな訳で。

 「うん。サーカスみたいな体を張ったショーならオークでもアリかもしれないけど、ね……」

 例えば、だ。攫われた姫を王子が助けに行く的なお約束ストーリーのキャストを全てオーガが――筋骨隆々なコワモテ集団が務めるとしたらどうなる?

 ストーリーの良し悪し以前に観たくないだろう、そんな劇。

 お姫様は可憐な、或いは美人を皆期待するし、王子はイケメンを求めるだろう。
 オーガに務まるのはせいぜい姫を攫う悪者役くらいか。

 ――つまり、練度もそうだがビジュアル的に、これまで他層で活躍してきた魔物達はあまりこの層に適さないのだ。

 だから、新たな従業員を雇いたいのだけど……

 「どんな魔物が適しているか……以前に魔物の知識が足りなさすぎるのよ」

 そう、私の知識が足りないばかりに選択肢の幅が酷く狭まってしまっている。

 そもそもショーによって必要な素質や能力は変わってくるのだから、ショーの種類の数だけ必要な魔物の種類も増えるだろうに、ゲームに出てくる有名どころのモンスターしか頭に浮かばない。

 「ねぇ、この世界の魔物の事を書いた本とか知らない? 図鑑とか」

 だから、私は皆にそう尋ねてみた。

 「え、ありますよ? 普通に冒険者ギルドに売ってます。ただ、低ランクの魔物図鑑はペーペーの冒険者でも簡単に手に入れる事のできる値段ですが、高ランクの魔物の図鑑はハイポーション数本分のお値段しますけど……」

 ハイポーションの値段がそもそも庶民の平均年収と同じ値段だという。
 エリクサーの一歩手前の性能のポーションとはいえ、日本の感覚で言うと約300万円。かなりのお値段だ。

 それが数本分。

 一千万円を越えそうなお値段の本。

 安い家ならキャッシュで買えちゃいそうなお値段だ。

 それでも。

 「高ランクは無理でも、低・中ランクの図鑑が欲しいんだけど」
 私は懇意にしている商人に発注をかけたのだった。
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